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独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!  作者: 弥生 知枝(やよい ちえ)
第2章 火龍・水龍 編

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第101話 【閑話】「色」を失った双子龍 ~ゾイヤがノネな龍になったワケ~ 前編

乙女ゲーム『虹の彼方のダンテフォール ~堕ちる神と滅びる世界で、真実の愛が繋げる奇跡~』に登場する水の精霊王と、彼に付き従う青龍ゾイヤ。彼らの登場するルートには、居所を占拠する魔族が敵として登場する。


前世の記憶を持つヒロイン・レーナが、ゲームの時間軸よりも先に、水の精霊王の元で起こる災禍を避けられないかと話を振ってみたところ、どうやらゲームには描かれていない事情があったようで……。


『なんだノネ? 我の流麗なる姿に見惚れたのかノネ』


自信満々で、ちょっとおかしな話し方の青龍ゾイヤが生まれた秘密を、お話しちゃいます。

※前編・中編・後編の、全3話となります。


『虹の彼方のダンテフォール ~堕ちる神と滅びる世界で、真実の愛が繋げる奇跡~』


 それは、聖女となったプレイヤーが、滅亡の危機に瀕した世界『ダンテフォール』を、6人の攻略対象と共に、力と想いを通い合わせて救う乙女ゲームだ。


 ゲームに攻略対象として設定されているのは、救国の英雄と謳われる王太子、幼馴染の優しい勇者、領民からの信望厚い辺境伯、無限の力を持つ大魔導士、力溢れる火龍の化身、そして慈悲深い水の精霊王だった。


 前世、普通の女子高生として、このゲームをプレイし、この世界に転生したレーナは、ゲームの時間軸が今よりもっと後だと知っている。


「ねえ、もしかして貴方達の海底神殿に、魔族に堕ちそうな龍が居るんじゃない?」


 レーナは、ひょんなことから出会ってしまった水の精霊王の眷属『青龍ゾイヤ』に声を掛けた。もしかしたら、ゲーム開始よりも先に動くことによって後の世の危機を阻むことが出来るかもしれないとの期待を抱いての行動だ。


 水の精霊王ルートは、枯渇と汚染に見舞われる世界の水源を復活させるものだ。その原因は、水の宝珠(オーブ)を祀る水の精霊王ヴォディムの海底神殿に居座った闇龍にある。闇に飲まれた龍が側にいることにより、宝珠(オーブ)は浄化の力を保てなくなるのだ。だからゲームでは水の精霊王を助け、闇龍の居座った海底神殿を開放するストーリーが展開される。


『魔族に堕ちそうな龍だノネ? 我が主(あるじ)ヴォディム様が治める海底神殿に居る龍など、我をおいて……――いや』


 彼女の言葉で、青龍ゾイヤは忘れかけていた今1頭(ひとり)の存在を思い出していた。




 ✼••┈┈┈┈┈┈••✼✼••┈┈┈┈┈┈••✼




 地上の光通さぬ深い海の底。


 なのに、ただの一ヶ所――世界の理に反して昼間の煌々とした輝きに包まれる場所がある。


 光と空気に満ちたその中には、城と見紛うばかりの広大な神殿が在った。水の精霊王ヴォディムが、静かに悠久の時を過ごす海底神殿だ。


 神界の仙人を思わせる、簡素な――けれど絹よりも上質で華やかな光沢をもつ衣を纏い、長い袂と、羽織の裾をしゃらりと翻して男が歩く。男は、自身の力の顕れである青い長髪を背中に流し、感情の一切籠らない凪いだ表情だ。涼やかな切れ長の目と、そこに輝くサファイアの瞳は彼の人間離れした美貌をより際立たせる。


 彼こそが水の精霊王、ヴォディムだ。


『ヴォディム様、どちらにお出かけですか』

『ヴォディム様、お供いたします』


 ヴォディムが歩く周囲を姦しく囀ずりながら、2頭の細長い生き物がひらひら飛び回る。彼が自らの力を分けて作り出した眷属の双子龍『ゾイヤ』と『ザルク』だ。


 それぞれが、長身のヴォディムの身長の倍以上あろうかという体長で、爬虫類を思わせる長い鼻先に大きく裂けた口があり、そこから牙が上下に鋭く突き出ている。頭には、緩やかな曲線を描く角が天に向かってスラリと伸びており、その付け根あたりから背中に向かってキラキラと輝く鬣(たてがみ)が連なる。全身は細やかな鱗に覆われ、鋭い爪を持つ4本の脚が、軽やかに空中を掻く。所謂、東洋ドラゴンの形状だ。


『お前たちは、本当に賑やかだな』


 いつもの様に、一瞥をくれるわけでもなく、無表情のままヴォディムが告げる。


 またある時は『お前たちは、いつも後を付いて回る』とも声を掛けるし、『お前たちは、共にあるのが本当に好きなのだな』『お前たちは、よく似ている』『お前たちは……』と、いつも素っ気ない声を掛けて来る。


 ヴォディムが向けるのは、特に感情のこもらない表情ばかりだったとしても、2頭は掛けられる言葉に心が満たされた。それは無関心の所作でないことは双子らもよく理解していた。

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