8*姫魚さんの提案
注文から約15分後、二人共の食事が運ばれ、他愛のない話をしながら、1時間もせず食べ終わった。
もう一度飲み物を取りに行き、2人ともが席に落ち着く。
「それじゃあ、白雪さんの話を聞かせてもらおうかな」
「あ、はい…あの、ほんとに、そんな凄いことを話すわけじゃないんですけど…」
「うん、大丈夫。何でも聞くよ」
姫魚さんの言葉に、少しだけ肩の力を抜く。
そして、朝あったことから、ことの中心となる話をする。
ひどく拙い表現ばかりの話を、姫魚さんは頷きながら聞いていた。
「__と、いう…わけなんですよ。もう私どうしようかと…」
「んー、それは困るね。断言されてしまうと、いっそ白雪さん自身の問題ではなくて、その眠森くんの問題になってるね」
顎に手を添えて、何かを考え込む姫魚さん。
そして、少ししてから、口元をきゅっと持ち上げた。
…なんか、怖くないですか?笑い方…。
「眠森くんは、白雪さんを落とすためにどんな姿にでも変わるってことかな」
「ま、まぁ…そういうことになるんだと思います」
私好みの男性となると、眠森くんからはかけ離れている。
だからこそ、私が「好きだ」と言ったものになろうとしなければ…いけない(?)ことになる。
「様子を見てみようか」
「様子?」
「うん。眠森くんが、本当に白雪さんを落とすために、白雪さんの好みの男性になってくるかどうかを見てみよう。それで、ちゃんと変わっていくようなら、彼の意思は本当だろうし、変わらないならそれまでだからね。…どうかな?」
姫魚さんの提案が、意外にもするりと頭に入る。
そして、「なるほど」と納得する自分と、「そんな試すようなことしていいの?」と諭す自分。
「試している訳では無いんだよ」
「え?!わ、私口に出してました?!」
「顔に書いてある」
わたしはよく、思っている事が顔に出ると言われる。
…けど、まさか姫魚さんにまで言われるなんて…ちょっとショックだ。
「まぁ、確かに、試すに近いことはあるかな。でも、もし眠森くんがその場のノリで白雪さんに告白したのなら、それは早いうちに断るべきだ。…それに」
さっきまで、にこやかに話していた姫魚さんが、突然真剣な表情になる。
突然の切り替えに、少し身構える。
「そんないい加減な男を、君に近づけたくない」
あまりにも真剣な一言なのに、瞬時に意味を理解できず、ぽかんとしてしまう。
「…なーんて、何言ってるんだろうね、僕は」
あははと、照れくさそうに笑う姫魚さん。
そのはにかみに、ハッと我に返ると、じわじわと頬が熱くなるのを感じた。
「でも、本当のことだから。僕は、一大人として、白雪さんが幸せであること望んでるからね」
また、いつもの柔らかい笑顔に戻る。
私も釣られて笑う。
__だけど何故か、心臓の奥が、チリチリと火花を出しているように、痛くて辛い。
つゆきちゃんのお話。
つゆきちゃんの家族構成は、お母さん、お父さん、お兄ちゃん1人と弟1人、の5人家族。
上にも下にも男なのに、全く男性慣れしていないのは、お兄ちゃんは12歳上の社会人で、物心がついた時点で大学生だったためあまりしゃべらなかったからと、弟は世に言う乙男というやつで、顔がつゆきに似てきゃるるんとしているのもあり、男性とかその手のものに見えないからなんです。ちなみに弟は1つ違い。