表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/239

第126話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】ゲーム未見のイベント!


 隠し書架の本と百科事典から導き出されたヒントは、とある場所を示す「文章」だった。


 ――――――――――――――――――――

 金花樹のふみしめる地に、土のいできはじめあり

              ☘︎.。゜˖*

 ――――――――――――――――――――


 その一言だけが浮かび上がったのだが、レーナはそこに添えられた「光る地面から生えた幼木」の挿絵におおよそのあたりを付けていた。


「どっちも、100年ほど前の学院設立当時に書かれた、とっても古い本だったわ。きっと、歴代の学生たちにも与えられたヒントなのよ」


 レーナは肩の上にプチドラを乗せたまま、森の中を確信を持った足取りでぐいぐいと進んで行く。その背後にはカロリーナ子爵令嬢、紅茶令嬢の他、カロリーナの取り巻きである2人の令嬢。殿(しんがり)に彼女らを見守る名目のバルザック・リュトルンが続いて歩く。


 因縁でしか結び付いていないチグハグな女性陣に、魔法にしか興味を覚えない大魔導士の組み合わせだ。だから、彼が教師らしく彼女らの間を取り持ち、会話を繋げることなど無い。


 黙々と進む彼女らの周囲には、やがて甘い香りが漂い出した。そこまでプチドラと僅かに言葉を交わす以外は、静かに歩を進め続けていたレーナだったが、ぴたりと立ち止まる。


 そして、クルリと振り返って後続の面々を見渡すと、溌溂とした声を上げた。


「ここから、個人での探索に切り替えましょう! わたしの手に入れたヒントは、さっき言った通り『金花樹のふみしめる地に、土のいできはじめあり』よ。この辺りの香りが『金花樹』のものね」


 周辺には『金花樹』に咲いた橙色の大振りな花から放たれる薫香が、濃密に立ち込めている。


「光る地面から生えた幼木の絵が示す場所は、間近だと思うわ。けど魔獣討伐の為の場所だけあって、辺りには魔獣の気配もある。移動じゃなく探索のターンになるここからは、時間との闘いよ!」


 レーナが拳を握りしめて力説する。野に生きる動植物が自然界に漂う魔力を大量に帯びると、身体機能を大きく変化させ、狂暴化して魔獣となる。そんな物騒なモノが人の意を汲み、探索を大人しく待ってはくれない。こちらに気付けば襲い掛かって来るだろう。


森に詳しい(・・・・・)使い魔のプチドラちゃんの話では、この森で『金花樹』が在るのはこの先だけ。――ただし、その木は1本ではないらしいわ」


 声を落としたレーナに釣られて、令嬢らが神妙な面持ちでゴクリと唾をのむ。


「光る地面の幼木が、どれかは解らない――そう仰るのかしら?」


 紅茶令嬢が言えば、レーナは「そう」と重々しく頷く。


「だから、ここからは現地を観察しながらの謎解きよ。そのキーワードが示す木がどれなのか、頭を捻り、探さなきゃならないの。わたしも答えは解らない。けど、せっかく解いたキーワードの答えが知りたいの。ゲーマーの血ね」


 その言葉に、カロリーナが「げーまー……?」とポツリと呟く。すでに謎解きゲームが気になって仕方がない故の、迂闊な発言だ。慌てるレーナだが、プチドラが小さな手をパチパチ打ち鳴らして全員の注意を引く。


『ほらほら! 魔獣討伐の課題もあるから、もたもたしてる時間はないわよ! すぐに探索しなきゃ!』


「そ、そうね! 誰が見つけても恨みっこなし! 折半なんてケチなことは言わないわ。見付けた人の総取りね。さっさと答えを見つけましょう!」


 中身超年上(おねえさん)なプチドラの助け舟に、レーナは大焦りで便乗し、一行は金花樹群生地の探索行動に移った。


 カロリーナと取り巻き令嬢ら4人は協力することにしたらしく、揃って同じ方向へ移動して行く。レーナとは付かず離れず、目に届く範囲をキープしながら、彼女に窺う視線を向けてくる。


『ばれてないと思ってるのかしら、あのこ達ってば、レーナが何かを見付けたら奪い取る気よね』


 プチドラの言葉を受けて視線を向ければ、令嬢らは焦った様に顔を逸らす。やましい気持ちがバレバレだ。


「そうかもしれないわねぇ。けど、謎が解けるならそれでもいいわ」


 小物感漂う反応に、若干呆れながらプチドラと一緒に移動し始める。平凡(モブ)でありたいレーナは、手柄を上げるよりも、見知らぬイベントをクリアしておきたい気持ちの方が強い。


 バルザックは、『彼女らを見守る名目』を守る気はあるらしく、双方が見える位置に留まって静観している。


『あの子たち、絵のままの幼木を探してるわね』


「絵のままなら双葉だものね。まぁ、そっちの線は、彼女らに任せたわ。けど、わたしが探すのは樹齢を経た巨木よ」


 言いながら、視線を上に向けて周囲を見渡す。


(本の書かれた100年前に芽生えた木だとしたら、普通に成長した今はきっと……)


「あった」


 ぽつりと呟いたレーナの目は、一本の木に釘付けになっている。


 それは、周囲の木々よりも一段と広く枝を伸ばした巨木で、幾つもの橙色の大振りな花を絢爛と咲き誇らせているのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ