第113話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】王子との出会いイベントに問題発生!?
入学式初日のカリキュラムは、正午を迎える前に終了した。
まだまだ日の高く昇った時間帯。緑濃い学院校舎に近接した生垣の中を、王子をはじめとした何人もの男子学生が「小さな金属プレート」を探して汗を流している。
「クラウディオ様、申し訳ありません。これだけ探して見付からないとは……」
報告する男子学生の手も顔も、所々が土や葉で汚れている。
「いや、私こそ無理を言ってしまった。君たちは、充分な働きを見せてくれたんだ。感謝の気持ちしかない」
受けた王子――クラウディオが、若干の無念さを滲ませつつも、共に探し物に当たっていた男子学生らに労りに満ちた笑顔を向ける。
(証拠たる校章を見付けて、加害生徒の反省を促すとともに、被害生徒の心のケアを行いたかったのだが)
クラウディオは、教室へ戻る列で偶然見かけた光景を思い起こし、痛まし気に目を細める。彼の目に入ったことに気付いた件の生徒らは、加害者、被害者ともにすぐさま姿を隠してしまったが。
(この学院では、学院生の平等を謳っておりながら、実際は根強い身分差意識がある。それは社会全般にも置き換えることが出来る。未だ、肩書に囚われ、有能な者を正しく評価し、能力を生かすことを阻害する)
彼は、そんな現状を在学中に打破しようと考えていた。そして行く行くは、自身が王位に就いた時、社会をも導けるようにならねばとの志もあった。
だが、狡猾で姑息な貴族に罪を認めさせる証拠たる「校章」は見付からなかった。
「あら? あの子たち何してるのかしら」
窓から王子らの姿を認めたレーナが、のんびりと呟く。
イレギュラーの連続だった学院生活初日を無事終え、緊張感から解放された反動で、他の生徒らが学院を出た後も、午後のぽかぽか陽気に包まれた庭園をぼんやりと眺めていたのだ。
複数の男子学生が、真剣な様子で生垣の中を探り、芝生や花壇を掻き分けているのだ。困りごとだったら、またプチドラに手を貸してもらおうかと思ってもいた。
だが、その生徒らの中に一人の生徒を見付けて、レーナは雷に打たれた様にビクリと両肩を強張らせた。
「入学式放課後の、王子との出会いイベント――」
既視感のある光景に、玲於奈の記憶が蘇った。
高位貴族令嬢からの嫌がらせにより、校章を庭園に投げ捨てられた平民出身の女生徒。心優しいヒロインは、その彼女の校章を探しに行くのだ。そこで、王子との出会いイベントが起こるのだが。
(あぁぁ……! イベント、潰しちゃったぁぁぁ!!)
心の中で、盛大に叫ぶレーナだった。




