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第168話 【攻略対象 最高神リュザス】憑いている虹色のモノ


 黒い青年による騒ぎの後始末は、(こと)(ほか)厄介だった。


 取り残された大気の宝珠(オーブ)は、力の殆どを失った状態で転がっている。形が消えないギリギリの状態で。


 陽の宝珠が、黒い青年に吸収されて無くなってしまった今、大気の宝珠まで無くすわけにはいかない。2つもの、世界を支える最高神の力を込めた宝珠を失くせば、この世界(ダンテフォール)の崩壊は、ゲームで見たのとは比べ物にならない加速度的悪化を辿るだろう。


 シルヴィアが、割れた窓ガラス片の中に落ちた、大気の宝珠を拾い上げる。

 そして、それまで宝珠が納められていた台座に手を伸ばしかけ、躊躇して止める。


「これまで、宝珠に良かれと私の力を注いで、この台座に置いてきましたが……本当は、そうすべきではなかったのでしょうか」


 顔色悪く呟く。


「大気の宝珠と同じ属性の【虚の力】ではなく、【光の力】である私の癒しは、この宝珠の害になっていたのではないでしょうか」


『大丈夫よ。同じ属性の魔力の方が、効率は良いってだけだもの。現に、あの黒男も陽の宝珠の化身だけど、大気の宝珠の力を取り込んでたじゃない。もとは、同じ最高神さまお一人の力を分けたんだもの』


 だから、問題などない。と、プチドラがあっさり言ってのけた。


 レーナが聖女と披露されるにあたり、プチドラが精霊姫の御遣いであることも周知されている。精霊姫と感覚を共にする「そのもの」でもあるのだが、詳しく説明すれば、作り出したレーナの能力が露見してしまうため、無難な設定を通した。


「だとしたら、ご先祖様たちも狙われるのではないですか?」


 考え込んでいたエドヴィンが、顔を曇らせてプチドラに真摯な視線を向ける。だが問われた途端、彼女はプハッと吹き出してしまう。


『ないない! あたしよりもずうっと最高神さまの力が手に入りそうな、レーナがいつも側に居るのに』


「ああ……なるほど」


 プチドラが、キャラキャラと笑いながら答えれば、エドヴィンは納得して頷く。


「ちょーっと、待った! なに2人で納得しちゃってんの!? それって、さっき言ってた『リュザス様が憑いてる』って事と関係あるんじゃないでしょうね!?」


 レーナが割り込めば、一柱と一人は気まずそうに視線を交わし「この粘着質な感じが敵に回ると怖いんだが……」『もぉ人知れず憑いてる感じじゃなくなってるし、問題ないんじゃない?』などと物騒な言葉をひそひそ言い合う。

 はっきりしない緑のコンビにレーナが焦れたところで、側から熱い蒸気がぶわりと漂って来る。


「だーかーらぁ レーナの頭に、とんっでもない馬鹿力が憑いてんだよ! 気付いてねーの!?」


 驚愕に目を見開いた、人化したアルルクが叫ぶ。


「虹色のモヤモヤが溢れてんぞ! おれや緑頭が一緒だと特に。最初、樹海で見たときは レーナの髪の毛の色が変わったのかと思ったんだからな!」


「はぁーーーっ!?」


 間の抜けた声を上げて、レーナは足元のガラス片を拾い上げ、自分を映して見る。だが、いつも目にする黒髪の自分が間の抜けた顔でこちらを見て来るだけだ。虹色など、髪飾りに付いた色以外どこにも見当たらない。


「言われてみれば、もしかしてーって思う手助けはあったけど! 憑いてるって!? 憑かれてるわたしには見えないって! 不公平よぉぉーー!!」


 絶望するレーナの叫びに、虹色が見えていた面々は呆れ返った笑いを浮かべ、或いは困惑も顕わに彼女を凝視する。


『このくらい鈍感じゃないと、あたしたちなんかよりよっぽど強い、最高神さまの執着(おもい)には応えられないのかもねー』


 キャラキャラ笑うプチドラの言葉を受けて、虹色の蝶の髪飾りが満足げにキラリと光った。

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