第73話 【攻略対象 火龍の変化体】ファルークからの逃走
ガララララァァァ……
ゴロロロ……
ふいに溶岩洞に雷鳴が轟きはじめた。
しかもその音は、目指す外の方向から聞こえて来るのではなく、彼らが背にしてきた洞窟の奥から不気味に響いて来る。
『あーあ……荒れちゃって、騒いだりして。やーねー、火龍ったらイイトシして癇癪なんてホント』
お前が言うな、と全員が心の中で突っ込むであろうセリフをポツリと呟いて、定位置のエドヴィンの肩の上に戻ったプチドラが背後を振り返る。
(て言うか、わたしたちが居なくなって荒れてるんだ……)
大雑把なファルークの性格なら「まいっか」と済ませてくれるのではと、淡い期待を抱いていたレーナだ。だが、プチドラ曰くは癇癪を起こしているらしい。
「プチドラはちっちゃいくせに 遠くの見えない奴のことまで分かって すげーな!」
『ふふん。もっと褒めたっていいのよん! あんたたち、あたしが精霊だってこと忘れてるんじゃないの!?』
アルルクに褒められて、得意げな笑顔で胸を張って見せる小さな緑の少女だ。
「精霊は確かに……樹海を広げるから、動物や植物を育てる力が凄いのよね? あと根っこで戦ってたからそんな感じの魔法が使えて、湖……水もいっぱい出せて」
『レーナ? もしかしてあたしのこと、植物を何とかするだけの力を持った、ただの可愛い乙女だと思ってない? それに水を出す魔法なんて使わないわ。水は別の奴がいるもの』
不満げに頬を膨らませるプチドラは、腰に手を当てたポーズでふわりと宙に浮かび、キョトンとするレーナに顔を近付ける。
『いい? あたしは宝珠の化身なのよ。世界を作った最高神から分けられた、この世界を育み保つ力を込めた宝珠の力を持つすんごい存在なの! 元は同じ最高神から出てるから、他の化身のことだってなんとなく分かっちゃうわけよ。火龍ファルークだって化身なんだから分かって当然でしょ?』
「待て! いや、ちょっと待って欲しい。ご先祖様」
エドヴィンの呼び掛けに、一瞬喜色を表わしたプチドラだったが「ご先祖様」呼びで分かりやすく顔を顰める。
「その理屈だと、火龍の方も、同じ化身のご先祖っ……いや、貴女のことが分かる……と云うことになりませんか?」
レーナに、わき腹を小突かれて慌てて言い直したエドヴィンの表情は、焦りに満ちている。そして、プチドラ以外の面々も彼の言わんとすることを察して、外へ向かう足を速める。レーナは、1年以上に渉る辺境伯家での教育・訓練の賜物で、身体能力はその辺の大人に負けてはいない。全員を出来るだけ早く誘導するため、先頭を切って全力で駆けだした。
「あの角を右に曲がって!! 3本目の松明のところの壁に隠し通路があるからっ」
焦燥感も顕わな強い口調で、後ろに付き従う面々に外への道順を指示する。




