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 洞窟をさらに進んで行くと、次の魔物が現れた。こんどは人型をしているが、その肌の色は緑色で、身長も120~130cm位の小型の魔物だった。恐らくゴブリンとかいう奴だろう。ぼろ切れを身に纏い、手にはどこで手に入れたか、錆びた剣を持っている。


 「こういう奴なら、やりやすいわね……」


 私は、そう独りごちると、一足飛びに駆け出す。ゴブリンに対し、攻撃する暇を与えず、一気に叩き潰す作戦だ。

 

 「フィスト!」

 

 見事ゴブリンの顔に命中!……するはずが、ゴブリンはこちらが強いと見るや、脱兎のごとく逃げ出した、私の拳は、宙を切る。


 「何よ。逃げんなら最初から出てこないで欲しいもんだわ」


 気を取り直して、先に進むことにした私は、攻撃のために置いておいた松明を拾い、再び奥へと進んで行く。しかし、それ程間をおかず、次の魔物と遭遇することになる。先ほどのゴブリンだ。


 「またあんたか……」


 ゴブリンは今度は様子が違い、「げぎゃげぎゃ」と後ろに向かって何か喋っている。そしてその喋っている先をよく見ると、他にも数匹のゴブリンがいた。


 「仲間を呼んできたってっことね……」


 さてどうするか。ドームで目くらましをして、一網打尽にしたいところだけど、もともとこいつらは暗闇の中で生きている生物。あまり効果はないだろう。ならば、リバースフィストで一匹ずつ吸い寄せて攻撃するか……考えあぐねている私に、ゴブリンたちは向こうから襲い掛かってきた!くそっ!


 一匹目のゴブリンの攻撃を躱し、カウンターで一撃を入れる。これで一匹。しかし間髪入れず、もう一匹の攻撃が来る!私は一匹目に踵を返すと、すかさず、返す刀で二匹目に、


 「シュート!」


 と蹴りを入れる。これで二匹。しかし、まだまだゴブリンたちは攻撃の手を緩めない。3匹目の攻撃を私は体を捻って躱す。そこに4匹目の攻撃が来る!とっさに私は手に闇を集中し、4匹目の攻撃を手で受ける。そのまま、ゴブリンの錆びた剣を手の中で握りつぶす。しかし、背後から殺気を感じた私は、横に飛ぶ。3匹目が私を背後から狙っていた。あぶねー。そのまま、ゴブリンたちと距離を取る。


 どうやら4匹で終わりのようだ。二匹退治したから、後二匹。くそー、地球での戦いと違って、周りが岩だから複数相手はやりづらい!いっそグラヴィティで動きを封じ込めて……いや、ここは洞窟だ。下手をしたら落盤して生き埋めになる可能性がある。じゃあ……やっぱり、これ!


 私はさらに距離を取ると、3匹目目掛けて魔法を放つ!


 「クラッシュ!」


 ゴブリンは離れた処からの攻撃には弱かったらしく、「うぎゃあああ」と悲鳴を上げながら、押しつぶされていく。しかし、4匹目が、私を狙ってこっちへ来る!私は同時に魔法は使えないんだっつーの!


 間に合うか!3匹目を何とか肉塊にし、ぎりぎりで4匹目の攻撃を躱す。危なかった……間に合わなければ、痛手を被るところだった。でも一対一になればこちらが俄然有利!


 ゴブリンが攻撃を仕掛けてくるのを躱して、一撃を入れる。


 「フィスト!」


 見事、命中。ゴブリンはその場で動かなくなる。私は、肩で息をしていることに気付いた。


 「はあ……はあ……」


 こんなのが続いたら、ちょっと持たないかもしれない。まだ一階の、少し先に進んだだけだっていうのに。私の何がいけない?自問自答する。まず私は魔法が同時に使えない。それが、多対一の戦いだと、非常に弱点になる。また、飛び道具も少ない。接近戦しか明確な攻撃方法がない。そして、制限された状況下での戦いに鳴れていない。


 ケルトが私をこの洞窟に放り込んだ意味が分かった気がした。王女を守るとなったら多対一は当然、状況も常に地上とは限らない。そして、近距離でしか戦えないとなると、王女を守りながら戦うことがかなり難しくなる。


 「そういうことか……」


 私はある決意をして、来た道を引き返す。悔しくてたまらない、奥歯を何度も噛みしめる。しかし、他に方法がない。このまま進んで行ったら私は、程なく殺されていただろう。それでは元も子もないのだ。悔しくてたまらないけど……でも、こうするしかない。


 私は入口まで戻り、本当に昼寝していたケルトに声を掛ける。


 「すいません、私の力不足でした。どうか、修行を付けて下さい」


 それを聞いたケルトは、にやりと笑いながら体を起こす。


 「意外と早かったな。もうちょっと頑張ると思ったが、賢明っちゃ賢明か。自分がどれだけの実力か分かっただろう。あの御前試合のような状況は実戦ではほとんどない。それで王女を守ろうなんて、甘いんだよ」


 ……何も返す言葉がない。


 「約束の40階には行ってねーが、いいだろう、修行を付けてやる。このまま何も考えず進んでいたら死んでただろうし、それに気付いて俺に頭を下げたお前に、こっちも敬意を表してやるよ」


 「……お願いします」


 私は悔しさと、みじめさと、おごり高ぶっていた自分に気付いた恥ずかしさとで、泣きそうになっていた。でも……泣くもんか。


 これから修行して、絶対にケルトを見返してやるんだから!


 

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