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第123話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】不穏の足音


(怒ってるかと思ったら、頼る仕草をすかさず差し込んでくるなんて……! ヒロインってツンデレ属性だったのね)


 逃げ損ない、メインストーリーに近付けられそうな気配に気落ちしていたが、新たな発見にワクワクした気持ちも沸き起こってしまう。だから、レーナはシルヴィアら主要キャラを、とことん突き放すことが出来ない。


 そして、完全には突き放されないことを、シルヴィア自身もどことなく分かっているのだろう。付かず離れずの絶妙な距離感で、レーナに纏わり付いてくる。


「じゃあわたしはモブコーリアさんが心配なので、戻りますねっ。レーナさんはぜぇったいに約束破っちゃ嫌ですよ!」


 名残惜しそうに何度も振り返りながら駆けて行くヒロインは、可憐で、ゲームのスチルを見るようだ。


 モブを貫いて、リュザス探しを進めたいのに、主要キャラらの魅力も抗い難く、完全に突き放すことも出来ない――そんな自分を自覚したレーナが、軽くため息をつくと、それまで黙っていたプチドラからキャラキャラと笑いだす。


『あーあ、すっかりなつかれちゃって』


「言わないで。けどシルヴィアさんの一番は、隙あらば高位貴族に嫌がらせを受けちゃうモブコーリアさんの助けになることだから」


『ゲームじゃあ大火傷したところを、聖女の力に目覚めたあの子が助けるんだっけ』


「そのはずなんだけど、バルザック先生が寮に施した魔法のお陰で、大火傷事件は発生しなくって、聖女への覚醒もなくなっちゃったのよ。その代わり、お節介な行動力だけが物凄く強化されたヒロインに育ってるみたい」


『ゲームと現実は、ちょっと違うってことね。あたしがこんなチャーミングになったみたいにね』


「はぁ……。わたしが関われば関わるほど、ゲームからズレて行く気もするわ……」


 目の前にふわりと浮かび上がり、くるりとトンボ返りを決めたプチドラに、レーナはがっくりと肩を落とす。「ちょっと」どころではないゲームとの差異の最たるものが彼女(プチドラ)だから。


『ねぇ、どうせレーナの知ってる遊戯(ゲーム)と色々が違って来てるなら、一度クラウディオ王子に会ってみない? 同じ一年の役員なのに、ヒロインちゃんと王子のやってることは随分まともみたいだし。それにあたし、ずっと王子に会いたいって言ってるんだけどぉ?』


「王子はメイン攻略者よ!? 個人の性格どうこうよりも、主要ストーリーへの関わりが多すぎる人だから不味すぎるわ。それに、また変な勘繰りをしたご令嬢に熱々紅茶をかけられるのも嫌だもの」


 何かあっても、修繕(リペア)能力で治せるとは言え、進んで火中の栗を拾う真似などしたくはない。そんなことが起きれば、再び王子の部屋に主要キャラ勢揃いでの話し合いが待っているだろうから。


(エドヴィンも、アルルクも心配性だから、わたしに何かあったら過剰に反応するんだもの。話し合いに顔を出すどころか、その結果、常にわたしの行動に付いて来るなんて言い出したら堪らないし、本当にやりかねないのよね)


 学院で多くの同年代の令嬢令息に関わる様になり、過保護になった緑と赤の面影が脳裏を過って、溜息が漏れる。


「とにかく、当初の予定よりもずっと学生らしく、授業にもちゃんと出てるから、色々忙しいのよ」


『その場面が遊戯(ゲーム)に無かったから、楽しんでるだけでしょ』


「あ、ばれてた!?」


 プチドラの胡乱な視線を受けて、おどけた調子でぺろりと舌を出せば、小さな少女はあどけない面差しの頬を大きく膨らませてみせる。


『ほんっと、困ったことになっても知らないからね!』


「だいじょーぶ! ゲーム12巡のわたしが何とかするから!」


 軽口で返すレーナは、生徒会からの依頼も、彼らとの関わりも、程よい距離感で適当にこなしつつ、ゲームで描かれない世界の細部を楽しむ気満々だ。けれど――



 不穏の足音は、彼女らのすぐ傍まで、歩みを進めていた。







 がたり……

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