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 コリニアに入ると何だか雰囲気が変わった。何ていうか全体にどんよりとした感じが漂っている。光の神信仰の強い国だと聞いていたのに、この暗さ。いかに統治が上手くいっていないのかがよく分かる。成る程、こりゃあ確かにセシリアの光に頼りたくなるのも頷ける。しかし、そのやり方が気に食わない。攫ってなし崩し的に王家に入れるなんて、そんなこと許されるはずがない。絶対にセシリアは守る。


 「こっから先は到着まで油断できそうにないね」


 私が独り言のように呟くと、セシリアは、


 「そうですね。向こうの出方にもよりますが、多少危険は増えるかもしれません」


 「まあ、何があっても守って見せるけどさ」


 「ふふ、期待していますよ」


 そんなやり取りをしていた刹那、急に馬車の動きが止まる。何だろうと思って外を覗いてみると、案の定また輩っぽいのが十名程度道を塞いでいた。護衛の兵士が声を掛ける。


 「道を開けろ。これはオーシス王国王女の一行だ、不敬な真似は許さんぞ」


 それを聞いて輩は声を上げる。


 「オーシスの王女ってこたあ、連れて帰りゃあ一儲けできそうだな。ここは通さねえ。通りたきゃあ力ずくでとおんな」


 「貴様ら、今の発言を持って敵とみなす。排除させてもらう」


 そう言って護衛の兵士は輩どもに向かっていく。しかし、敵の中にまた眠りの魔法を使う奴がいたようだ。ばたばたと護衛の兵士が倒れていく。……味方ながら情けね^連中だな。しゃあない、出張りますか。


 護衛の兵士が倒れ、この馬車を輩が取り囲む。そこにしずしずと私が出ていく。一応王女の振りしないとね。


 「やめなさい。あなた方は自分たちが何をしているのか分かっているのですか?」



 私の呼びかけに笑い声で返す輩ども。


 「きいたかよ?何をしているのかだって?お前を捕らえて王に差し出すんだよ。そうすりゃ俺らは大金持ちさ!」


 もう、雑魚臭しかしない発言をよくもまあしゃあしゃあと……


 「もう一度言います。狼藉をやめ、ここを通しなさい。これは公務です。あなた方が公務の妨害をしたとあっては、コリニアの王が私の身柄を受け取る訳がありません。逆にあなた方が処罰されますよ」


 「へへへ、そんな綺麗ごとでこの国は動いてねえんだよ。その身柄貰った!」


 人心がここまで堕ちているとは……よほど酷い統治しかできていないのだろう。だが仕方ない。降りかかる火の粉は払う!


 「吸引。MP」


 私は先日の修行により、闇を自分の物とした。闇は物を引き付ける力だが、それをより精度を高く操ることができるようになった。今回は、相手のMPつまり魔法力を吸い取る。


 「何だ!?魔法力が……なくなっていく!」


 「更にもう一度だけ言います。ここを通しなさい。そうすれば命だけは助けましょう」


 「ふざけんな!魔法が使えないなら力づくで……」


 輩どものセリフが終わらないうちに、私はインヴィジブルで姿を消し、瞬く間に連中に一撃を加え、全員気絶させた。


 「さっ、済みましたわよ。王女様。さっさと護衛の兵士を起こして、先に進みましょう」


 「さすがですねルカ。見事な戦いぶりです」


 「お褒めに預かり光栄ですこと」


 私は余裕しゃくしゃくで、護衛の兵士を起こして回る。兵士は口々に「賊は?」等と言っていたが、私が倒したことを伝えると、どいつもこいつも悔しがっていた。いや、その前にもっと強くなっとけよ……と私が思いながら、最後の一人を起こしたとき、馬車の方から、悲鳴が聞こえた!


 「きゃあ!何をするのです!」


 セシリアの声だ!しまった油断した!私は急いで馬車に戻る。すると、今度はローブを纏った魔法使いらしき人間が、王女を馬車から引きずり降ろそうとしていた。


 「やめろ!ダークボー……」


 いや、この距離だとセシリアにも被害が出る。もっと接近して近接戦闘だ!


 ローブを纏った奴が、セシリアを馬車から引きずり出した瞬間、私は目の前まで来た。間に合った!


 「フィスト!」


 闇の一撃を食らわせて、こいつを吹っ飛ばす!


 「むん!」


 しかし、魔法使いが、こちらに手をかざすと、闇が中和され、私の攻撃はただのパンチになってしまった。これでは弱い!ならば!


 「シュート!」


 蹴りならどうだ!しかし、やはり闇が中和され、ただのキックになってしまった。相手も闇魔法の使い手か……しかも結構な手練れだ。


 よわよわしい、私の攻撃だったが、何とかセシリアから魔法使いを遠ざけることはできた。


 「セシリア!馬車に乗って!」


 「はい!」

 

 セシリアを馬車に乗せ、私は魔法使いと対峙する。


 「ふん、やはりお前が影武者か。大人しく王女を渡せば助けてやらんこともないぞ」


 口調から察するに男らしい。


 「その言葉、そっくりお返しするわ。大人しくここを去れば、命だけは助けてあげる」


 「減らず口を……」


 男は手の中に闇を生成する。結構でかい!


 「お前も闇魔法の使い手のようだが、運が悪かったな。俺はこの国最強の闇魔法の使い手なんだ。お前ごときじゃ話に……」


 最後まで言わせない。


 「吸引!エナジー!」


 私は容赦なく男の生命エネルギーを吸い取る。


 「な、何!こ、これは……」


 男が怯んだ隙に、一足飛びに距離を詰め、攻撃を加える!


 「シュート!」


 今度は中和されず、男のみぞおちに闇を纏った蹴りがもろに入った。


 「ぐっ……」


 ローブの下に防具を付けていたか。それでもダメージはかなりのものだっただろう。男は膝を付く。私は相手の力を封じることにした。生かして色々聞きだそう。


 「「吸引!MP!」


 「ぐああ……ま、魔法力が……」


 男は生命エネルギーの次は魔法力まで吸い取られ、その場に倒れ込む。私は男の近くまで行くと、胸倉を掴み、問いただす。


 「どういうつもり?この国最強の闇魔法使いさんとやらが出張ってくるのには訳があるでしょう?きちんと説明してもらおうかしら。正直に喋らないと……」


 私は、また生命エネルギーを吸い取るそぶりをして、男を脅す。


 「……何も言うことなどない。……殺せ」


 ふん、覚悟だけは一人前だな。しかし、こいつを殺してもこちらに益はない気がする。どうするか……


 「ルカ。その者を馬車に乗せて下さい」


 「セシリア!?」


 突然の意外な発言に私は戸惑いを隠せなかった。


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