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第8話 魔法を増やす



ーーーおいおい、ほぼ俺の勝ちじゃね?


ーーーは?今に見てなさいよ。


眩しい。


白い空間。


誰かいる。

小さなテーブルを挟んで座っている。


ーーー俺の駒は優秀だからなぁ。


ーーー駒なんてすぐ死ぬわ。死んだら補充すればいい。


ーーーそんなんだから勝てねーんだよ。


ーーーあら?3勝したけど?


ーーーフン、俺は12勝してるけどな?


男と女の声がする。

二人は一体、なんの話をしているんだ?


眩しいけれど、近づきたくて、水の中を泳ぐように両手を動かして進んでいく。


ーーーそっちのキングは随分奥に下がってるみたいね?


誰かがつまんだのは、小さくなったレイモンさんだった。





***





パチッ


(今のは?今のはなんだ?)


寝転がったまま目を閉じて思い出そうとする。


(確か、白い空間。二人いて、何かやってた。何か話してた。確か勝ち負けがどうこう・・・それからレイモンさん?)


いやでも聞いたことない声だった。

俺がこっちの世界に呼ばれる前に聞いた声とは違う・・・気がする。


もし同じだったとすると、二人が地上でゲームをやっているんじゃないかという俺の仮説がもしかしたら本当かもしれない。


でも夢だ。100%信じることはできない。


それに今見た夢から何か取り出せるだろうか。


悶々と考えていると、


「おはようございます、マスダ様」


と朝の鍛錬を終えたらしいカコさんがテントの入り口からのぞいていた。


「あ!おはよう!ごめんすぐ起きるね!」

「大丈夫ですよ、いつもより早いくらいですから」


カコさんが水を張ってくれたたらいで顔を洗い、口をゆすぐ。


「ねえ、カコさん」

「はい?」

「夢って信じる?」

「夢、ですか」


「うん・・・変な夢を見たんだ。だからなんだって感じの夢なんだけど」


「・・・そうですね。レイモン団長がマスダ様のお告げを受けたのも夢でした。特別な方は特別な夢を見るのではないかと思っています」


「お恥ずかしながら、私は夢を全然見ないんですよ・・・」

「そうなんだ。ぐっすり眠れていいんじゃないかな?」


カコさんが人差し指でぽりぽりとこめかみをかいている。少し恥ずかしそうにするのが、とても可愛くて和んだ。





***





今朝の夢のことは一旦置いておいて、昨日の魔法の複製ができるか確かめるために、早速カコさんと、事情を話したゴウさんと共に、テントの外れにやってきた。


「まずは小さめのものにしますね」


「いきます。3、2、1!」


ヒュンッ


すごい勢いで何かが飛んでいく。


「えっ!?早い!すいません、もう1回いいですか?」

「勿論です・・・いきますよ〜・・・3、2、1!」


ヒュンッ ブワワッ ズシュッ


じいっと目を凝らして見ていたので、今度はなんとか増やすことができた。が、早すぎてうまくいかなかった気もする。


的となった木の幹に3箇所傷がついていた。傷を見るに、上下にひとつずつ増えたようだ。


ただ、真ん中のものと比べて、上下の傷は浅めで範囲が小さい。


「うーん、早すぎてよく見えなかったからかなあ・・・魔法って詠唱とかはしないの?」


「魔法を習い始める一番初め、学校で勉強する時は基礎として詠唱しますが、慣れてきたら誰も詠唱しませんね。

特に戦闘で詠唱するということは堂々と戦術を言うのと同じことです。それに詠唱中隙を見せることになりますし」


「確かにそうだよね・・・そうすると、魔法を増やしてサポートできたらと思ったんだけど、魔法のタイミングがわかんないと難しいなあ」


ゴウさんにも同じようにお願いして手伝ってもらったら、炎の玉も増やせることが分かった。が、コントロールを失った火の玉が地面の草に引火して、燃え上がったのにはビビった。すぐにカコさんが水で消してくれたけど。


「これって戦いで何か使えますかね?」


二人に問いかける。


「うーん・・・どうでしょう。マスダ様が増やしたものは、自分のコントロールから外れるようです。的に当てるのが難しい」

「そうかあ・・・」


「あ、でも数うちゃ当たる戦法の時はいいかもしれないですよ!」


「数うちゃ当たる?」

「例えば、矢を射かけるとしますよね。マスダ様に増やしてもらったものは、勢いもほぼそのままっぽいですから、飛んでいく矢を1本から100本にすることもできるわけです」

「ふむふむ。でもコントロールが効かないんじゃないの?」


「1対1での戦い、1対数人での戦いの時はコントロールも大事です。でも、何百人という相手の時は、とりあえずあそこらへんに当たればいい、くらいでいいんです」

「そっか。そういう時には役に立ちそうだ」


「問題は、マスダ様がどれくらい距離を保てるか、ですね。戦場に近づくわけにはいきませんから」

「うーん・・・じゃあ試してみよう!」


カコさんに少しずつ遠くに立ってもらって、水の玉が増やせるかどうか確認していく。


かなり遠くでも問題ないが、さすがに水の玉が見えるか見えないかくらいになると、増やすことはできなかった。


見えていないとダメみたい。つまり、俺が「これを増やそう」と認識していないのはダメだな。


「戦いが起こる前に知れてよかった。これで戦闘でもちょっとは役にたつかも」


「マスダ様はうちで一番役に立ってますって」

「そうです。あなたがいなかったら、我が軍は遠からず滅んでいました」


ゴウさんとカコさんが褒めてくれるが、俺はまだまだ満足できていなかった。


もっと、もっと役に立ちたい。


そんな気持ちが日に日に強くなっていっている。



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