第174話 【攻略対象 最高神リュザス】土の宝珠、飲まれる(中)
王城の中庭に面した窓を開け放って、室内に大きく突き出たアルマジロの長い顔が、みるみる薄れて行く。
『ぼくのっ 宝珠の力が、吸い取られてるっ!!』
悲鳴交じりの甲高い声を上げるアルマジロに、クラウディオ王子は部屋に通じる扉を開けて王城に詰める騎士を呼ぶ。
「結界の森に在る、土の宝珠の祠に異常は無いか!? すぐに確認を!!」
鋭く発せられた命令に、騎士らは「はっ! すぐに!!」と踵を返して行動に移る。けれど、その間もアルマジロの退色は止まらない。
「時間がありません。私が行きます!」
バルザックが告げて、一気に窓から身を躍らせた。ちなみにレーナの滞在する部屋は窓から曲者の侵入などが無いよう、木の背丈よりも高い3階に用意されている。
「バルザック先生ーーーー!?」
一瞬で窓の向こうに消えた姿に、ヒヤリと背筋が凍り、思わず叫んだのはレーナだ。だが、すぐに宙に浮かんだ彼の後ろ姿が視界に戻り、一気に結界の森に向けて飛び去って行く。
「大丈夫ですよ、だって爆炎の魔女を浮かせていたのはバルザック先生の魔法ですよね」
シルヴィアが、にこりと微笑みながら、レーナに問いの形で断言する。森の魔女を見た時から、しっかり気付いていたシルヴィアだ。彼女の言う通りなのだが、バルザックに興味が無さすぎて、瞬時に彼の力量に思い当たらなかったレーナだ。バツ悪く頬を掻きながら曖昧な笑みを浮かべるしかない。
「先生の魔法なら、きっとすぐに祠に辿り着きます。アルマジロさんも大丈夫ですよ。私も常日頃から、王都にある土と陽……いいえ、大気の宝珠に魔力を注いでいましたから。少しは持ち堪えるお手伝いが出来ていると思います!」
シルヴィアが微笑みながら、両手でぐっと握り拳をつくってみせる。
「おぉ、さすが……」
正規ヒロイン。
本人を前にしてその言葉は飲み込んだが、しっかり世界崩壊を防ぐ手立ては行ってくれていたらしい。筋書とは異なる展開ばかりみせるようになったダンテフォールの危機。それをどう攻略するか、ゴールの見えない思考と記憶の迷路に汲々としていたレーナは、想像以上の主要キャラ達の優秀さに、肩の荷が軽くなるのを感じていた。
(少し、気を抜いて、モブ村娘の思うままに動いてみても良いのかな)
と、ひっそりと心の中で決意を固める程度には。




