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 「今日は何すっかねー」


 なんて余裕のある会話をしながら、城の食堂で食事を採る。王女は基本的には私と一緒に食事をする。国王も皇后も一緒に食べることはない。だから私は国王の顔すら知らなかった。気楽っちゃあ気楽だけど、問題っちゃあ問題だよなー。なんて考えながら、サラダをぱくつく。この世界の料理は元いた世界とは違って完全オーガニックだ。健康にいい感じがする。味付けも素朴なものが多いが、きちんと手が込んでいて、非常にうまい。ついついガーっと食べたくなるが、そこは王女のスパルタ教育を潜り抜けた私。きちんとテーブルマナーを守って食事をする。


 「あ、言い忘れておりました。今日は外遊の日です。お父様やお母様と一緒に国の町や村を回ります。だから失礼の無いようにしてくださいね」


 私は思わず、食べているものをプーっと吹き出しそうになる。


 「そ、そ、そんな大事なことを言い忘れないでよ!」


 「どうしたのですか?取り乱して。そんなに大したことでもないでしょう」


 「大したことないってあんた……私、まだ国王にも皇后にもあったことないのよ!いつか謁見とかするんだろーなーとは思ってたけど、いきなり外遊って!」


 「大丈夫ですよ。私のお父様もお母様もお優しいですし、ルカは私の隣で私と同じように振舞っていればいいだけですから」


 「はあ、セシリアは楽観的だねえ……さすが光魔法の使い手だけあるよ」


 「ルカなら大丈夫ですって。私が太鼓判を押します。なんせ私の教育を潜り抜けてきたのですから……うふふ……」


 寒気のする笑いを浮かべセシリアは淡々と食事を進める。うーむ。まあ、確かにセシリアのコピーをしているだけなら楽っちゃ楽なんだが……この前のこともあるしなー。ほんとにダイジョブかいな。でも、考えてみれば護衛もつくだろうし、私の出番はそんなにないか。よし、腹を決めよう。


 「分かったよ。外遊の前に国王と皇后に挨拶位しておきたいんだけど?」


 「それもそうですね。では出発前にその時間を取りましょう。外遊も久しぶりです。これもルカが来てくれたお陰ですよ」


 「そんなストレートに褒められると若干照れるけどね……私は分かんないことだらけだから、何かあったら助けてよね」


 「承知しました」

 

 こうして私は初めて国王やその妃である皇后に会い、そして公務の一つである外遊に出ることになった。






 外遊前、私は謁見の間に通された。私は国王の前まで歩いていくと、うやうやしく膝を付く。


 「そなたがセシリアの影武者、柏木ルカだな。面を上げて、顔をよく見せてくれ」


 国王が仰々しく私に指図してくる。本来目上の者から指示されるのは嫌いなんだけど、ここは丁寧にいかなければならない。


 「はっ」


 私は顔を上げ、国王にまじまじと見せつける。


 「うむ。本当によく似ている。これならば影武者としてふさわしい。今日の外遊、頼んだぞ。」


 「はっ、もったいないお言葉。このルカ命に代えましても王女セシリア様をお守りいたします」


 「うむ。頼りにしているぞ。では、下がってよい」


 「はっ」


 私は立ち上がり踵を返す前に、国王の隣にいる皇后を見てみた。セシリアによく似ている。美しい顔立ちだ。そして優しそうな笑みを浮かべている。私の両親とはえらい違いだ。セシリアはきっと愛情に溢れて育てられたのだろう。……少しだけセシリアに嫉妬のような感情が浮かぶ。でも気にしてもしゃあない。私は謁見の間を後にした。


 そして外遊が始まった。私の役目はセシリアの乗る馬車に同乗して、一緒に手を振ったりすること。セシリアと二人きりなのが救いか。他にも同乗者がいると気ぃ使うもんね。馬車の周りは勿論護衛団が守りを固めている。ギブソンは……いないようだ。あれからギブソンにも会っていない。しっかり治癒されたとは聞いたけど、まだ現場復帰はできないのかな。そうこうしてる内に馬車は最初の町に着く。国王一行が町に入るなり、大歓声とともに迎えられた。道は群衆で溢れている。この中に刺客が居ても見抜くのは難しい。まあ、護衛団に任せておけば大丈夫だろう。


 「えーっと、笑顔で手を振る……っと」


 「そうそう、中々堂に入ってますよ。その調子です」


 セシリアに励まされながら、私は群衆に向かって笑顔で手を振り続けた。……これは……中々……ストレスが溜まる……


 「……ねえ、セシリア。これを後何時間やればいいわけ?」


 「そうですね。まだ始まったばかりですから、日暮れ位までには終わると思います」


 私は空を見上げる。太陽は煌々と照り「まだ午前中だよ」と私に告げている。くそっ、長い戦いになりそうだ。







 幾つか町を過ぎ、何個目か忘れてしまったけど、次の町に入る。ここでも大群衆の出迎えだ。私は笑顔で手を振る。その時だ。黒いローブを纏った男が、突然馬車の前に立ちはだかった。護衛団が追い払おうとするが、男は魔法を使えるらしく、護衛団とその騎馬がことごとく眠りに落ちた。これは……やばい!


 「セシリア、伏せて!できるだけ身を屈めて、外からは見えないようにして!」


 セシリアにそういうと、私は馬車を飛び降り、男に向かって攻撃を仕掛ける!しかし、男は言い放つ。


 「王女よ!その身柄貰った!スリープ!」


 まともに男の魔法を受けた私は、その場で崩れ落ち、眠りに落ちてしまった。



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