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帰り道

作者: 顎歌

さむ!!


秋の始まり、部活終わりの駅のホームで

半袖野郎の俺は

長袖を持ってくれば良かったと

もの凄く後悔する。


スマホの画面には、18時43分と表示されていて

電車が来るまであと10分ちょっとある。


待合室に行こうにも

この時間の駅は、カップルだらけで

そこに割り込める勇気は自分にはない。


はぁ~


カップルだらけのホームで一人

寒さに耐えてスマホをいじっていると


「お!!◯◯」


と、自分の名前を呼ぶ声がした。


そこには、手を上げて近づくクラスの友だち


「おー、お疲れ~、そっちも部活終わりか?」


俺も手を上げて近づく。


「いや、今日は生徒会。そっちは部活帰り?」


暖かそうなココア片手に喋りやがる。


「そ、マジでさみぃーわ。くそ~ココアなんか飲み上がって……」


「そんな格好してる方が悪いんじゃ!!一口もやらねぇよーだ。」


ケチ野郎が、そんなんだからモテねぇんだよ。


お前もな。


互いにしょーもないつっこみ入れて笑い合う。


「あ、そういえばさ、あのガチャ引いた?」


「引いた。けど爆死。」


「引き弱笑、俺なんか……」


こんな感じで

ゲームの話とか、学校の先生のネタとか

くだらないこと話してたら

あっという間に電車が来て寒さも忘れてた。


「お、来たわ。んじゃ、また明日な。」


「おー、お疲れさん。」


カップルたちが次々に別れ、片方の見送りの中を掻き分けて俺は電車に乗り込み、友だちは反対側のホームへ行った。


ドアの閉まる音がして電車は動き出す。


あー、あったけぇ~


その暖かさは

冬の朝の布団の気持ちよさと似ていて

降りたくなくなる。


だか、今日はチャリで来たので

家まで約20分

また寒さに耐えなきゃいけない。


親に迎え来て貰おうか一瞬、迷ったけど

明日の登校がダルくなるので辞めた。


1本5分ぐらいのアニメのmadを2本見て3本目の真ん中に差し掛かるかどうかのときに電車は降りる駅に着いた。


さて、と。


自分の降りる駅は

終点の一個前なので空席だらけの

車内を立ち上がり先頭まで歩く。


定期を運転手さんに見せて電車を降りた。


田舎の駅にSuicaとかPASMO

使える改札はない。


なんなら、改札すらないし人もいない。


そんな無人駅を出て

俺は真っ暗な駐輪場に向かい

ガチャンとチャリ鍵を外す。


帰りますか~。


そんな、気分で震えながら

明かり一つない田んぼ道を抜けて

カレーとかの夕御飯の匂いや

時々、シャンプーの匂いが漂う

閑静な住宅街の中を漕いでいく。


もう、冷えた。さみぃー。

明日からちゃんと長袖、持ってこよ。


親子丼食いてぇ、今日の晩飯何かな~


あ、そういえば明日、夜練やん。

◯◯さん来るかなぁ。

上手いからな。観てておもろいし。


今日、◯◯の動画上がるやん。これはアツい。

帰ったら視ねば。


マジさみ。はよ、風呂入りてぇ。


さまざまな欲望を剥き出しにして


そこそこ大きな川にかかる橋を渡り

自分がいた小学校の職員室の電気がついてるのをなんとなく毎日、確認しながら

校庭のさらに外側を走り抜ける。


ここまで来たらあとちょっと


なんで信号待ちしなきゃいけないか

わからないぐらい車が来ない交差点の信号に

今日も捕まりつつも直進

見えてきたよく利用している自販機をまた曲がると家だ。


あ~今日も疲れた。


チャリにきちんとロックを掛けて

家の玄関をガチャっと開ける。


中からは、洗い物してる音と

弟が風呂に入ってる音。


リビングから廊下に差し込む光に

晩飯の匂い。


今日は多分、中華系の何かだ。


親子丼食いたかった。


鍵をおいて靴を脱いで今日も


「ただいま。」

読んで下さってありがとうございます。


帰り道ってなんか良くないですか?

1日の終わりが一番感じれる

あの時間がなんか好き。


実家を離れると、帰ったら暖かいご飯と

風呂が沸いてるって幸せなこと

なんだなって気付きました。


いいな、実家のときの俺。

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