第二話 羽根の無い妖精達の王様・1
「いったたたた…」
意気込み過ぎて足元を疎かにしてしまったダイムはずっこけて顔面から地面に激突。
その所為でヒリヒリと痛む鼻の頭を摩りながら、これまた痛む膝などに少し浮かれ過ぎたと反省。
しかしながらまだ見ぬ珍しいモノ見たさに原初の森へと向かう足を止める事は無く。
「まっ、次からは気をつけるとして…
歩いて2時間くらいの距離って言ってたし、この調子ならお昼過ぎくらいには着けるかな〜」
などと呟いて目的地を目指す。
…が、正しくは近くの街まで馬車で2時間、そこから歩いて数分くらいの距離、である。
なので歩けど歩けど目的地に着くはずもなく…
「もうそろそろのハズなんだけど、見えて来ないなぁ…」
途中途中で地元地方では見かけた事が無かった動植物を物珍しげに見つめたり、立ち止まって観察したりしてやや遅れがちな進行を自覚しながらもアンティーク調…否、なかり古めかしい懐中時計をパチりと開けて見やりながらそれらしいモノを探してキョロキョロと辺りを見渡して見る。
しかしながら当然、見える範囲内にある筈も無い。
話半分でブティの店主や客達の話を聞きながら自分の空想ーーー珍しいモノを思い浮かべてたのだから完全に自業自得である。
だが、そんな時とは梅雨知らず
「んー、道はこの街道沿いで間違い無いから道草食ってる分、遅くなってるって事かな」
ダイムはあっけらかんとして道草をやめ。
そして間違いに気づかぬまま、街を出てから数時間後。
未だダイムは歩き続けていた。
「ぜ、全然見えて来ないんだけど…」
流石に歩き疲れたのか、近くにあった手頃な石に腰掛け、腰に下げていた水筒を手に取り、中身を飲む。
…っとそこに、進行方向方面からガラガラと馬車が走って来たので、道を聞くのに丁度良いと思い、ダイムは両手を振って馬車を止めてみようと試みる。
馬車を走らせていた御者はそんなダイムに気付き、馬車を止めてくれた。
斯くしてダイムの試み通りに馬車を止めてくれた御者から正しい情報を得る事が出来たダイムは漸く自分の間違いに気づき、
「あと1時間くらいしたらフェアリスに着くはずだから、まぁ頑張れ」
っと、ダイムの目的地…フェアリスの街から馬車を引いて来た御者の言葉に『あと1時間かぁ…』とやや疲れた思いを浮かべ。
ダイムが来た道… ブティがある街の、ミネラルドへ向けて走り去る馬車に手を振った。
「今日中に原初の森まで行くのは無理そうだなぁ…」
非常に残念でならない。と言外に含まれている言葉を発しながらも気を取り直し、ダイムは予定通りの一歩手前、フェアリスへ向けて歩き出す…も、来た道からも馬車が来たので乗り合わせて貰おうとしてまたも両手を、今度は大袈裟に降ったのであった。