表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/239

第95話 【攻略対象 水の精霊王と水龍】第2形態変化は断固拒否


 レーナは混乱していた。


 ファルークを止めたい。拘束から逃れたい。――とは思った。それから、アルルクやエドヴィンや、聖霊姫(ドライアド)みたいに戦う力が欲しいとも思った。


 そこまで考えて、はたと気付いた。


(その流れで、樹海での聖霊姫(ドライアド)の戦う姿を思い浮かべたのよね)


 うねうねと、踊る根っこを操って攻撃を繰り出した彼女の姿。レーナは、そんな風に何かを護る力があれば良いのにと切望した。


 ―― そうだよ! 君の望みに、僕が手を添えたんだ ――


「待って!?」


 レーナは視界に映る、ロープか触手の如く変化した髪と、目の前を得意気に舞う虹色蝶に交互に視線を走らせる。


(護れても、モブどころか人間の尊厳を守れていないのは大問題じゃない!?)


 大前提として平凡(モブ)村娘でありたいレーナとしては、今の状態変化は問題しかない。


 ―― えぇー、君のためなのに不満なの? ――


『こんなものぉぉぉ! ワレの熱い思いの前では無力だぁぁっ!!』


 リュザスに気を取られている隙に、火龍ファルークが拘束を解くために火を吐こうと口を開く。両腕を搦め捕るレーナの髪を焼き切るつもりなのだ。


「ちょっ! やば!!」


 ―― ほら、レーナ! 次はどうする? もう一房、髪を操ってあの口を閉じさせる? ――


 焦るレーナにうきうきした声が、更なる人外への道を提案する。


「やだから、やだからねぇっ!」


 叫び終わらぬ間に、目の前に紅蓮の塊が現れた。朱色の光がじりじりと肌を焼き、生命の危機を感じるには充分すぎる威力が、眼前に迫る。


 その恐怖感に触発されたのか、持ち主の意思とは裏腹に、火龍ファルークの前肢を拘束するのとは別の一房がするりと持ち上がる。



「わたしはモブなのよぉぉぉーーー!」



 レーナの心の奥底からの叫びが、力となってほとばしる。


「やめろぉぉぉーーーー!!!」


 アルルクの叫びが響き、レーナと火龍の間に飛び込んだ彼と火の塊が交錯する。



 ばしゅぅっ



 熱した鉄板に水滴が弾けた音――それを何倍にも強めた炸裂音が鳴り、辺りが濛々とした水蒸気に包まれる。真っ白な蒸気は、音から高温に違いないことが察せられる。


 だが、吹き抜ける風によって高温の蒸気が晴れると、そこには怪我一つない者たちの姿が現れた。


『お主、何をやった……?』


 ヴォディムが愕然と呟き、見張った両目がしっかりとレーナを捉える。同行者らを守ろうとした彼女は両手を前に突き出し、そこから薄い水の膜を張って、シャボン玉の如く空間を作り出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ