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白雪姫が目を覚ますまで。  作者: 柊玲雄
51/53

50*恋なんですよね、きっと

11時の少し前に部屋を出ると、合わせてきたかのように先生は鍵をかけていた。


「おはようございます」

「おー、おはようさん。…んー」

「どうかしましたか?」


挨拶のあと、私をじーっと見て何かを考える先生。

何をしてるのかよく分からず、首をかしげてみると、先生はぽんっと手を打った。


「色気があらへんのか!」

「…殴っていいですか」


…人のことガン見して色気がどうのって失礼すぎない?!


「ああ、すまんすまん。ちゃうねん、最近の高校生てケバい子多いやん、やから白雪は年相応やなと思って安心したんやわ」


イマイチ褒められてるのかディスられているのかわからなかったけど、何となく「年相応」という言葉が気に食わない。


「年相応って褒めてませんよね」

「褒めてるて。おめかししとるやつにはない、素朴さが残っとるんがええんや」


先生は満足そうに頷いて、「ほな行こか」と階段を降り始める。

私もあとに続きながら、先生に、朝感じたことを話すことにした。


「先生、私、先生の言葉をやっと理解できたんです」

「俺なんか言うたっけ?」

「自覚せなあかん、って言ったじゃないですか」

「あ~、それか」

「…朝、服を選んでる時に、もし今から姫魚さんとデートだったら、あと2時間は選んでただろうなぁって思っちゃったんです。それで、もっとドキドキしながら、待ち合わせの何分も前に家を出ちゃったりして…、恋なんですよね、きっと」


こんな気持ちを、私は1度も考えたことがないし、まだ感じたこともない。


…世の中の女の子は、みんなこんな幸せな気持ちを持ってるんだよね。

いいな、素敵なことだと思う。


「…こんなに思うてくれてる子突き放すとはなぁ」

「え?」

「姫魚さんの話。相当な覚悟持っとったか、ホンマになんにも気づいとらんかったんか…まぁ、後者やったらただのアホやと思うけどな」

「アホって…」

「そうやろ?男ならそれくらい気づいとるゆーねん」


…それは伊野先生がそうなだけでは?…なんて口が裂けても言えない。本当に怒りそう。




最寄り駅の改札を抜けると、丁度、電車と鉢合わせ、すぐに乗り込んだ。

意外と満員電車で、窮屈だ。

これで8駅間過ごさないといけないらしい。


「混んどるなぁ」

「ほんとですね」

「…白雪は、鈍感やな」

「え?」

「この状況、普通突っ込むやろ」

「突っ込む?」

「…まぁ、ええわ」


何故か先生にため息をつかれ、疲れたのか私の頭の上を通って壁に手をついた。

先生が至近距離にいるため動きにくいことこの上ない。


「眠森も姫魚さんも大変やろなぁ」

「そうですね?」


先生のつぶやきにはてなを飛ばしながら、15分ほどで乗り換える駅につき、それからまた4回ほど乗り継ぎ、約2時間半かけて実家の最寄りへ到着した。


電車を降りれば、久しぶりな匂いに笑みがこぼれる。


「久々だなぁ…」

「あんまり帰ってこんのか?」

「はい、最近帰ったのなんてお正月ですから」

「寂しないの?」

「まぁ、寂しくないって言うと嘘になりますけど。…でもずっと両親に甘えてきて…それで」


私の両親は過保護だ。

中1の時がピークで、何をするにも家族の誰かと一緒で一人になるのは教室くらいなものだった。


…もちろん登下校に両親が付いてきていたのが、教室で1人だった理由なんだけど。


中2の中頃になると、少しだけ過保護も和らぎ、一人で出歩いても6時に帰宅していれば何も言われなくなった。けれど、友達もいなければひとり遊びも下手な私自身の行動範囲はいつまでも狭く、門限をすぎることがそもそも不可能だった。


そしてそんな時に、私は気づいてしまう。



「…私、なんにもできない子だったんです」

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