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第26話 【攻略対象 辺境伯令息】レーナ、乙女ゲームを語る


「この世界を遊戯の一部だと捉える傍観者。そんな平民娘の前世記憶を持った、プぺ村のレーナです」


「「「は?」」」


 追い込まれ、白状するしかない――との、決死の思いでの告白に、男3人は失礼すぎる間の抜けた声を上げた。


「遊戯とは?」


 ドリアーデ辺境伯が、胡乱な視線で先を促す。


「超絶美形を探して手放さない様に慎重に言葉を選んで人生を歩み、世界を救えたのかと思ったら救えない、世知辛い世の中を仮体験する遊戯です」


 腹をくくったレーナは、出来るだけわかりやすく、この世界に無いものは意味を示す言葉を使って「乙女ゲーム」について説明する。


 レーナは、往生際の悪いタイプではない。異世界転生したと気付いた時にはショックを受けたが、すぐにリュザスの実在する今世を受け入れて、日々力を尽くして生きている。ただそれがラダートレーニングの様に、この世界では奇異にしか映らないものだということには気付いていないだけで……。


「なんだ? 何かを誤魔化そうとしているのか? そうでないならば、何故お主は我が家系の秘密を知っている? 何故聖女になることも出来る力を持っている? しかも隠そうとしている意味は?」


「ドリアーデ辺境伯家の秘密とかは、全部その遊戯で説明されていたんです。わたしはその遊戯には出てこない傍観者(モブ)の立場ですから、無難に立ち回って、最推しであるリュザス様を探す旅に出たいんです!! 聖女の肩書に拘束されたり、命を脅かされたりするのなんてまっぴらです! リュザス様に逢うことこそ、この世界に生まれたわたしの人生における至上の命題なんですから!!」


 熱く語るレーナに、周囲が若干引いた気がする。美形父子が困惑も顕わにレーナを見詰めているし、父は目を開けたまま気を失っているのか、身動き一つしない。


 それと後もうひとつ、レーナは肝心なことを言っておかなければならないのだ。


「お探しの聖女は後3年経ってから、王都の貴族の通う学園に現れますよ。下町の普通の女の子が、突然『癒し』の能力に目覚めて聖女認定されるんです。遊戯でそう設定されてましたから。なのでわたしは無関係です」


 だから、もう干渉しないで、快くリュザスを探す旅に送り出してくれと、切に思うレーナだ。12回に及ぶゲーム攻略でも彼のルートには辿り着けなかったが、今回は彼の方から髪飾りをくれるなどのコンタクトがある。こんなチャンスを逃すわけにはいかないのだ。


 膝から崩れ落ちて床に突っ伏してしまった父には申し訳ないが、いずれ伝えなければならなかった事だと、心を鬼にしてじっと前を見据える。


 父は床とにらめっこ状態だから、彼女の視線を受け止めるのがドリアーデ辺境伯とエドヴィンだというのはちょっと残念だが、仕方ない。


(お父さんには、これを期に娘離れを進めてもらおう。けど、あとで「ちゃんと帰るから、待ってて」って、家出とは違うことは伝えとかなきゃね。レーナとしての家族も大好きで、大切だし。自分は物語の主軸には関係のない平民で平凡(モブ・オブ・モブ)な村娘なんだもん)


 レーナは、心の中で大きく頷く。


 ただ、最推しには一目逢いたいのだ。


「くくっ、最高神探しの旅だと?」


 決意に水をさすような笑い声をたてたのはドリアーデ辺境伯だ。エメラルドの瞳に愉しげな光を浮かべて、レーナの覚悟を問うようにじっと見詰める。


「本気ですよ。前世からずっと逢いたいと思って叶わなかった相手を、ようやく近くに感じられるんですから」


 言いながら、レーナは虹色の蝶の髪飾りの有る場所に手を伸ばした。

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