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 勝った……しばらくその余韻に浸っていた私は、ふと恐ろしいことに気付く。あのまま王女が止めていなかったら、私はギブソンを……殺していた。何だかあの瞬間は自分が自分でなくなったような気がした。だけど……それも全て「自分」なのだ。受け止めていこう。そう決めて、私はその場に倒れ込んだ。疲れた……


 私が倒れ込むのとほぼ時を同じくして、治療班がやってきて私とギブソンを運んで行った。私はされるがままになり、そのまま目を閉じた。





 再び目を開けると、そこは見知った私の部屋だった。ミレニアが心配そうに私を覗き込んでいた。どこかで見たことのある風景。だけど、そこに一つだけ異質な者があった。ケルトも一緒にいたのだ。


 「お、目が覚めたか。お疲れさん」


 ケルトは相変わらず軽い調子で話しかけてきた。私も務めて軽い感じで返す。


 「いやー、マジで疲れたわ。軽く一生分は体力使った気がする。もうあんなのとはやりたくないわね」


 「まあそうだろうな。だけどギブソンに勝てるなんて実は俺も思ってなかった。つーか、100負けると思ってたわ実際」


 「じゃあ何で試合させたのよ」


 「それは、あれ、やっぱり成長確認?自分がどれだけ強くなったかを確認して欲しくてさ。……あと、バルクのプレッシャーが……な」


 後者が本音か。まあそうだろうな。いつまでも影武者候補何ていうよく分からん奴に無駄飯食わせてるのもあれなんだろーな。バルクのおっさんがどんな立場の人間かよく知らないけど、きっと中間管理職的な立場で、上からせっつかれたに違いない。それでケルトに試合を組ませたのだろう。まったく……まあ、いいけど。これで晴れて私は王女の影武者って訳か……実感わかないなー。


 ケルトとそんなやり取りをしていると、ミレニアが心配そうに尋ねてくる。


 「あの……ルカ様、お体の方は大丈夫ですか?」


 「あー、平気平気。つっても自分でもよく分かんないんだけどね。まだ、体動かしてないし。でも五体満足で帰ってきたよ。安心して」


 「良かった……私、心配で……」


 本当に善人なんだなーミレニアは。私だったら人の心配をして不安になるなんてないだろーな。と、思ったがこれからはきっと違うことになるだろう。私は、自分のことより王女のことを心配しなくてはいけなくなるのだ。むしろそれを自分から望んだのだけれど。誰かのために生きる……か。うん、やっぱり悪くない。これまでの自分の真っ暗だった人生を少しでも取り返そう!


 「あのさー、私っていつから王女の影武者になれんの?」


 「唐突だな。でもそんな後じゃないぜ。お前は十分な実力を得た。体調が回復したら、すぐにでも王女と行動を共にしてもらうことになるだろう」


 「そっか。でもミレニアとお別れってのはちょっとやだなー。そこら辺、融通してくんないかな?」


 「それはまあ可能だと思うぜ。王女の従者は沢山いるからな。その中の一人になることくらいはできるだろ」


 「やった!ミレニアもそれでいい?」


 「ええ、私はルカ様のお傍にいれるのでしたら……」


 ミレニアは少し顔を赤らめる。愛い奴愛い奴。


 「よし、俄然やる気が出てきたわ。……でも王女の影武者って何すんの?今更なんだけど」


 「基本的には王女と寝食を共にして、四六時中一緒にいればいい。ただ、どんな危険があるか分かんねーから、気を張ってなきゃだめだぞ。後、お前に欠けている、王女としてのマナーも身に着けてもらう。それは王女直々に教えてくれるそうだから、しっかり覚えな。もっとおしとやかになれってことだ」


 「うげ。私の苦手なやつか……でもまあ乗りかかった船だし、とことんやってやろうじゃん!」


 あ、あと一つだけ言わなきゃいけないことがあったんだ。


 「ケルトー……」


 「ん、何だよ」


 「……ありがとね。私最初あんた見たとき、なんだこのチャラ男って思ったんだけど、すげー助けられたわ。ありがと」


 「ばっ、ばっかおめー急に改まって何だよ。やっぱまだどっかおかしいんじゃねーのか?」


 ケルトは照れながら、憎まれ口を叩く。そういうところもこいつらしい。でも本心だ。ケルトがいなかったら、私はここまで強くなれなかっただろう。昔の私とも分かり合えなかっただろうし。バルクのおっさんにも感謝してるけど、あのおっさんじゃあ、ここまでの強さにはなれなかっただろう。そう思うと、やっぱケルトには感謝だね。


 「だけど勘違いしないでよ。別に好きとかそういうのじゃないんだからね!」


 「あ、あったありめーだろ!俺には俺の帰りを待つ数十人の女がいるんだ。お前なんかに手え出すかよ!」


 むきになってやんの。意外にうぶなのかも。


 さて、やることはやった。後は体の回復を待って、いよいよ王女とご対面だ!



 

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