第2話 【前世の記憶】無人の部屋と、取り残されたスマホと……
部屋の主と同じく、昼間のまま時間が止まった様に―――
薄いレースのカーテンだけが掛かった窓からは、青白い月明かりがうっすらと射し込んでいた。
ぼんやりと照らし出された6畳の小さな部屋では、窓枠や家具の至る所に、幾つもの小物やフィギュアの輪郭が描き出されている。全てが同じキャラクターをモチーフにしたそれらは、雑多で無造作でありながらも不思議な統一感を持っている。
締め切った窓と、出入りの無い部屋は、たったひとりの主が居ない今は動くものひとつない――はずだった。
ふぁ
たった今まで、誰かが寝そべっていたのを感じさせる、皺の寄ったベッドカバー。その上で、小さな四角い光が存在を主張する。
光の正体は、忽然と消え去った持ち主から取り残されたスマートフォンだ。そこに映し出されているのは、持ち主の少女の面影を残す生まれたばかりの赤ん坊だった。
赤ん坊は、大きく目を見開き、愕然とした様子で周囲へ視線を走らせる。けれどそれも束の間、赤ん坊としての本能に負けたのか、じきに顔を真っ赤にして泣き出した。
その画面を見た者が居たのなら、彼女の身に起こった異変に気付けたかもしれない。とは言えスマートフォンに映し出される何処かに、赤ん坊に姿を変えられ、連れ去られた少女を救い出すことなど、人には出来るはずもない。
少女を連れ去った元凶は、異界の最高神なのだから。
その神の名は『リュザス』。
後に彼女に悪態を吐かれる、虹色の長髪の、あの青年である。




