終わりの始まり
薄暗い部屋で一本のスポットライトがベッドの上に寝ている女を照らしていた。女は痩せこけていて、青ざめた顔をしていた。
女は何かに激しくおびえているように見えた。
しばらくすると少し遠くから足音が聞こえてくると、女はさらに顔をこわばらせ、小刻みに震えだした。
足音がかなり近くまで近づいてくると、カメラには映っていないが足音の主と思われる男の声が聞こえてきた。
「君は、永遠の命が欲しいかい?」
女は、今だ震えているばかりで口を開こうとしない。
「君は、社会から見捨てられ、上司から蔑まれ、友人からも忌み嫌われた。私はそんな君を救いたいんだ。」
そういって男は女のベットの側まで近づいて女を見下ろした。
女は、さらにに緊張感を強め、かなり顔を引きつらせている。
いったいこの男と女に何があったのだ。そんなことを考えていると、さらに男が女に対して話しかける。
「君は、何か勘違いをしているようだが、私は君を殺そうなんざ思ってないし、傷つけようとすら思っていない。ただ私は君を救いたいんだよ、この永遠の命で。」
女は、この男の言葉に少し表情を緩めた。
「そうだ、やっと受け入れる気になってくれたかい?」
「、、、、、、、」
「まだ不安かい?そうだなぁ、それではこうしよう。」
ここから、女と男の取引が始まった。
「先も言ったように私たちは君を救いたいんだ。だから、食料や金も用意して、住む場所も与えよう。どうだい?さらに永遠の命だを与える。そして君は、私たちのために働いてくれればいいのだよ。どうだい?君にとって不利なことは何もないだろう?」
女はこの取引に承諾の意味を込め頭を縦に振った。
「ありがとう。頑張って僕たちのために働いてくれ。」
男はポケットから注射器と謎の液体を取り出すと、注射器についている針のキャップを外し、注射器の中に液体を入れ始めた。
液体がすべて入れ終わると注射器の中で液体がライトに当てられ黒く輝いていた。
しかし、この液体がただの液体でないことは明らかだった。
その液体はまるで自我があるかのように動いていた。
「これで君は永遠の命を手に入れることができる。おめでとう。」
そういうと男は、女の腕に注射器を咲きこんで、動く謎の液体を入れ始めた。
その時、女に異変が、、、
体を大きく震わせながら大きなうめき声を上げ始めた。
さらに顔を苦痛にゆがませ、その反動か顔や喉をかきむしっている。
いったいあの液体は何なんだ、、
そんな状態が程1分続くとありえないことが起き始めたのだ。
女の全身が膨れ上がり、おぞましく変形し始めた。
「なんなんだこれは、、、、」
=====2年前=====
2250年5月2日土曜日
この国は第4次世界大戦に勝利し、発展の一途をたどっていた。
しかし、「発展した」と言っても暮らしなどはここ200年あまり変わっておらず、まだまだ田舎暮らしの人もいるし、車も別に空を飛んでいることなどはない。
土曜日ということもあって、仕事もなく私はテレビの前で寝そべっていた。テレビにはニュース番組が映し出され、芸能人のスキャンダルを報じていた。
少し前は世界的に新型インフルエンザが流行ってしまい、ずっとそのニュースが引っ張りだこだったのだが、米英日の臨時感染症対策組織「TPCO」が製作したワクチンで何とか終息したらしい。
そんなニュース番組を見ていると、何やら番組スタッフがあわただしく動いている。
「人でも殺されちまったかねぇ、物騒だなぁ」とだれもいない部屋にしゃべりかけたその時。
[速報です。東京都新宿区に未確認のミュータントが確認されました!]
「うん?!」
流石にこんなことが起きるとは予測しておらず変な声が出てしまった。しかし、ミュータント?
[速報です。......]
ニュースキャスターはおんなじことをずっと繰り返している。
どうやら、まだ中継カメラが到着しておらず、映像は出ていないようだ。
私は、この時は半信半疑だった。いや、私の脳が勝手に信じることを拒否したのだ。なぜか、それは今住んでいるアパートが新宿区なのだ。つまりその「ミュータント」とやらはすぐ近くにいることはほぼ間違いない。急いで窓の外を確認するが幸い「ミュータント」らしき物体は確認できなかったため、安堵しながら、続報を待っていると。番組側で動きがあった。
[た..ただいま、中継ヘリが到着しました。ち..中継をつないでみましょう]
かなり焦っているのかろれつが回っていないが仕方ないだろう。こんな非常時今まで生きて来て一度もないだろうから。
テレビ画面が中継ヘリの上空映像に切り替わった。
[いました!!あれがミュータントです!]
ヘリに乗っているリポーターがかなり興奮気味に中継している。
しかし、それよりも重要なこと、それはミュータントだ、どうやらリポーターは一瞬見えたようだが、カメラはビルにさえぎられてとらえられていないのだ。
中継ヘリは新宿の街を旋回し大通り上空に出ると「それ」は映し出された。
それは体は悍ましく誇大化し、終始謎の黒い液体をまき散らしながら大通りを走っている車に何かしている。
リポーターもそれの事に気づいたらしく、さらに実況を続けた。
[ミュータントは黒い液体のようなものをまき散らしながら、走行中の車両を襲っています!!カメラ!ズームズーム!!]
そういわれたカメラマンが、襲われている車をズームすると、衝撃的な映像が全国に放映された。
「それ」は、車から人間を引きずり出し、腕にかじりつき足を捥いで、挙句の果てには頭蓋骨を砕きながら頭をかみちぎった。
「、、、、」
私は、黙るしかなかった。そして今まで感じたことのない恐怖感に襲われた。それは衝撃的な映像を見てしまったことよりも、「それ」は私が今いるこの街にいるという事実がとても恐ろしかった。
この衝撃映像が映し出されて20秒ほどたっただろうか、テレビ画面には[しばらくお待ちください]のテロップが流れていた。
「あいつは、、、、いったい、、、、逃げよう。。。」




