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素晴らしいこの世界の片隅で。

拾う人

作者: ニチニチ
掲載日:2021/09/11

子供の頃。



少し寂れた、デパートの屋上で。

100円入れると規則正しく動く飛行機。

母さんには、内緒だぞ。



おもちゃ屋さんで。

M78星雲からやってきた、ヒーロー。

お父さんと、お兄ちゃんには、内緒よ。



ちょっと怖い店主がいた駄菓子屋さんで。

今はなくなってしまった、割ると2本になる棒アイス。

とうさんと、かあさんには、ないしょだよ。



カブトムシやクワガタが捕れた、近くの山の奥の方で。

拾ってきたテント。

壊れたイス。

小さなバケツ。

傾いた机。

手描きの宝の地図。

みんなには、ないしょだよ。


 



子供の頃の僕は、秘密が好きだった。

自分が特別な何かに、触れているような気がして。


 



大人になるにつれ、キャパオーバーになっていく。

荷物が持ちきれなくなった僕は、またひとつ大切なものをなくしてしまう。


それはどれだけ探しても見つからなくて。

必死になって探せば探すほど、またひとつ大切なものをなくしてしまう。




今の僕は、秘密が苦手です。

大人の世界の秘密って、嫌なことの方が多いから。


今の僕は、秘密が苦手です。

大人の世界で、やっかいごとに巻き込まれたくないから。


 

 



廃墟になってしまったデパート。

なくなってしまった、おもちゃ屋さん。

錆び付いて動かなくなってしまった、シャッター街。

カブトムシやクワガタが捕れなくなってしまった、山の奥深く。


 

 



懐かしさや寂しさを、ふと感じるたびに、ひとつ見つかる。

僕は、昔なくしてしまった荷物を、大切に拾っていく。

 

 

 



今度はなくしてしまわないように。

そっと大切なノートに挟んでいく。

そして、また1ページ増えていく。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  これは……ぐっと来ました。 [一言]  中原中也の『月夜の浜辺』を思い出してしまいましたよ。  月に向かってそれはほおれず  波に向かってそれはほおれず  しみじみと佳い作品であるな…
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