表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/239

第94話 【攻略対象 水の精霊王と水龍】黒いロープでグルグル巻き


『赤髪たちは、大人しくファルークの所に戻るが良いノネ! 火龍が荒ぶると、我らの住処までが熱に脅かされて迷惑だノネ!!』


『いや、ゾイヤよ。虹の(あるじ)に魅入られし娘を、そこに含めてはならぬ。()のお方が優先だ』


『……面倒だノネ……。けど我が(あるじ)ヴォディム様がそう仰せなら、我は従うのみだノネ』


 水龍ゾイヤと、水の精霊王ヴォディムは、暑く気候を変動させてしまう火龍ファルークを鎮めるため、番をあてがおうと動いていた様だった。それ故、レーナたちが逃げ出さない様、出口に待ち構えていたのだ。


『このままファルークの心が平安を取り戻さなければ、世界中が熱に脅かされるノネ。だから赤髪は、世界のためにファルークの側で癒しの存在となるべきだノネ』


 そら行け、とばかりにゾイヤが鼻先でアルルクの背を押すが、レーナがその鼻をグイと押し戻す。


「過保護な親なの!? 理不尽なことでも、癇癪をおこして我儘を通そうとする相手に合わせてどうすんのよ! それとも、ファルークが面倒で関わり合いたくない我儘だから、ちゃんと向き合って説得したくないだけなの!?」


『散々言ってくれるなぁ!? お前だってワレの番だろ? 一部だろぉ!? 赤髪もお前も、ワレを助けるべきなんじゃねぇのかよぉっ』


 ゾイヤやヴォディムはレーナを(つがい)から外したようだが、当のファルークは諦めてはいない。


「大体、ツガイってなんだよ! つごーよく 自分が楽するための道具かなんかかよ!? オレはアルルクって人間だぞ!? レーナだってスゲーことが出来るし、とんでもないことを知ってっけど、人間だ!」


「いや、ただの平凡(モブ)村娘だから!」


 アルルクの言葉を即座に否定したレーナだが、この場に居た迷宮攻略チートを既に実感している面々は「そんなことないだろう?!」と気持ちを一致させる。


『とにかく、ファルークの火の力が暴走して、水の我らは迷惑を被っているノネ! 赤髪が(つがい)になるだけで丸く収まるノネ!!』


「だからダメだって言ってるでしょ!?」

「オレは何度も はっきり キッパリ やだっていってんだろーーー!!」


 揃って拒絶の意を表したレーナとアルルクだったが、火龍ファルークは言葉で勝てない分、焦れて実力行使に出た。


 再び龍へと変じて巨大化した左右の手で、2人を鷲掴みにする。


「レーナっ!!」


 エドヴィンと、護衛らがついに剣を抜くがその前に、邪魔をするように水龍ゾイヤがひらりと割り込んで来る。


『行かせないノネ。これで万事上手くいくノ―――』


『うわぁぁぁぁ!!!』


 ゾイヤの言葉を断ち切って、ファルークの悲鳴が響いた。


 全員の視線がファルークに集まれば、かの龍は2人を掴んだ手を離して目を眇め、ぐっと噛み締める口元に力を込めている。人ならば、苦悶の表情といったところだ。


 さらによく見れば、ファルークの両手は黒いロープがグルグルと巻かれて一括りになっている。黒いロープは、ファルークの手から長く伸びて、レーナのひと房伸びた髪となって頭に繋がっていた。


「レーナ!?」


 アルルクとエドヴィンが驚きの声を上げるが、レーナはそれ以上の驚愕にすっかり硬直している。なんせ自分の髪がおかしなことになっているのだ。


(なんでなんでなんで!??? なんでわたしの髪がっ、こ、こ、こここ……こんなことになっちゃってるのーー!)


 レーナの髪に付いた蝶の飾りからは、眩い虹色の光が溢れていた。


『娘には、虹の君の寵があると言っておるに。相変わらず話を聞かん愚か者が』


 はぁ、とため息を吐いたのは呆れた視線を向けていた水の精霊王だ。


 ―― ヴォディムはお利口さんだね。よぉく分かってる。けどファルークは悪いコだ。僕の大切なレーナに、手を掛けちゃうなんて ――


 最高神の、軽薄だけれど仄暗い声が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ