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素晴らしいこの世界の片隅で。

拾う人

作者: ニチニチ

子供の頃。



少し寂れた、デパートの屋上で。

100円入れると規則正しく動く飛行機。

母さんには、内緒だぞ。



おもちゃ屋さんで。

M78星雲からやってきた、ヒーロー。

お父さんと、お兄ちゃんには、内緒よ。



ちょっと怖い店主がいた駄菓子屋さんで。

今はなくなってしまった、割ると2本になる棒アイス。

とうさんと、かあさんには、ないしょだよ。



カブトムシやクワガタが捕れた、近くの山の奥の方で。

拾ってきたテント。

壊れたイス。

小さなバケツ。

傾いた机。

手描きの宝の地図。

みんなには、ないしょだよ。


 



子供の頃の僕は、秘密が好きだった。

自分が特別な何かに、触れているような気がして。


 



大人になるにつれ、キャパオーバーになっていく。

荷物が持ちきれなくなった僕は、またひとつ大切なものをなくしてしまう。


それはどれだけ探しても見つからなくて。

必死になって探せば探すほど、またひとつ大切なものをなくしてしまう。




今の僕は、秘密が苦手です。

大人の世界の秘密って、嫌なことの方が多いから。


今の僕は、秘密が苦手です。

大人の世界で、やっかいごとに巻き込まれたくないから。


 

 



廃墟になってしまったデパート。

なくなってしまった、おもちゃ屋さん。

錆び付いて動かなくなってしまった、シャッター街。

カブトムシやクワガタが捕れなくなってしまった、山の奥深く。


 

 



懐かしさや寂しさを、ふと感じるたびに、ひとつ見つかる。

僕は、昔なくしてしまった荷物を、大切に拾っていく。

 

 

 



今度はなくしてしまわないように。

そっと大切なノートに挟んでいく。

そして、また1ページ増えていく。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  これは……ぐっと来ました。 [一言]  中原中也の『月夜の浜辺』を思い出してしまいましたよ。  月に向かってそれはほおれず  波に向かってそれはほおれず  しみじみと佳い作品であるな…
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