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「ついにこの日が来たな。今までよく耐えてきた」
柄にもなくケルトは殊勝なことを言ってきた。まあ確かに、何度も殺されかけたけどね……だけど、そのおかげで私はかなりレベルアップした。その一点において、ケルトには感謝しかない。ただ、そのほかの面では必ずしも感謝ばかりじゃないけど。こいつは、本当に私に対するいたわりが少なかった。まあ、厳しくした方が伸びると思ったのかな。いずれにせよ、私はまたこうして天覧試合の場に立てることになった。しかも予想よりも早く。それで十分だ。
「私がここまでこれたのも、あなたのお蔭よ。ありがとう」
一応、殊勝な言葉に対しては礼で返す。本心だしね。
さて、いよいよ、2回目の天覧試合だ。今回は試合は一回のみ。相手はもちろん……ギブソン。ギブソンに勝てば、晴れて私は王女の影武者になれる。
私は、緊張しながら試合場でその時を待った。観覧席に王女が来る。見ててよ、今度こそあなたを解放してあげるから。そして……ギブソンが入ってくる。ギブソンは私を見るなり、こう言い放つ。
「かなりレベルアップしたようだな。これならば手加減の必要もないだろう」
「そうね、自分で言うのもなんだけど、あの時の私と同じと思ってもらっちゃ困るわ。あなたの本気を見せてもらうから」
「ふん、減らず口は相変わらずだな。まあいい。後は試合で見せてもらおう」
一通りやり取りが終わったのを見計らって、王女が言葉を口にする。
「それでは、準備ができたようなので、試合を始めて下さい」
その言葉を皮切りに、私は一気に戦闘態勢に入る。ギブソンも同様だ。しっかし、その姿を見ると、いかに前回は手加減をしていたかが分かる。もう出てるオーラが違いすぎるもんな。ただ、一つ言えるのは向こうも同じことを思っているだろうということ。
私は、出し惜しみなく、最初から飛ばしていく。まずは遠距離攻撃!
「ダークボール!」
これは、ケルトとの修行で身に着けた、闇を相手に飛ばす技。岩に風穴を開けた技だ。ギブソンは臆せずに、闇に近づくと、
「ふん!」
と、右手でボールを薙ぎ払う。右手に風を集中させ、ボールの軌道を変えたか。ボールは明後日の方向に向かって飛んでいく。
しかし、これは距離を詰めるための誘導!私はボールの陰に隠れて、ギブソンに向かって駆けていた。ギブソンがボールを薙ぎ払ったところにすかさず一撃を入れる。
「フィスト!」
ボールを薙ぎ払ったギブソンは不意を突かれたようだったが、すぐに体制を立て直して、両手で私の攻撃を防ぐ。しかも風のバリア付きだ。くそっ、破れないか。一撃入れたところで、私は再びギブソンと距離を取る。ヒットアンドアウェイってやつだ。
以前より、ギブソンの動きに余裕はなさそうだ。これは……いい勝負ができる。私は確信した。続けざま、今度は三か所同時に重力場を発生させる。
「チェーン!」
これは相手の左右と後方にそれぞれ重力場を発生させ、相手の動きを止めつつ、左右の腕の動きを封じる技だ。これでガードしづらくなっただろう。私は再びギブソンに向かって走る!ここで一撃入れられれば……!
「ウインドウォール!」
しかし、そう上手くはいかない。ギブソンは自分の周りに風の壁を張り巡らせ、重力を遮断した。同時に私の攻撃も跳ね返される。
「中々やるな。では次はこちらからいくぞ。スラッシュ!」
風に刃が私を襲う。私はひらりとその刃を躱し、返す刀でもう一度飛び道具を打つ。
「ダークボール!」
今度はギブソンが私の攻撃を躱し、そのまま私に接近してくる。速い!
「風は近距離の方が威力が上がる。ソード!」
ギブソンは私の近くまで距離を詰めると、右手に風の刃を纏わせて、私を切りつけてきた。私はその刃をすれすれで躱すと、相手をかく乱する作戦に出た!出し惜しみはなしだ!
「インビジブル!」
これは、ケルトも使っていた光学迷彩の技。ギブソンには私の姿は見えない。しかし、
「スラッシュ!」
正確に私の方向に向けて風の刃を飛ばしてくる。見えてる?
「前回言ったはずだ。音を消さない限り、私にはお前の位置は丸分かりだ」
成る程、そういうことね。私は右手に闇を集中させ、風の刃を受け止める。そして、軌道を変えて弾き飛ばす!そして、もう一度、ギブソンと距離を取る。それからインビジブルを解除する。
「やはり、前回とは比べ物にならん動きだ。戦闘はこうでなくてはな」
「同感よ。やっぱりあんたは強いわ。けど、今回は私が勝つ!」
私はギブソンとの戦闘に、わくわく感を覚え始めていた。さて、これからどう攻めるか。
また、リアルの都合で更新が一日開いてしまいます。申し訳ありません。ギブソンとの戦闘は力を入れて書きたいので、更新をお待ちください。