アレ
キーンコーンカーンコーン
「あー!終わった終わった~!」
「お前どーだったよ?」
「まあまあかなぁ」
「私はちょいヤバいかも」
「マジか、同志同志」
「あー、ヤマカン外れた~!」
「あとは、安堂のホームルームだけか」
「安堂の話長いから嫌なんだよなぁー」
「ほんとにね。
なんで学年主任がうちらB組の担任なのよ」
「しかも、めっちゃ怖いし!
なにあれ!
完全にそっちの人じゃん!」
「あははっ!
たしかに!」
「それに比べて、A組はいーよなー。
冴島先生美人だし、知的な感じで最高」
「俺はC組の由美ちゃん派だな!
あのほんわか癒し系な感じがたまらん!」
「まったく、男子はこれだから!
先生は頼りになるかどうかでしょ!
私たちも来年は受験なんだから!」
「とか言いつつ、D組の西条が担任が良かったーって言ってたの知ってるぞ」
「……やっぱり顔よね!」
カサ……
「ん?なんか動かなかった?」
「は?気のせいじゃね?」
「そっかー」
カサカサカサカサ……
「え?」
「ん?
どしたー?」
「え?え?
嘘でしょ?」
「だから、なんだよー」
「あ、あれ、あれぇ!」
「は?
…………おわぁー!
出たー!」
「え?なに!?」
「どうした?」
「アレだよ、あれぇっ!」
「え?
わー!」
「うおっ!
マジかっ!」
「きゃー!
やだー!」
ガタガタガタガタッ
「ちょ、ちょっと、どうするのよ、あれ」
「し、知らねえよ」
「誰か、何とかできないの!?」
「いや!ムリ!」
「お、俺だってやだよ!」
「情けないわね!
30人もいるのに、誰も何とかできないの!?」
「じゃあ、お前がやれよ!」
「ぜっっっったいムリ!」
カサカサッ
「ぎゃー!
動いたぁー!」
「ムリー!」
「いや、マジでムリだわ!」
「窓!窓開けよう!」
「誰が開けるのよ!」
「に、逃げよう!」
「でも、みんなで逃げて、アレがあとで自分の机に潜んでたりしたら……」
「やめてー!」
「ど、どうする?」
「どうするったって」
「なんか投げてみるか?」
「やめてよ!
それでこっち来たらどうすんの?」
「じゃあ、どうすんだよ!」
「そもそも、男子がちゃんと掃除しないからでしょー!」
「俺たちのせいにすんなよ!」
「だって、机の中とか汚いじゃん!」
「それは否定できないが……」
「ほら、やっぱりー!」
「もう誰でもいいから何とかしてよー!」
「よ、よし。
黒板消しを投げて撃退しよう」
「ちゃんと仕留めなさいよ!
失敗したら許さないからね!」
「お、おう。
野球部の俺に任せろ」
ヒュッ!
パンッ!
ブーン
「ぎゃーっ!」
「飛んだー!」
「外してんじゃないわよー!」
「やだー!」
ブーンブーン
「勘弁してくれー!」
「うわっ!
こっち来んな!」
「おまっ!
マジで外すとかっ!
俺のばあちゃんなんて、丸めた新聞紙で一発スパン!だぞ!」
「じゃあ、ばあちゃん連れてこいよー!」
「ばあちゃん山形なんだよー!」
「ちくしょー!!」
ブーン
がらっ
「すまんな。
職員会議の打ち合わせが長引いて遅くなってしまった。
ん?
どうした?
騒がしいぞ」
「あ、安堂先生!
危ない!」
「え?」
ブーン、ピタッ。
「え?」
「…………」
「…………」
「きゃーーーーー!!!!」
「え?安堂!?」
「今の声、安堂先生なの?」
「むりむりむりむり!
俺はこいつだけはムリなんだー!
誰か助けてくれー!」
ブーン
「ぎゃっ!
また飛んだ!」
がらっ
「安堂先生?
どうしました?
騒がしいですよ?」
「あ!
冴島先生、危ない!」
ブーン
「ん?」
パシン!
べちゃっ。
「え?」
がらっ
「さっきからどうしたんですかー?
バタバタしてー?」
「ああ、篠原|(由美)先生。
いや、どうやらこいつで騒いでいたらしい」
「んー?
あー、もう弱ってますねー。
よいしょ」
「ちょっ!
由美ちゃん!
素手で!」
「マジか!」
ぽいっ
「さよーならー」
「まったく、人騒がせな」
「ほんとですねー」
「安堂先生。
さっさとホームルーム終わらせてくださいね」
「は、はひっ」
「あんな子を怖がるなんて、みんな可愛いですねー」
「…………」
「…………」
『『『『『か、かっけえ』』』』』
七海糸様作