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序章
ーずっと、私の居場所なんてなかった。
みんな、私のことなんていらなかった。
ーずっと、誰かに愛されたかった。
漆黒の空に、ぼんやりと三日月が浮かぶ夜。
もう廃墟となった不気味な館に、一人の少女がいた。
クリーム色がかった美しい金髪。
黒と白のフリルやレースで飾られたドレス。
物憂げで儚い印象の青い瞳。
まるで人形のように美しいその少女、夢前 亜莉愛は、館の二階にある真っ暗な部屋の中で、黒く縁取られた大鏡に向かってこう呟いた。
「…愛される世界に行きたい。」
その瞬間だった。
鏡からまばゆい光が差し、亜莉愛の体を包み込んだ。
そしてその光が収まると、また元の暗い部屋に戻った。
ーだがその部屋に、亜莉愛の姿はなかった。