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 数日後、私はバルクのおっさんの案内で、王女の部屋の前にいた。いよいよかー。柄にもなく緊張するなー。何か喧嘩の前みたい。独特の張りつめた空気を一人で醸し出してるんだろうな、私。はあ。そんな私の思いをよそに、バルクのおっさんは、しゃーしゃーと王女の部屋をノックする。


 「失礼いたします。本日から王女の影武者となる柏木ルカを連れて参りました」


 うーん。一度会ってるとはいえ、最初どんな顔して会えばいいんだろ。最初の挨拶は「改めまして、よろしくお願いいたします。柏木ルカと申します」か?うわーキャラじゃねー。挨拶と言えばガンのくれあいから始まって、「あ?んだてめえ。調子にのってんじゃねーぞ」がしっくりくる私としては、非常に迷いどころだ。


 「どうぞ」


 王女の部屋から声がする。いよいよか。私はバルクのおっさんの背中に隠れるようにして、部屋に入る。相変わらず豪奢な部屋だ。でも、ここが王女の全てだったんだよね。そう考えると、孤独だった自分とリンクするような気がして、少し親近感が湧く。そして王女が姿を見せる。相変わらず私にそっくりだ。髪の色以外は。そして、相変わらず後光のような光のオーラを出してる。まぶしいなー。


 「お久しぶり、ルカさん。お体の方はもういいのですか?」


 なんと王女の方から話しかけてきてくれた。ラッキー。後は流れに乗って話をしていけばいいよね。


 「うん、もう大分いいよ。それよりギブソンとの戦いのとき、止めてくれてありがとう。あなたが止めてくれなかったら、私どうなってたか……」


 「これ、王女に向かって何という口の利き方だ!敬語を使わんか!」


 バルクのおっさんが私を諫める。しかし、王女は寛容だった。


 「いいんです、バルク。これから私の影武者になってもらおうという人が私に気を使って何の得がありましょう。それよりもルカさん。あの試合のことはもう気になさらないで下さい。ギブソンの治療も済んでいますし、何よりあの試合を振り返ることは、あなたにとってとても辛いことでしょうから……」


 何だか全てを見透かされている感じがする。この王女、中々食えないな。と、ついつい色々勘繰りたくなるのが私の悪い癖か。まあ、優しい言葉を掛けてくれてるんだし、いい人には違いないか。そうだよね、でなければこんなに光のオーラは出ないもんね。


 「ありがとう。そう言ってもらえると私も助かるよ。それよりバルクのおっさん、今日から私影武者になるんでしょ?髪の色とかどーすんの?そうでなくても王女の光のオーラが凄すぎて、このままだと私影武者だってバレバレだよ?」


 「髪の色は染めてもらう。光のオーラは光魔法を施した服装をしてもらう。もちろん外見は王女がお召しになっているものと同一のものだ」


 「髪染めんの?久しぶりだなー。金パなんてどん位やってないだろ。あ、髪がなるべく痛まないようにしてよね」


 「何を言ってるのかよく分からんが、こっちの世界では魔法で髪の色を変えることができる。髪の色素自体を変えるから、お主が心配しているようなことは起こらんだろう」


 「へー。でも頻繁にやんないとプリンになっちゃわない?あれだせーから嫌なんだけど」


 「あー……察するに髪を染めてもまた黒髪が生えてきてしまうのを心配しているのだと思うが、それも無用だ。髪の色素自体変えるのだから、生えてくる髪も金髪だ」


 「なるほどねー。じゃあ黒髪とはこれでお別れか……んー、寂しいけど、しゃーない!もし私がお役御免の日が来たら、黒髪に戻してくれるんでしょ?」


 「そんな日が来れば……な」


 バルクのおっさんとそんなやり取りをしている私を見て、王女はクスクスと笑っている。その顔が何とも愛らしい。ってことは、私もあんな顔ができるんだな。育ちの違いは恐ろしいよまったく。


 「分かった。じゃあ、色々とやることありそうだから、さっさとやっちゃいましょ」


 「そう急くな。髪を染めるのも、着るものを用意するのも王女自身が、二人っきりでやりたいと御所望なのだ。だから、これでわしは退室するから、後は王女と話し合うがよかろう。くれぐれも無礼のないようにな」


 王女がやってくれんのかー。まあ色々話せば分かることもあるだろうし、それはそれでいいか。そういえば王女としてのマナーなんかも王女自ら教えてくれるとかケルトが言ってたな。何か禁断の花園の予感がする……ってそんな訳ないか。


 「じゃあ、後は頼んだぞ。王女様、これでわたくしめは失礼いたします。もしルカの奴が非礼を働いたらすぐに飛んでまいりますので……」


 「心配は無用ですよ、バルク。それよりも早くルカさんとお話がしたいわ。色々楽しそうですもの」


 「それでは、失礼いたします」


 そういって、バルクのおっさんは部屋から出ていった。いよいよ二人きりだ。何かどきどきするなー。


 「それではルカさん」


 「はいっ」


 慌てて返事をしたから。若干声が裏返ってしまった。恥ずかしい。


 「まずはその髪を染めましょうか」


 「は、はいっ」


 「ルカさん、そう緊張なさらないで。それではすぐに影武者だとばれてしまいますよ。私の前では自然体でいて下さい。できる限り私もそうしますから」


 確かに王女を前にしてキョドる影武者なんていないわな。もっとリラックスしていこう。


 「了解。ていうかルカでいいよ。そういえばまだ名前聞いてなかったね。名前教えてくんない?あとなんて呼べばいいかも」


 「わたくしの名前は、セシリアと言います。呼び方はそのままセシリアと呼び捨てで結構です。お互い気を遣わずにいきましょう」


 「OK!じゃあ、セシリア、早速髪染めるの頼むよ。それから、服の用意もね」


 「分かりました。それではルカ。こっちに来て下さい」





 こうして、私の影武者生活がスタートした。これからどうなっていくのか……でも楽しそうだからいっか!



 

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