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 ケルトとの戦いの後、無事に部屋に戻った私をセシリアは笑顔で迎えてくれた。


 「良かった。……生きて帰ってきてくれて」


 「ちょっ、やめてよ照れるから」


 普段と変わらずに修行に行ったのに、血だらけの服を着て帰って来たんだから、セシリアが少し大げさな対応をするのも無理ないか。でも今回の修行で私は変わった。これで、セシリアを守れるという確信を得ることができた。


 「セシリアさあ、あんたこれからもっと自由に振舞っていいよ。私が傍についてる限り、絶対に安全を保障するから」


 「……ルカがそう言ってくれるのでしたら、間違いないですね。分かりました。わたくしはもっとやりたいことをやるようにします。それよりルカ、ミレニアに帰還を報告してきて下さい。あの子は私以上に心配性ですから」


 「そうだね。ちょっと行ってくる。これからはもっと3人でどっか出かけたりしよ」


 そう言って私は部屋を出て、ミレニアのところへ向かった。



 



 部屋に一人残ったセシリアはほくそ笑んでいた。


 「あいつ、ようやく使える奴になったな……さて、んじゃあ好きなようにさせてもらいますか」


 そう言うと、ルカが遠くへ行った頃を見計らって、セシリアは部屋を出た。向かったのはケルトの部屋だ。ケルトは治癒班に傷を癒され、部屋で一人ベッドに横になっていた。


 「失礼します」


 「誰だよ……って、王女様じゃねーか。どうしたっつ……ていうんですか」


 「いいですよ。もっとざっくばらんに話していただいて。今日の修行の様子を聞きに参りました」


 「王女がそういうなら気にしないけど、何が聞きたいんだい?まあ、大体想像はつくけどね。もう危険な真似はやめてくれって言うんだろ?あのままじゃルカが死んじゃうって」


 「いえ、そんなことを言うつもりはありません。ただ確認をしに来たのです。ルカはきちんと一人になりましたか?」


 ケルトは一瞬戸惑ったが、すぐにセシリアの意図を察した。


 「ああ、あいつはもう完全に一人になったよ。もう内に抱えている小さな子供もいない。全てが一つだ。俺ができるのもここまでかな」


 「そうですか、それは良かった。あの子が抱えている闇の全てをあの子は自分の物にしたのですね」


 「まあ、そういうこった。今のあいつに勝つのは俺でも難しい。というよりほぼ最強に近くなっちまった。ありゃあきちんとつなぎ留めておかないととんでもないことになるぜ」


 「大丈夫ですよ。私とルカは友達ですから。その関係が崩れることはしません」


 「だといいんだが……もし、あいつが何かの拍子に暴走しちまったら止めるのは一国の軍隊レベルの戦力が必要かもしれねえ。それだけ分かっといてくれ」


 「承知しました。それではお体に気を付けて」


 セシリアはケルトの部屋を出ると歩きながら、笑いをこらえるのに必死だった。その笑みに普段セシリアが発している光とは真逆の邪なものが含まれていることに気付く者はいなかった。


 次にセシリアが向かったのは国王のところだった。大臣を使い、国王を謁見の間に呼び出してもらう。


 「お前が私を呼ぶとは珍しい。何かあったのか?」


 「ええ、お父様、すいませんがお人払いをお願いします」


 横で聞いていた大臣は、国王から指図される前に謁見の間から出ていった。


 「さて、何事だ。何か秘密の話があるのだろう」


 「実は、わたくしの影武者のことでございます」


 「柏木ルカのか……お前の見込み違いでもあったのか?」


 「いいえ、その逆です。わたくしの見込み以上に成長しました。最早師団長クラスでも相手にならないでしょう」


 「何と。それ程までにこの短期間で成長を遂げるとは……今までの影武者とは違うようだな」


 「そうです。今こそ、あの時かと」


 「ふむ……少し考えさせてくれ。何分にも急な話だからな」


 「かしこまりました。どうぞゆっくりお考えになってください、お父様」


 そう言い残してセシリアは謁見の間を出た。そして声にならない声でつぶやく。


 「さっさと決断しろ。もうその時は来てんだよ」


 そのつぶやきは誰にも聞かれることなく、虚空に消えた。そしてセシリアは自分の部屋に戻った。





 セシリアが部屋に戻ると、ルカが既に戻ってきていた。


 「あ、帰って来た。どこ行ってたの?」


 「ちょっと、今日の修行の様子を聞きにケルトのところへ……さぞかし辛い修行だったことでしょう。本当に大丈夫ですか?」


 「へーきへーき。これからセシリアを守れる自信もついたし。まあ辛いことは辛かったけど、結果オーライってやつかな。へへ」


 「本当に心強いです。これからもよろしくお願いします」


 そう言ってセシリアは頭を下げる。


 「ちょっとやめてよー。友達なんだからさ。友達を守るのは当たり前じゃん」


 その言葉を聞き、セシリアは心中で、


 『友達……か。せいぜいそう思っておいてくれ』


 とつぶやいたが、それをルカに悟られないよう、いつもの笑顔を作った。



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