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第162話 【攻略対象 最高神リュザス】黒歴史と違う!


 目の前の窓ガラスに橙色に光る魔法陣が浮かび上がり、激しく光を放つ。


 眼底に突き刺さる刺激に、思わず目を伏せたレーナの耳元でプチドラが驚愕に息を飲み、更に目の前に新たな緑の魔法陣が盾となって現れた。エドヴィンの得意とする「木」の魔力による防御魔法だ。


「ご先祖様! ご準備を!!」


『わかってる! 子孫こそ大丈夫なんでしょうね、結構まずそうなのが来そうよ!!』


 みきみき、きゅるきゅる……と、蔓薔薇が音を立てて更なる急成長を遂げ、赤龍(アルルク)と尖塔の天辺の間に蔓を伸ばして行く。


「このピカピカは何なの!? 眩しいし、何だか嫌な感じがするしっ」


『陽の宝珠(オーブ)を護る塔の結界が破られそうになってんのよ! あの窓から、何かまずいものが出てこようとしてんのよ』


「ウソでしょ!? 窓って、破らなきゃいけないような結界が張ってあったの!? そこから宝珠を守りに行こうって思ってたんだけど」


『だったら試さなくて正解ね! ばーっちり王家の血筋でしか解けない強固なのがあるわね。もう解けそうだけどっ』


 レーナと話す間にも、プチドラは蔓薔薇を成長させ続け、ついには尖塔の最上階をすっぽりと包み込む鳥籠状に形作ってしまった。



 ガシャン



 物々しい光が掻き消えると同時に、硬質な音が響く。


 視界を邪魔する蔓薔薇の鳥籠に目を凝らせば、囲まれた最上階唯一の窓が割られている。そこから黒い靄に支えられた宝珠がニョッキリと突き出て、急速に輝きを失って行く。


『大気の宝珠がっ! 魔力を注いだって、さっき紫髪が言ってたけどっ……なんか枯渇して行ってるわよ!?』


 魔力の状態を見ることが出来ないレーナが、状況を理解できずに戸惑っていると、プチドラが丁寧に解説してくれた。


 だが、状況が分かったからと言って、何か対処ができるわけではない。


 クロ男に操られた王女が無茶をしないように、先回りをして助けようとしていたレーナだったが、窓から形状を変えた王女が宝珠の力を奪いながら強奪する事態は想像していなかった。


「想定外すぎるんだけどぉ!? 飛び出て来てる黒いのは何!? 王女様はどうなっちゃったの!? 王子やシルヴィアさんと違うんだけどぉぉ!??」


 クロ男に操られて黒歴史を刻みそうな王女を止めるだけの、単純なお仕事だと思っていたレーナだ。それなのに人間じゃない別物体に変化した王女に出くわすなど想像だにしなかった事態だ。


 けれど


 そういえばエドヴィンとプチドラは、レーナが何も言わないうちに、防御の姿勢を取っていた。


「エド! プチドラちゃんっ! あなたたち、あれが何か分かってたりするの!?」


「はっきりとは分からん! 分からんが……」


 エドヴィンがチラチラとレーナの耳のあたりを見つつ口籠る。なぜそんな言い辛そうな反応をするのだと、首を捻れば、焦れたように『あーもぅっ』と叫んだプチドラが、レーナの右耳の横の髪をひと房、ぐいっと引っ張る。


『レーナに憑いてる、最高神さまの力によく似た魔力の気配を感じるのよ! けどすっごく嫌な感じがするから、絶対に最高神様じゃないし、滅茶苦茶ザラザラピリピリした危険な感じがすんのよ!!』


「は? 憑いてる? 最高神様って……まさかリュザス様がぁーーーー!?」


 リュザスは、レーナがダンテフォールに転生したと悟った12歳から、延々と追い続けてきた推しだ。15歳の今に至るまで会うことは叶わず、何処に居るのか手がかりすら掴めていなかった。


 それが、「憑いている」と完全なる不意打ちで指摘されたのだ。レーナが、緊迫した場面だというのに、間の抜けた声を上げたのは仕方がないのである。

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