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 やられる!そう思った次の瞬間。


 上方から私を押しつぶしている空気圧がなくなった。どういうこと?疑問に思う間もなく声がする。


 「立て。この試合でお前が死んでもらっては困る。それに……」


 いつの間にか地上に降り立っていたギブソンが、私に喋りかけ、何かを言いよどむ。


 私は立ち上がりながら、息も絶え絶えに声を振り絞る。


 「それに……何よ……」


 「それに……お前は自分の力を半分も出し切れていない。今の実力では正直王女を守ることはできないだろう」


 成る程、王女を慮って言葉を選んだか。要は実力不足だからで直してこいっつー話か。


 ……そんな訳いくか!これまで、一か月だけど死ぬほど修行した。死にそうな目にもあった。見たことのないこの星で、この世界で、求められることは全てクリアしてきたつもりだ。確かに私はまだ未熟な部分がある。それは認める。でも、今はこの戦いに勝つ明確な目標がある!


 王女を……あの部屋から出す!


 たった一人で、孤独に暮らしている王女に、外の光を浴びさせる!


 そのためにも、負ける訳にはいかない!


 「……確かにあんたは強い。だけど、私にだって意地がある。負けられない理由もある。何としてでも、あんたを倒す!」


 私は、一足飛びにギブソンへと向かう、手には渾身の一撃を込めて!


 「フィスト!」


 しかし……


 「……その心意気は認めよう。だが……」


 ギブソンは、右手を突き出す。私をなめてくれてんのか?だったら、この隙にケリをつけてや……


 「今のお前では、私には勝てない。どうやってもな」


 私の拳はギブソンに届く前に圧倒的な風の壁に遮られ、跳ね返された。


 「くっ!それなら!」


 「グラヴィティ!」


 私は続けざま、力の限りの重力波をギブソンに浴びせる。これで足止めをして、一撃を……


 「無駄だと言っている。この程度の重力波で足止めできるのは、ルアンレベルまでだ。」


 そういうと、ギブソンは私の方に歩み寄ってくる。嘘……ルアンの時の5倍は威力が上がっているはずなのに!


 「はあああああああ!」


 私は渾身の力を込める。100%だ!


 「あああああああ!」


 「お前には、まだ成長する余地がある。出直してこい」


 ギブソンはやはり、立ち止まることなく私の方に歩み寄る。そして……目の前までやってくると歩みを止めた。


 「それまでは……」


 何か言っているが構わず私は、技を繰り出す!


 「シュート!」


 「……私が王女を守っておく。心配するな」


 ギブソンはそう言うと、私のシュートを軽く受け流し、私のみぞおちに強烈な一撃を加えた。


 「……そんな……」


 意識が朦朧とする。嫌だ、負けたくない。負けたくない。負けたく……ない……


 それ切り、私は意識を失った。





 次に私が目覚めたのは、城の中の自分のベッドの上だった。心配そうにエミリアが私の顔を覗き込んでいる。


 「お目覚めになられたのですね、よかった」


 「あー、そうね。死んではないみたいね。……試合はどうなったの?」


 私はわかってながらも質問する。


 「ルカ様が意識を失った後、正式に王女様が、ギブソン様の勝ち名乗りを上げられました。ルカ様はそのまま救護班の治療を受けられ、ここに運ばれてきたのです」


 「まあ、そうだろーね。色々ダメージがあったから……王女の様子はどうだった?」


 「王女様は、普段と変わらないご様子でしたが……言われてみれば、少し寂しそうな顔をしてらっしゃったようにも見えました」


 その言葉を聞いて、私は胸が締め付けられる思いがした。王女は、またあの部屋に戻っていったのだろう。とても豪奢で、とても孤独なあの部屋へ。


 「エミリアー……」


 「はい。なんでしょうルカ様」


 「王女には友達とかいるのかなー」


 「王女様ですか?……もちろんお着きの者や護衛の方々はいらっしゃいますが……友達となると……申し訳ありません、私は存じ上げないです」


 「そっかー……そうだよね……」


 決めた。私は、あいつを、ギブソンを倒す。神官のおっさんにこれまで以上の修行を付けてもらう。そして……私が、王女の友達になる。




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