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白雪姫が目を覚ますまで。  作者: 柊玲雄
44/53

43*彼女と彼の過去の話②

side.姫魚翠 2013.2.4


彼女が制服を見せに来た次の日。


ひょんなことで高校から就職することになった僕は、新年度になるまで暇で仕方ない。

基本、自室でカメラの整備をしたり会社の勉強をしたりしているだけだ。


今日も変わらず、自室で会社の勉強をしていた。

親は2人とも仕事に出ているから、すでに17時半を回ってはいるが、家の中は僕ひとりだ。


…そういえば、つゆきは友達の家でお誕生日会してるんだっけ。

ああ、でも、さすがにそろそろ帰ってくるかな。


そんなことを思いつつ、会社のホームページにまた目を向けた時だった。

インターホンがけたたましく僕の家に鳴り響く。


「は、はーい?!」


連続してなり続けるため急いで玄関を開けると、そこにはつゆきの母親が、顔面蒼白で立っていた。


「ど、どうしたんですか?」

「翠ちゃんつゆき来てない?!」

「え…いや、今日は来てませんよ。友達の誕生日会のはずですから」

「違うのよ!誕生日会は15時頃にもう終わってて向こうのお母さんが今から帰らせるって連絡をくださったのに…つゆき、帰ってこないのよ…」



とてつもなく、嫌な予感がした。

心臓が、ドクンっと大きく鳴った。



「僕探してきます!その友達の家はどの辺ですか?!」

「2丁目のあたりよ!私も久永と探すわ!」

「お願いします!」


玄関先のコートを適当に引っ掴んで、2丁目の方向へとただがむしゃらに走り出した。

後ろから「翠ちゃん気をつけなさいよ!」とつゆきの母親の声が飛んできたが、手だけあげて答えておいた。


少し前に降り出した雪も、今の僕には何も感じない。寒くない、冷たくない。


「つゆき!!つゆき!!」



2丁目周辺にたどり着き、切れる息も無視して身体中の酸素を使ってひたすら叫びまくった。


…つゆき、どこにいるんだよ?

まだつゆきは子どもなんだから、こんな遅くまで外にいちゃいけないだろ?


2丁目のつゆきの友人の両親も、僕の声に気づいて家から出てきていた。


「つゆきちゃんまだ帰っていないの?」

「ええ…つゆきはここらから自分のうちへ帰れるんですか?」

「そうね…何度も来てるから、帰れると思うわよ。行きも一人で来たもの」

「そうですか…ありがとうございます!」



…だとしたら、2丁目から出たところで事故にあっているのかもしれない。



…いや、まてよ…?

2丁目を出てもう少しいけば…廃倉庫が連なってる路地裏がある。


「まてよ…そんなとこ通らな…」


…違う、違う。

そうじゃない。


通らないとかそんなことじゃないんだ!!



僕は引き返して、路地裏があるところまでまた走った。


嫌な予感しかしなかった。

利口な彼女が、帰ってこないわけがないのだ。

仮に事故だとしたら、もう通報が入っている。

迷子になるような道はない。



細い道を通り抜けて路地裏にでれば、そこは一本の街頭のみが静かに佇んでいた。


そして…嫌な予感は、最も最悪な状態で的中した。


「つゆき!!!!」


街頭から少し外れたところに横たわるつゆき。

走り寄って抱きかかえても、彼女は全く目を覚まさない。

服はビリビリに破られ、何度も殴られ叩かれた跡が顔や腕にびっしりと残っている。


…どうしてつゆきがこんな目に?

誰なんだよ…僕の大切な人を傷つけたのは誰なんだよ!!!


「クソが!!!!!」


周りを見回しても誰もいない。

もう逃げてしまったらしく、本当にあたりは静まり返っている。



「…ちょっとまてよ…??」



不意に手に生暖かさを覚え、街頭に照らしてみせる。

照らされた手に、べったりと、真っ赤な血が付いていた。


「つゆき…つゆき!!なぁ…つゆき…!!」


コートを漁ってハンカチを取り出し、急いで止血をした。

傷は深く、もちろんハンカチなんかで出血が収まるはずはない。

これでは埒が明かない、そう思いコートを脱ぎつゆきに被せ、出来るだけ大きな振動がないように持ち上げた。


…今はつゆきの命が大事だ。

犯人なんかどうでもいいことだ。

彼女さえ生きていれば、それで。


そう思い走り出そうとしたその時だった。



「おいおい兄ちゃん、なにしてんの。それは俺たちの大事な売り物なんだけど」



後ろからの声に、俺は仕方なく立ち止まった。

そして、立ち止まった瞬間、ふつふつと怒りが湧き上がった。


「…売り物?どれみて言ってるんでしょうか」

「お前が抱えてるそれだよ、見たらわかるだろ?」

「わかりませんね。この子はあなた方のものでも無ければ売り物でもない」

「お前のものでもないだろ」

「そもそもモノ扱いしてんじゃねぇよ。もういいか?急いで__」


「病院に行かなきゃならない」…そう言おうとした瞬間、横から誰かが突進してきて、僕はつゆきを抱えたまま勢いよく倒れ込んだ。


「いっ…」

「ガキが調子乗ってんじゃねーよ。早く返せ」

「返さない…この子は渡さない…」

「ちっ…めんどくせぇな!!オラ!!やっちまえよ!!」


後ろの男が叫ぶと、前や後ろから6人くらいの男達が走ってきた。

僕はつゆきを守るために、彼女を抱き上げ走ってくる男達をかわす。


そのまま路地から脱出しようと、細道に向かって走り出したその時だった。


「ガキがいきがってんじゃねぇ!!」


暗くて死角になっていたところから、刃物を持った男が飛び出した。

僕は避けきれず、つゆきを庇うように身をすくめる。


「ううっ!!…」


男の刃物が、僕の左腕を掻き切る。



痛すぎて悶えたくなった。

左腕の力が一気に弱くなるのも感じた。


…だけど、こんなことでつゆきを失ってたまるか…!!



僕は歯を食いしばって、刃物を持った男の急所を狙って蹴りあげた。


「いっってぇえ!!」


男が悶えている間に、僕はひたすら走った。

通りに出て、病院を目指す。

左腕は既に限界で、正直気を抜いたら動かなくなる。

だけど、まだ動いてる。力も入ってる。



だから僕は、大切な命を抱えて走り続けた。

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