人生やり直し
今にも雨が降りそうな銀色の空の下、民衆は異様な熱気に包まれていた。
歓喜に叫ぶ者、苦しみの開放に涙する者、過去の恨みを込めて罵倒する者。
皆が広場に集まり目の前で行われる、国の中枢に居た者達の処刑を今か今かと待ち構えた。
広場につながる道を、両脇を兵士に掴まれながら歩く。
広場のほうから歓声が上がる。父か、継母か、異母妹の誰かが処刑されたのだろう。
「ははっ」
思わず乾いた笑い声が出た。兵士たちが訝しむような視線を向けてきたが気にもならなかった。
――――私が王族か。今まで彼らは私の事を人としてすら扱ったことはなかったのに。こんな時だけ王族として扱う奴らに吐き気がする。
頭では分かっている。見せしめとして王族全員を処刑することがこの国を復古する手助けとなり、敵国が統治しやすくなるという事も。私は新しい国を作るための犠牲だという事も。
全部、全部、分かっている。ただあまりにも理不尽でリサーナはそれを飲み込めずにいた。
身勝手な父親たちには怒りを感じるが、国民に怒っているわけではない。
ましてや、あの人に…敵国の王子であり、此度の戦争の最大の貢献者であるエドワードに感謝こそすれ、怒りなど微塵もなかった。
まだ母が健在で私が王女として振舞っていた幼きときに、外交できた王子と交わした約束。
あれが叶うことなくこの世を去ることが少し寂しく感じた。
(彼はあの約束の事、覚えているのかしら。願わくば忘れて幸せになってほしい)