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沈黙を破ったのはノックの音からだった。一応警戒しながら私が対応する。しかし、扉は開けない。
「はい。御用件はなんでしょう」
「あの、この国の王子です。先ほどは所用で外していましたが、父上が挨拶だけでもしてこいとのことでしたので、参上しました。ここを開けていただけませんか?」
私はセシリアに耳打ちで尋ねる。
「どうする?」
「……怪しいな。だけど本当に王子だとしたら、開けないのは非礼っちゃ非礼だ。ここで疑いを掛けるのも今後のためを思えば避けたい……入れるか」
「分かった」
私は扉を開ける。
「どうぞ」
すると、身なりを正した若い男が立っていた。確かに王子であるかのような気品を纏い、顔も悪くない。栗色の髪を短く刈り、清潔感もある。どうやら本当に王子のようだ。
「失礼します。挨拶が済んだらすぐ出ていきますから」
「……挨拶ならその場で結構ですよ。正式に明日、国王からご紹介に預かった方がこちらとしても助かるのですが」
セシリアがけん制する。あまり信用していないようだ。
「そう言われるとそうかもしれませんが゛……お目通りだけでもお願いします」
食い下がる王子。うーん、こういう時の私の立ち位置って微妙だなー。でもこの場の判断はセシリアに任せよう。
「……分かりました。ルカ、お通しして下さい」
私は王子を部屋の中に招き入れる。
「良かった。私はこの国の王子セシル。聞けば道中ひどい目にあったとのこと。この国を統べる者の一人として、お詫び申し上げます」
セシリアが距離を置いたまま、応える。
「わたくしは、オーリスの王女セシリア。そしてそちらが影武者のルカ。道中のことでしたら国王から既にお詫びいただいております。お気になさらぬようにお願いいたします」
「全くお恥ずかしい話です。人心がかように乱れているのも、王族たる私たちの責任。……なので、なりふり構っていられないんですよ……」
ん?なんだか不穏なことを言って……
「パラライズ!」
王子は私に麻痺の魔法を掛けてきた。虚を突かれた私は、その場から動けなくなる。
「……ねえ、セシリアさん。あなたを手に入れないと、この国は荒れていく一方なのです。その辺を理解していただいて、ご協力願えませんかね」
さっきまでの口調とは打って変わり、喋りに邪ななものが入ってきた。くそっ、やはり開けるんじゃなかった。しかし、セシリアは落ち着いている。
「……わたくしを手に入れようという気持ちは分かりますが、かように無礼なやり方が通るとお思いですか?」
「無礼はお詫びします。しかし、何度も言いますがなりふり構ってられないんですよ。あなたは今夜私と添い遂げてもらう」
えええー。なんだこいつ。女を口説くのにももっとやり方ってもんがあるだろう。これじゃレイプしますって言ってるのと変わんねーぞ。
「……嫌だと言ったら?」
「力ずくでも」
くそ、体が……まだ動かない。セシリア何とか切り抜けて……!
私の思いも空しく、屈強な男たちたちが次々に扉から入ってきて、セシリアを囲む。何だこの展開。マジでレイプじゃねーか。そんなこと……させない……!くそっ力が入らない。
「……抵抗しても無駄なようですね。一つ聞かせて下さい。ルカはどうなるのです」
「影武者なら大丈夫。もう半刻もすれば、自然に動けるようになるでしょう。ただ、それまではこの部屋にいていただく。私たちは別の……私の部屋に行きましょう。ここでは何かと都合が悪いですから」
「分かりました……ここはあなたに従いましょう。ルカ。後は頼みましたよ」
頼むってことは……そういうことね。後半刻ってことは、そんなに長くない。セシリアが時間を稼いでくれれば、十分助けに行ける。
「物分かりがよくて助かります。では、私の部屋にご案内します」
セシリアは屈強な男たちに囲まれて、連れられて行った。私は一国も早く自由になれるように体に力を込めていた。しかし、王子の言った通り自由になるのに30分は掛かってしまった。
セシリア……無事でいて……
私は部屋から出ると、まず、王子の部屋を探した。しかし、広い城の中だ。何か情報が欲しい。一つ一つ部屋を開けて行っても時間がかかってしょうがない。何か手はないか……ええい、悩んでる時間が無駄だ!
こうなりゃ力技で行くしかない!
「インヴィジブル!」
私は姿を消して、片っ端から部屋を開けて言った。勿論鍵のかかった部屋もあったが、そこは聞き耳を立てて、中の様子を伺った。
そしてどうやら、王子の部屋らしきところを見つけ出すことができたのは、更に30分位後だった。計一時間か……セシリア無事で……
私は、王子の部屋の扉を、思いっきりぶっ叩いて、破壊した。
「セシリア!無事?」
中で見たものは意外な光景だった。
更新が遅れて申し訳ありません。そして、リアルの都合でしばらく更新できなくなります。来週半ば位には更新したいと思いますので、しばらくお待ちください。




