39*先生からのメモ
「はぁ…は…。んん、失礼します!伊野先生お願いします!」
体育教官室の扉を勢いよく叩き、伊野先生を呼びつけると、先生はビックリしながらも外へ出てきた。
「なんやどないした?」
「この事件に私が関わっているんですか」
なんの前振りもなく単刀直入に切り出せば、先生は眉をハの時にした。
「その話か…。帰ってから話すて」
「嫌です今がいいです。この事件の被害者が私ですか?それとも姫魚さんですか?なんなら加害者が私?姫魚さん?なんなんですか!ねぇ!」
「わかった!落ち着け白雪!ちゃんと教えたるから。な?」
「…はい」
メモを見た瞬間、嫌な予感がした。
的中している予感もした。
私は、中学時代以前の記憶がかなりぼんやりとしている。
正直なところ、8割くらいは思い出せない。
だからもし、メモにあった事件が私の記憶と繋がっているのなら、それはありえない話ではなかった。
ただ、こんな事件に姫魚さんが関与しているなんて、考えたくない。
私と伊野先生は体育教官室前にあるプレハブに入った。個人面談に使われる場所で、ほとんど人は寄ってこない。
「さてと…どっから説明したらええんやろか」
「あの事件の詳細をお願いします」
「ああ…ちょっと待ってな。……はい、これ。被害者の名前は書いてないんやけど…」
「2013年2月5日…〇△県□▽市で約1ヶ月近く続いていた強姦傷害事件の犯人グループを逮捕…被害者は5名、内1名は意識不明で未だ意識が戻っていない…。犯行はいずれも暗い路地に未成年の女児や女性を連れ込み、犯行場所に放置し逃走…5名のうち、4名は意識があり自力で帰宅し親族等から警察に通報があったが、最後に被害にあった女児…12歳は、脇腹を深く刺され出血多量で意識を失っていた。女児は知人の男性に発見され病院へ運ばれたが、未だ目覚めていない。また、女児を運び込んだ男性も二の腕に怪我をしており、犯人と鉢合わせし女児と同じように刺された模様…」
読み進める度に、心臓がおかしくなっていった。
頭がパンクしそうになった。
今すぐこのプレハブから逃げたくなった。
私の記憶が、この記事に激しく反応しているのが、痛いほどわかった。
「白雪…。…やめよか、この話。こんなとこでする話しちゃ、」
「ねぇ先生。…私、どうして涙が出てくるのか分かりません。でも、この記事を読むだけですごく悲しくて苦しくてたまりません。逃げたくて仕方ないです。だけど…思い出したい。どんな事実からも、逃げたくないんです」
逃げるなんて簡単だ。
この記事を見なかったことにすればいい。
伊野先生は優しいから、この相談自体なかったことにだってしてくれる。
今まで通り、ただの常連客として姫魚さんと繋がり合えていたらそれでいい。
だけど、そんなんじゃ過去の私は目を覚ましてくれない。
「…はぁ…。しゃーないな、ほんまに。…調査は続行や。また探り入れてくる。せやから、とりあえず白雪は授業に集中せえ。ええな?」
「…わかりました。宜しくお願いします」
「ん。ほら、あと5分や。走れ走れ」
バタバタとプレハブをあとにして、教室へ戻る。
教室のドアを開ければ、アリスと眠森くんが同時にこちらを向いた。
「つゆきどこいってたの?心配したのよ、突然走ってっちゃうから」
「具合が悪かったのか?」
「ううん、田中先生に呼ばれてるの忘れてて。職員室行ったら色んな先生に捕まるから困っちゃうね」
「つゆきがいるのに声をかけないのも正気の沙汰じゃないわよ」
「馬鹿なの?お前」
「あはは…」
…このことは2人には言わないでおこう。
言ってしまったら、多分ぐちゃぐちゃになる。
大切な今が、崩れてなくなってしまう。
皆様お久しぶりです、柊です。
更新サボってました。積年の至。
さてさて、つゆきさんの過去にとうとう辿り着きそうな予感っすね!
ドキがムネムネ〜〜〜
次回もお楽しみに!




