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 ケルトと私は場所を移動し、いつもの練習場に来た。正直、もう見栄もプライドもない。ただひたすらに強くなりたい。それだけだった。私は、洞窟の一階すら踏破できずにここに立っている。その事実が私の全てを捨てさせた。


 「よろしく……お願いします」


 私は恭しく礼をする。ケルトは苦笑いでそれを受け止める。


 「自分の実力を目の当たりにして、少しは分かったかい?自分がどれだけ大それたことをやろうとしてたか」


 「ええ、十分すぎるほどにね」


 「ほんとはさ、あのままずんずん進んでって、どっかで死んじゃうかなーって思ってたのよ。そうじゃなかっただけでも見込みあるぜ、お前」


 「あのまま……って見てたの?どうやって?」


 「俺を見くびってもらっちゃ困る。基本は闇魔法を使うが、対象者のトレース位なんてことないさ」


 「じゃあ、助けてくれることもできたってこと?」


 「いや、見守るだけ。まあ、あの距離だったらダッシュで行って助けることもできたと思うけど、それははなからする気なかったし」


 「じゃあ、私が本当に死んでたらどうするつもりだったの?」


 「そん時はそん時さ。だけど現実として、お前は生きて俺に頭を下げてでも強くなろうと決めた。それが全てだよ」


 こいつ……読めない。だけど今は……こいつに頼るしかない。いつか、認めさせてやる。その時までは……何があっても堪える!


 「早速、修行に移るぞ。準備はいいか?」


 「いつでも」


 何が来る?やはり実戦形式での修行か?


 「まずは、お勉強だ」


 「べ、勉強?」


 意外な言葉に私は拍子抜けする。この期に及んでおちょくってんのか?


 「何で勉強?闇魔法の基本ならバルクのおっさんにがっちり教わったわよ」


 「俺の言うことには、素直に従う。いいな」


 ぐっ……それを言われると、どうしようもない。


 「……分かった。何から覚えればいい?」


 「ちょっと違うな。覚えるんじゃない。考えるんだ。まず、お前は自分の弱点をどこだと思っている?」


 「えーっと……2つの魔法が同時に使えない。接近戦しか本領発揮できない。後は……」


 「後は?」


 「恐らくだけど……自分の力を全ては発揮できていない」


 「ふむ。まあいいだろう。大体あってる。じゃあ、お前の取り柄はどこだ?」


 「取り柄?えーっと……成長のスピードが早い。喧嘩慣れしてる。それと……」


 「それと?」


 私は、奥歯をぐっと噛みしめる。


 「今は強くなる目的がある」


 私は、決意を込めて言葉を発した。しかし、ケルトにあっさりといなされてしまう。


 「ふん、こっちの方はもう少し自己分析が必要だな。大体、目的があったって、強くなれるもんでもねーし」


 「私の何が足りないっていうの?」


 「単刀直入にいうぞ。お前は戦闘のいろはが分かっていない。そして、自分でも気付いてない取り柄が沢山ある。自分で把握してないってことは、分かってないってことだろうけど、お前は本来は、隠密行動向きなんだ」


 「え?」


 意外なケルトの言葉にキョトンとなる私。私が隠密行動?このド派手ヤンキーで鳴らした私が?


 「闇魔法ってのは、使い方によっちゃあ強力な攻撃手段だ。そっち方面をお前は鍛えた。それ自体は間違いじゃない。しかし、もっと属性を利用した使い方がある。それが、隠密行動だ」


 「ちょっと難しいんだけど、実例を出してくんない?」


 「例えば……じゃあ、俺の姿を見ていろ」


 何、俺の姿を見ていろって。そりゃ見るわよ。曲がりなりにも私の師匠何だか……えっ?


 私は面食らった。突然目の前にいたケルトが消えたのだ。確かにそこにいたはずなのに……


 「例えば、こんな感じだ。使い方次第で、相手から見えなくなることができる」


 声はすれども、姿はみえず……一体どういう使い方をしたの?私は疑問が後から後から湧いてくる。しばらくすると、ケルトはまた姿を現した。何だったんだろう、今のは。


 「これは、お前らの世界でいう、光学迷彩に近い。自分の発している光のみを内向きに吸収し、自分の姿を相手に見えなくしたって訳さ」


 「そんな方法が……闇の中で、自分を闇で覆う「シャドウ」なら身に着けたけど、これなら日中でも使える……」


 「まだまだあるぞ、これからが本番だ、覚悟はいいか?」


 私は、胸がどきどきするのを止められなかったが、ただ無意識に頷いていた。



 


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