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ミンネゼンガー物語  作者: 高月霞兎
北方の国
2/2

第一章一項

580年4月7日

 


「ご静聴ありがとうございましたー!!!」


 ここは北東のとある町の門の近くの広場。

 旅の休憩がてらリュートを弾きながら鼻歌を歌う。

 気がついたら人は集い

 気がついたらリサイタルになっていた。

 私にとっては良くある事。

 結局鼻歌ではなく何曲か歌い、

 湧き上がる歓声と拍手の中にいる私は、お辞儀をしその声に応えていた。


「いやー良い歌声だったよ!」

「また聴かせてよ!」

「君、どこから来たの?名前は?」


「はい、お答えしましょう!自由と詩とリュートを愛し旅を続ける吟遊詩人!その名をフリート・ミンネと申します!どうぞ、宜しく!」


 いつも通りの挨拶をし、お客様の笑顔に満足をする。

 会話をしたり、握手をしたり、また明日も歌う約束もした。


 とても友好的な人達でよかった。

 そこで私はここへ訪れた目的を問う


「一つ伺いたい事があるんだけどいいかな?

 ()()()()さんってこの町にいる?」


「「!!!」」


 突然人々の様子がおかしい


「リネルベですって」

「なんだこの子も回しもんかよ。そうはいかんぞ。」

「チッ、歌で騙そうとしてたのか。」


 ザワザワとし出し、向けられる目線が暖かいものから一瞬で冷ややかなものに変わった。

 1歩で触れられる位距離が近かったのに、今では大声を出しても声は届かない。


「え、ちょっと、、、何?どういう事か教え―――」


 そこに1人のおじいさんが一歩前に出る。


「お嬢さん、時が悪かった。この町中に入ることを許すわけにはいかなくなってしまった。」

「どうしてですか?リネルベさん、いないんですか?」

「…」


 目を逸らし黙ってしまった。








 《リネルベ家を探る者は排除せよ》









「それがこの町の共通理解だ。分かったら諦めて帰りな。」


 別の図体の大きい男だ。

 他の者も頷きこの場から去っていく。

 軽蔑な眼差しをする者

 ごめんね、と訴えている者



「そんな...そんな反応されたら、ここに関わりがあるって肯定してるようなもんじゃない・・・」



 1人取り残された私は寂しく呟き、その場に座り込みうなだれる。一先ずリュートを片付けているが、まさか聞いただけでこんな事になるとは...なかなか困ったものだ。

 しかし私とて諦める訳にはいかない。

 今いる場所は町の直ぐ近くの外の広場。

 さっきまでの人達は町の外に出かけたり、帰って来た人が足を止めてくれたのだ。

 とりあえず町に帰った人達が向かった先に進んでみる。






 そこには大きな門があり、そこから5m位の塀が町をぐるっと囲んでるようだ。

 門の前には2人の門番が立っていた。

 駄目元で聞いてみる。


「こんにちは。すみません、中に入ってもいいですか?」


 こちらを見た時彼は笑顔だった。

 しかし…


「こんにちは。あなたは…もしかしてミンネという吟遊詩人かい?ダメダメ、入れる訳にはいかないよ。」

「話しだけでも…」

「何言っても無駄だよ」


  ドン


「そう…ですよね…」


 完全に警戒モードだ。

 目を光らせて手に持つ警杖を床に打ち鳴らされる。








「はぁー。」


 溜息をついて近くの階段に腰かける。

 どうしたものか。

 せっかくここまで来たのに。やっと約束が果たせたはずがまさかの門前払い。



「そんな所に座っててもどうにもしてやれんぞ。」



 振り返り苦笑いを返し、おもむろにリュートをケースから取り出す。

 左足を上に足を組み、抱えるように楽器を構える。


 何か状況が変わる訳では無い。

 でも何か困った時、誰かに話すと気が楽になるように

 思いを表に出す事で、私は次に進める。

それが私。

 何の曲でも無い。

 ただ、このどうにもならない心境をそのまま、指に伝える。

 そうすれば自然に中指は第2コースにあり、

 音が生まれる―――




 DEF AFA BーcB Aーー GーaG FーgF MーM AGE

 DEF AFA BーcB Aーー GーaB FーgA MーfM Dーー……





 体を左右に揺すりながら音を奏でる哀愁漂うその背中を見た門番達は、見合わせて困った顔をする。

どうしようか、話しだけでも聞いてあげようか、

そう心が揺れ始めた時、



「なんだよ。なんで追い返して無いんだ。

《リネルベ家を探る者は排除せよ》俺が言うのはなんだが、これは町を守る為の共通理解。違うか?」



不意にぶっきらぼうな声が聞こえた。

私は新たな人物の登場に気づき振り返る。

そこには虚ろな目をして口を曲げ、顎を前に出しやる気をどこかに置いて来てしまったような面持ちをし、短髪と言うには髪の長い青年が立っていた。



「それは分かっているが...」

「簡単に心揺らぎやがって。町の奴らだってそうだ。次いつやって来るか分からないんだぞ。こいつだって諜報員かも分からん。

おい、そこのお前。その曲に力がある事分かってんのか?

同情させて入ろうとでもしたんだろ。」


「そんな事考えて無いさ!

ただ、目的を果たしに来たら門前払いされて途方に暮れてただけで...」

「ふん。目的は侵入する事か?町の奴らにも聞いたが、嘘はつくなよ、正直に名乗ってもらおうか。」


「私はフリート・ミンネ。自由と詩とリュートを愛し旅を続ける吟遊詩人さ...

きっと君はこう言っても信じてくれないんだろうね。身分を証明するものなんて無いわけだし。代わりと言ってはなんだけど、さっき皆にも聴いてもらった曲でも聴いてもらおうかな。」



彼は何様なんだろうか。

ずっと塀に寄っ掛かり、腕組んで立っている。

何も反応が無いって事は好きにしていいってことだよね。


「ではお聴き頂こうかな、第1章11編“最後の温もり”」





――――――――――――――――――――――――――






「どうもありがとうござい」「違う...」

「え?」

「最後の歌詞だ。間違っている。」


歌い出した時、確かに彼ははっとした表情をしてこちらを見ていた。ずっと退屈そうにしていたが、歌詞が始まった途端に興味深げに聞いていたのだ。

そして、最後の部分になったときに眉間にしわを寄せ、首をかしげていたのだ。



「話を聞いてやる。

どうしてリネルベの者を探しに来たのだ。」

「どうして急に...」

「なんだ、入りたくないのか?」

「もちろん入りたいよ。

そう、そうね、私の家系は代々吟遊詩人でさ、

旅をし歴史のある土地を訪ね、歌い、語り、伝え、

時には楽しませ、時には癒し、目的なき日々をリュートと共に過ごしてきたんだ。

私が家を出る時、母から3年後に読むように渡されてね。

つい最近その手紙を読んだら、デウツ国の北東の町でリネルベさんを探すように書いてあったんだよ。

ほらこれ。」


私が母からの手紙をポーチから取り出し彼に見せる。



「...」

「ん?」



手紙を読み終えると、黙り込んで私をその蒼眼でじっと見つめてくる。

私は首をかしげ、表情でどうしたのかと尋ねてみる。



「中では俺のそばを離れるな。勝手なことをしたら容赦なく排除するからな。」

「え!いいの?」

「ちょっと、中に彼女入れる気ですか。あなたが言う事でも私たちは門番として許すわけにはいきませんよ。」


「この町に、俺より強い奴はいるか?第一こいつが俺の手に負えないようなやつには見えないだろう。」

「ですが…」

「いいんだよ。おい、行くぞ。」



彼は無理矢理門を通り進んでいく。

私は急いでリュートをしまい、彼の背中に小走りで追いつき、


そして、やっと門を通れた。


一歩街に入ったところで彼は振り向き...





「ようこそ、ドルトの町へ。歓迎しないでやるぜ。」






 

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