出会い
次に亜莉愛が目覚めたのは、真っ赤な薔薇が一面に咲いている花畑だった。
「…ここ……は………?」
辺りを見回すと、すぐ側には先程まで亜莉愛がいた廃墟の館とそっくりな洋館がそびえ立っていた。
洋館の回りにはコウモリが飛んでいて、昔絵本で見たお化け屋敷によく似ていた。
「…そこで何をしている。」
不意に背後から声が響いた。
亜莉愛はびくっと肩を震わせ、恐る恐る振り向いた。
鎖骨あたりまで伸びた漆黒の髪の毛。
そしてそれに合わせるように真っ黒なスーツとマント。
亜莉愛とは対照的である、緋色の瞳。
あまりにも美しく、人間離れしている男性がそこに立っていた。
亜莉愛は状況が掴めず、ただ黙って見ていることしか出来なかった。
「…おい、聞こえなかったのか。お前はそこで何をしている。」
男性はもう一度聞いた。
「……分かりません…気づいたら……ここに…いました……」
亜莉愛は消え入りそうな声でそう答えた。
まさか自分が鏡に吸い込まれ、この世界にやってきたことなど知らないのだから。
「…ちょっとこっちに来い。詳しく話を聞かせろ。」
男性は有無を言わせない口調と表情で亜莉愛に告げた。
そしてくるりと踵を返し、スタスタと洋館の方へ歩いていってしまった。
「…!」
それを亜莉愛は急いで追いかける。
「…あの人は、きっと大丈夫な気がする…」
亜莉愛の中の勘が、そう呟いた。