第170話 【攻略対象 最高神リュザス】秘密の会議は不可能なのか!?
黒い青年が尖塔を追われた直後、プペ村をまるごと包む巨大な瘴気溜まりが発生し、彼が事も無げに消し去った。
前後して、王都の空は曇りの日が続き、僅かな晴れ間も今まで以上に鈍色がかった空と化した。
それは、光の聖なる祝福と、太陽の恵みを大地にもたらす「陽の宝珠」が、力を失っていることの証左であり、穢れた「陽の宝珠」の化身である黒い青年が力を増したことを意味している。
レーナの呼び掛けにより、王城の客室のひとつに、エドヴィン、プチドラ、アルルクが集められた。
この部屋は、黒い青年に狙われる可能性が高い聖女レーナの警護のため、仮住まいとして国王から与えられている。
「ゲームよりこの世界の崩壊が早い気がするの。だからわたしは一刻も早くリュザス様に会わなきゃいけないのよ」
「憑いてる」の意味をプチドラに問い質したレーナは、ようやくこの世界での推しの存在を確信することが出来た。自分に纏わりついている「虹色の力」は、相変わらず見ることも感じ取ることも出来ないのだが。
「リュザス様が居るのなら、ぜぇったいに逢いたいし! 世界の崩壊を止める、達成できなかったルートを見付けることが出来るかもしれないし!!」
力強く宣言するレーナの声が、人払いをした室内に響き渡る。
「レーナ嬢、一体君は何を知っているんだ?」
「レーナ様、水くさいです! 同じ聖女の私にはお声がけくださらないのですか!?」
「やはり私の目に狂いはなかった。陛下に報告された聖女としての能力は、貴女の真なる力のほんの断片ですね」
不意に、何もなかったはずの部屋の隅から、続々と想定外の人物が現れた。ひとつところではなく、バラバラの場所から。
クラウディオ王子、シルヴィア、そしてバルザックだ。隠遁していた3人は共謀したわけではないらしく、軽く目を見開いて互いを見交わすが、すぐに頷きあってレーナへ視線を集める。
「いやいやいや、何よそのアイコンタクト!?」
思わず突っ込むも、3人は悪びれる様子もない。そしてエドヴィンとアルルクは、気付いていなかったレーナの方が意外とばかりに、肩をすくめてみせる。
シルヴィアとバルザックは魔法で姿を隠していたが、クラウディオ王子は隠し通路で息を殺していただけなのだ。
クラウディオ王子が黒く口を開けた背後の壁に手を触れると、あっという間に綺麗な壁に覆われてしまう。
『お城に育った王子様を、ここで出し抜くのは無理みたいねー』
揶揄いながら空中を軽やかに舞って、プチドラがキャラキャラ笑う。
「けどねー」
言いかけたレーナの目の前で、プチドラが『あ』と短く一声を発して全身を強張らせる。
『やられた……。あいつ、あたしが 飲み込まれたわ』
呟きながら、力なくペタリと床に落ちた。




