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第9話 仲間



あれからブールさんを通してレイモンさんに相談したところ、目に見えるギリギリの距離からサポートすることにあっさり決まった。

サポートするのも敵が十分に遠い距離にある場合だけで、接敵してきたらすぐに後方へ下がることが条件だ。


俺がサポートするのは、第3騎士団の第2隊となった。遠距離支援部隊らしい。


そしてなんとなんと、俺の命の恩人ロズさんが隊長を務める隊だ。


「久しぶりだなマスダ殿!」

「お久しぶりですロズ隊長」


ぐっと固い握手を交わす。

にかっと歯を見せて笑うロズさん。

相変わらずどっしりしていて、なんだか安心感がある。


あの時は気づかなかったが、彼がドワーフであるということを後から知った。


「あなたが多くのものを増やしてくれたおかげで、本当に助かっている。感謝します」


いきなり丁寧に頭を下げられて焦る。


「あ、頭を上げてくださいロズさん!」

「・・・あんたは謙虚だなぁ。ひょろひょろした青年かと思ったら神の使者だし。かと言って驕り高ぶる訳でもなく。なーんか掴めねえよ」

「僕はただの人間ですから。便利な能力はもらいましたけど」


頭を下げられた時に気の利いたことも言えず、苦笑するしかない。





***





ロズさんに連れられて、第2隊のテントの前のちょっとした広場へやってきた。

隊員さんたちが綺麗に整列している。


「以前レイモン団長より紹介あったと思うが、こちらは女神より遣わされし使者マスダ・リョーヘイ殿だ。


マスダ殿は無限に物を増やすことのできる能力を持っておられる。我々が今こうして立っていられるのは、マスダ殿のおかげと言っても過言ではない」


ロズさんが、隊員さんたちを厳しい表情で見渡す。


「このたび、マスダ殿は物を増やす能力を使って、我らの戦闘をサポートしてくださることになった。


本格的な戦闘が始まる前に、我らと連携の練習が必要だということで、当分我が隊の第1チームと組んでいただく」


そこで言葉を切って、くるりと俺の方を見た。


「俺の隊はみんな遠距離援護専門だ。弓が20人、魔法が10人だ。弓4人と魔法2人でチームを組んでいて、5チームある。

そのうち第1チームについてほしい。うちのエースだ」


第2隊を見た第一印象は、人間だけでなく、ドワーフ、エルフ、獣人・・・バラバラだ。

補給部隊はほぼほぼ人間ばかりだったから、ドキドキする。


「エルフとドワーフって一緒の部隊なんですか・・・?」

「昔は違ったがな、今はそんなこと言ってる場合じゃねえからな」


少し身をかがめてロズさんにこっそり尋ねると、そんな答えが返ってくる。


列の先頭から、すっと一人の女性が前に出て、俺に向けて言った。


「ロズ隊第1チームのリーダー、ジェスです。弓矢が不足して、ろくに役にも立てなかった状況をあなたは変えてくださった。おかげで私たちはまた戦える。本当にありがとうございます」


そう言って、目の前の背の高い女性エルフが深々と頭を下げた。銀色の長くまっすぐな髪がさらりと前に垂れる。


ジェスさんの後ろにいた人たちも皆、頭を下げている。


「ええと・・・顔を上げてください、ジェス・・・リーダー?」

「ジェスとお呼びください」


エルフだからなのか、関係ないのか分からないが、ジェスさんは俺より背が高かった。


とても整った顔で、直視することができない美人だ。いや、カコさんも美人なんだけど、ジェスさんは本当に人形のように完璧に整っていると言うか・・・。


「あの、ジェスさん。僕は、戦えません。戦ったことがありません。平和な世界から来たんです。


きっと戦闘ではお荷物になります。だから邪魔にならないよう、遠くからサポートできたらいいなと思ったんです・・・。


けど、もし僕がうまく連携できなくて、逆にやめたほうがいいようだったらハッキリ教えてください。お願いします」


ぺこり。

どうしてもそれだけは伝えたくて、声が震えたけれども、言い切ることができた。


「マスダ様。あなたはきちんと現状を見て動いておられます。お荷物なんてとんでもありません。


こちらこそ、マスダ様から我々のチームを見て、ご助言いただければ嬉しいです。あなたはもう、一緒に戦う仲間です」


「仲間・・・ですか?」


びっくりした。

そんなこと言ってもらえたのは初めてだ。


心のどこかで疎外感があったことにも初めて気づいた。

違う世界から来たのだから当然か。


「ええ。違いますか?」


目の前のジェスさんがそう言って、パチリとウインクしたので、思わず笑顔になった。


「ありがとうございます。そう言っていただけて、嬉しいです」


人は居場所がないと生きられないと俺は思う。ジェスさんの言葉で、また心のどこかが楽になった。


地に足をつけたような気持ちがした。




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