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I am Aegis/Origin 3  作者: アジフライ
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第29話【時を視る探偵】(後編)

前回からの続き……

「……さて、 まずはトルティンの店の再調査だね……」

「資料に載っていたトルティンさんの印象は結構怪しい雰囲気でしたけど……大丈夫なんですか……? 」

エル、 シュラス、 ディア、 そしてラメリスの四人は令状を持ってトルティンの店へ向かっていた。

「大丈夫さ……私も最初は怪しい奴かと思っていたけど、 案外いい奴だったよ」

「そうですか……」

そして一同はトルティンの店に着いた。

店の雰囲気はいかにもといった感じ、 怪しい雰囲気が漂っていた。

「ここがトルティンさんの店……」

すると……

「おやおや、 誰かと思えばあの時の可愛い探偵さんではありませんか? 」

店の中から一人の細身な男が出てきた。

その男は怪しい雰囲気を放つマントを羽織っており、 少しボロボロになったシルクハットを被っていた。

見た目からするに年齢は三十歳ほどに見えた。

「うん? ……そこにいる三人は……」

男はエル達の方を見る。

「この人達は私の友人さ、 今日はもう一度店の調査をしたくてここへ来たんだ……令状もある」

「左様で……では中へ……」

そう言って男は四人を店の中へ招き入れた。

…………

客室にて……

「どうぞ……」

席に着いた一同は話をすることにした。

「自己紹介がまだでしたね、 私はエルミラース・トルティンと言います……見ての通り、 しがない旅商人です」

「のんびり話をしたいのは山々だが……まずはこの店を改めて調査させてもらうよ」

「あ、 私も行きます! 」

「それでしたらお構いなく……」

そしてラメリスはエルを連れて店の方へと向かっていった。

部屋にはシュラスとトルティン、 そして未だに眠っているディアが残された。

「……気の毒なものだな……この街に越してきて早々に事件の容疑者を疑われるとは……」

「いえいえ、 私としてはワクワクしてきますよ! こんな事件に巻き込まれるなんてそうありませんから」

シュラスはトルティンに何気ない話をしていた。

すると部屋に二人の子供が入ってきた。

二人はシュラスとトルティンの前にお茶を置き、 早々に部屋を出ようとする。

しかし……

「待て……お前達はワゴーとイレイヌだな……」

シュラスが二人を止める。

シュラスの威圧感に怯えているのか、 二人はおどおどしながら黙って頷く。

「二人とも……恐がる必要はありませんよ……さぁ、 席へ……」

空気を読んだのか、 トルティンは二人を席に座らせた。

そしてシュラスは二人に話を始めた。

「俺は冒険者をしているシュラスという者だ……今日は探偵のラメリスに協力すべく事件の調査へ来たんだ……既にお前達が容疑者の候補として挙がっているのを知っているな? 」

すると二人は初めて話し出した。

「僕達は……何もしてません……! 」

「私達はただ……トルティン様のお側で仕えさせてもらっているだけです! 」

「まぁ落ち着け……俺は別にお前達を疑っている訳ではない、 ただここに来てお前達は何をしていたのかを聞きたいだけだ」

そう言うと二人は話し出す。

「……えっと……僕たちは、 この街に来てすぐはトルティン様のお店の準備をしていました……」

「それはお前達二人だけでやっていたんだな……」

「は、 はい……トルティン様のお手伝いを任されているのは僕らだけなので……」

するとシュラスはトルティンに質問する。

「ここ最近で二人の行動に不審な点は無かったのか……? 」

「えぇ、 私はこの子たちの保護者ですから……二人の全ての行動を監視しています……二人はこの街で何もしていませんよ……」

「……そうか……なら他に聞くことは無い……」

その頃、 エルとラメリスは……

「う~ん……私は魔法に関する知識は疎いからなぁ……どの道具がどんな道具なのか……」

「ここは私に任せて下さい、 シュラスさんには及びませんが……魔道具には結構詳しいと自負していますので」

トルティンの店内を調べていた。

……本当に魔道具ばかりだ……しかも全部呪具だし……

エルは次々と魔道具を調べていった。

「……やっぱり無いかぁ……まぁ旅商人があんな貴重な魔道具を持ってるはずないか……」

結果的にエルは事件に関連性のありそうな魔道具は見つけることができなかった。

するとラメリスはエルにある質問をした。

「そういえばエル君、 君の言っていた魔道具って……一体どんな物なんだい? 」

「……ギレインドグラード……通称『呪いの鳥籠』……」

その名前を聞いたラメリスは何故か寒気を感じる。

「それが……人の能力を封じる魔道具……? 」

「そういった効果を持つ魔道具は他にも存在しますが……呪いの魔道具という括りで言えばそれしか存在しません……その魔道具は先程私が話した通り、 対象の持つ能力を封じる事ができます……それも永久に……」

「えっ……じゃあ呪われると一生その能力を使えないってことかい? 」

「はい……でも、 ここには無いのを見るに、 ラメリスさんの能力が封じられた原因は他にあるようです」

「そうか……ちなみにその魔道具の見た目はどんなのだい? 」

ラメリスが聞くとエルは一瞬、 表情が強張った。

「……形は……存在しないんです……その魔道具は製作者自身の魂と引き換えに特定の物品に呪文を込めるんです……その上で、 術者本人の魂に加えて、 大量の供物を必要とされるんです……」

「え……その供物ってまさか……」

「……そのまさかです……数千人の人間の魂……それが供物です……」

この世界には様々な呪いの魔道具が存在する。

その中でも最も危険とされている物は大量の供物によって生み出された魔道具である。

そういった魔道具には死んでいった人々の様々な感情が入り混じっており、 触れるだけで精神が呑み込まれてしまうという話もある……

「まぁ……そんな危険な魔道具を……普通のお店に置いてるはずがないですし……見つからない以上、 トルティンさんはこの事件に関係は無いかと……」

「ふむ……そうかぁ……まっ、 これで捜査は一歩前進だ! やはりこういった事態には専門家がいてくれると助かるよ! 」

「とりあえずシュラスさんの所に戻りましょう」

そして二人はシュラスの元へ戻った。

「では……失礼した」

「今度はお客さんとしてどうぞぉ~……」

一同は調査を終え、 店を後にした。

「……やはりあの店主は事件とは関係ないようだ……お前達が店の捜索をしている時にいくつか質問をしてみたが……嘘はついていなかった……」

「そうですか……」

「相変わらず念入りだねぇシュラス君は……嘘を探知する魔道具をローブに潜ませていたんだろう? 」

ラメリスがそう言うとシュラスはローブの中から小さな魔石を出した。

あれって……確か嘘を感知すると音が鳴るっていう石……シュラスさんは本当に色々持ってるなぁ……

「お前の洞察力は健在のようだな……ちなみにワゴーとイレイヌにも会った、 同じく質問をしたが嘘はついていなかった……」

「だとすれば怪しいのは残り二人……ミルドとウィラーナか……」

……犯人はそのどちらか……あるいは……

「二人は現在、 ギルドの監視下に置いてある宿屋に泊まっている……しかし監視は完璧という訳ではないから……可能性はいくらでもあるね……」

「では行こう……」

そして一同はラメリスの言う宿屋へ向かった。

…………

宿へ着くとそこにはギルドが雇ったのであろう冒険者達が見張りをしていた。

「やぁ、 冒険者諸君! 見張りはどうだい? 」

ラメリスは意気揚々と冒険者達に話し掛ける。

「またアンタか……会うにはギルドの許可が必要だが、 令状はあるのか? 」

「もっちろんさ! 」

そして一同は宿の中へ案内され、 ミルドとウィラーナのいる部屋へ来た。

するとシュラスは……

「エル……ここからは俺とラメリスだけで行く……ディアを頼む……」

「え……どうして……」

エルは訳を聞こうとするとシュラスは黙ったままエルの方を見た。

「……頼むぞ」

「は……はい……」

エルは何時にないシュラスの威圧感にただ返事しかできなかった。

そしてエルはディアと共にシュラス達が戻るのを待つことにした。

数十分後……

エルはいくら待っても戻らないシュラス達が心配になっていた。

「……すいません、 ちょっとこの子をお願いしてもいいですか? 」

「ん? 構わねぇが……まさか様子を見に行くのか? 」

「はい、 いくら何でも遅いので……」

痺れを切らしたエルは見張りの冒険者達にディアを預け、 二人がいる部屋へと向かった。

…………

部屋の前に来たエルは盗み聞きすることにした。

「……」

『……お前達は何故この街に危害を加える……』

『言っただろう……目的は一つ……あの子娘を渡せと……さすればこの街には何もしないと……』

へ……まさか……

その声はシュラスともう一人の男性らしき声が聞こえる。

会話の内容からエルは察した。

ミルドとウィラーナは……逆さ星……! ?

『……あの子娘を守れと誰が命令した……? そんな義務はお前には無いだろう? 』

男はシュラスにエルを渡すように言っているようだった。

ラメリスさんの声が聞こえない……まさか眠らされてる……?

エルは盗み聞きを続ける。

『アンタらが何をしようが私らには元々関係のない事なのさ……だけど……あんな丁度いい媒体がいるとなれば話は別……手に入るまでどこまでも追い詰める……それが私達のやり方……』

今度は女性の声が聞こえる。

恐らくウィラーナであろう……

すると再びミルドと思しき男性の声がする。

『お前は面倒事を避けたい主義なんだろう? 何なら守る義理も無い子娘なんかさっさと渡しちまえよ……』

……シュラスさん……私を渡したりなんか……しないよね……

そう思いつつエルは扉に耳を当て続ける。

すると……

『……確かに……俺はエルを守る義理は無い……エルを渡すのも一つの手だな……』

「……へ……」

『俺から言わせれば……エルは面倒事の一つだ……彼女は弱い……故に……』

それは無慈悲な言葉だった……シュラスは簡単にエルを渡すのも一つの手だと言い出したのだ。

シュラスさん……どうして……そんな……私が弱いから……私が面倒事……どうして……?




どうして……




エルからすればシュラスの言葉はかなりのショックだった……エルにとってシュラスは唯一本当の自分を受け入れてくれた存在だと思っていた故に……

そんな彼の口からそのような言葉を聞くのはあまりにショックだったのだ……

そしていつしかエルは部屋の中にいるシュラスの声が聞こえなくなった。

私は……弱い……また……捨てられる……?




だったら……私だって……全部……要らない……私を捨てた……裏切った……




家族も……仲間も……




私を苦しめる……







この心も……







「ワァァァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛! ! ! ! ! 』

エルが叫び声を上げた瞬間、 エルを中心に謎の大爆発が発生した。

爆発は広範囲に渡って街中の建物を破壊した。

「な……何だ……今の爆発は……」

「なんだなんだ! ? 大きな音がして起きてみれば、 何もかもくじゃぐじゃじゃねぇか! 」

爆発に巻き込まれた冒険者達は仲間にいた魔術師のバリアによって無事だった。

ディアもそのバリアの中にいた。

何事かと街にいた冒険者達は次々と集まってくる。

そしてその冒険者達が目の当たりにしたのは……

「な……何だ……あれ……」

「炎に包まれた……氷の……人間……? 」

変わり果てた姿をしたエルだった……

身体の半分は氷に覆われており、 もはや体の一部のようになっていた……辛うじて残っている人の体部分から見えるエルの瞳には光は無く、 虚ろだ……

エルの片手にはいつもエルが使用していた杖があった。

しかしその杖は段々ヒビが入り、 砕け散った。

そして……

『……もう……要らない……弱い私の……心なんて……』

エルなのか何なのか分からない不気味な声でエルは呟く……

『全部……消シ去ッテ……シマエ……』

「……まさか聞いていたとは……油断した……」

爆心地から離れた場所で瓦礫のしたからシュラスがはい出てきた。

その後ろには気絶したミルドとウィラーナ、 そしてラメリスがいた。

「咄嗟に防御したが……位置が悪かった……まさかここまで吹き飛ばされるとは……」

そう言ってシュラスは気絶した三人を引き上げ、 辺りを見渡す。

「……エル……」

遠くでも見える程の巨大な火柱を眺めながらシュラスは呟いた。

続く……


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