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 私はセシリアを連れて、誰もいない荒野に来た。勿論護衛なんて付けずに。城を出るときに、いくらか声を掛けられたが、適当にごまかした。二人っきりになれる、広い空間に来たかったのだ。目的はただ一つ。


 「セシリア、こんなとこまで来てもらって悪いんだけど、私と戦ってくれない?」


 唐突に切り出した私の提案に、さすがにセシリアも面食らったようだった。


 「はあ?こんなとこまで来て何を言い出すかと思えば……うちは忙しいの。これから国を治めるものとしてやることが山のようにあるのよ。あんたの遊びに付き合ってる暇はないよ」


 「遊びじゃなくて、本気で。私を殺す覚悟で戦って欲しいの」


 「ますます訳わかんねー。何がしたいんだ?」


 「私はこれまで戦いの中で色んなことを学んだ。そして色んなものを手に入れた。今あなたと私の間には深い溝がある。それを埋めたい。そのためにはこうするしか思い浮かばなかったのよ」


 「溝なんて埋める必要ねーってことに気が付かねーのか?」


 「……そうかもしれない。だけど、私には今のあなたは苦しんでいるように見える。昔の自分と重ねる訳じゃないけど、本当の自分と建前の自分の間で葛藤しているように見える。それを無くしてあげたい」


 「余計なお世話だっての。うちはうちで楽しくやってるんだから水を差さないでくれる?」


 「……こういっちゃなんだけど、全然楽しそうに見えない。むしろ苦しんでいるように見えるよ。本当は誰かに分かってもらいたいんじゃない?素の、飾らない自分を」


 「……一々うるせえなあ。駒がペラペラ喋るもんじゃねーよ」


 「図星を突かれたんじゃない?もっとも認めないでしょうけど。だから……拳で分かり合おう。これは本気。あなた、本気で誰かと分かり合おうとしたことなんてないでしょ」


 「だーかーらー、一々うるせえっつってんの!」


 「ごめんね、こんな方法しか思いつかなくて。だけど、お互いが本気になれるのはこういう形でしかないんじゃないかって思ったの」


 「……ちっ、分かった。死んでも文句言うんじゃねーぞ。言っとくけど、マジでぶっ殺すからな」


 「そのつもりで来て。私も本気で行く」


 これが最良の策とは言わない。だけど、言葉を幾ら紡いだってセシリアの気持ちは変えることはできないだろう。私が戦いの中で色んなことを見つけたようにセシリアにも見つけて欲しい。下手をしたら死ぬかもしれない。でも、その時は死んでもいい。私の存在意義であるセシリアを守るということに殉じて死ぬなら本望だ。


 「ルカ、あんた少しばかり強くなったからって、自分の力を過信してるよ。言っとくけど、うちはつえーよ?」


 「それも知ってる。だからどこまでできるか分かんないけど、私の全力をぶつける」


 私達二人の間に、しばらく沈黙が流れた。そして口火を切ったのは……私。セシリアに一足飛びに近づき、攻撃を仕掛けた。


 「フィスト!」


 今まで何度繰り出しただろう、拳に闇を纏わせて相手を殴る。それだけの魔法だ。だけど、こんなに悲しいことに使うことになるなんてね。でも、本気で打ち込む!


 「ふん。得意の接近戦か、いいじゃない相手になってやろうじゃん」


 セシリアはそう言うと私の拳を片手で受け止めた。その手には光が纏われている。その光が闇を中和し、威力を相殺する。


 「ルカ、あんた光の性質って知ってる?時に熱量と化し、時に人を癒し、そして、時に闇を打ち消すのよ!フラッシュ!」


 セシリアの体が眩しく光る。私は一瞬視界を奪われた。くそっ、目が見えない!


 「影武者なんだから、うちの戦い方位予想してこいっての!レイストリング!」


 光の糸が私の体を覆い、自由を奪う。しかも熱い!


 「これであんたは動けないミノムシ同然。レーザー!」


 セシリアはやや私から距離を取ると、指から熱線を発してきた私は動けないながらも身をよじって急所に当たるのを避ける。くそっ、確かに強い。だけど、この位想定済み!


 「はあああ!」


 私はありったけの闇を集中し、光の呪縛を中和する。光が闇を中和するように、闇もまた光を打ち消すんだ!


 「へえ、やるじゃん。だけど、こいつはかわせるかな?フィストレーザー!」


 今度は手のひらから熱線を放ってきた。さっきより太い!


 「ダークウォール!」


 私は闇の壁を作り、熱線を打ち消す。だけど、向こうの方が威力が強い!壁を貫通して私に直撃する!


 「くっ!」


 ある程度闇に中和されていたお蔭で、直撃してもそれ程のダメージはない。しかし……全体的に私より魔力が強い!


 「インヴィジブル!」


 私は姿を消してセシリアに近づこうとする。


 「甘い!フラッシュボール!」


 セシリアは球を空中に打ち上げた!すると私の後ろに影ができた。


 「丸見えだよ!レーザー!」


 間一髪私は熱線を避ける。しかし、セシリアは熱線を次々に照射してくる!避けきれない!


 「グラヴィティ!」


 私は重力場を発生させ、熱線の向きを変える。光だって重力には逆らえないでしょ!予想通り、少し軌道の変わった熱線は、私の横を通りすぎていく。


 「ふん、やるじゃん。だけどあんた、まだ光ってもんを分かってないよ」


 そういうとセシリアは更に巨大な光の玉を作り出し、空に打ち上げる。


 「フラッシュボール!サン!」


 サン!?太陽か1その光が発する熱が私の体を焦がしていく。このままじゃ全身大やけどだ!


 「ドーム!」


 私は闇の空間を作り出し、光を中和する。それでも熱い!熱までは中々中和できないか!だけどいくらかましだ。私はドームの範囲を広げ辺り一帯を闇で覆う。その光景は昼と夜がぶつかり合っているようだった。


 「……その程度の闇で、うちの光に勝とうなんて……百万年早い!」


 セシリアは、より強く光を放つ。闇がかき消されそうになるけど、こっちも出力を上げる!


 「はああああ!」


 私は心の中でつぶやいた。「この戦い……長期戦になる!」


 

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