31*ごめんなさい
姫魚さんの言葉で、自分の中の何かが目を覚ました気がした。
私自身が思っていることを、アリスや眠森君が思ったとしたら。
こんな簡単な仮定を、どうして私はたてられなかったのだろう。
…ちゃんと、謝らなくちゃ。
2人の優しさを突き飛ばしてしまって、ごめんなさいって。
待ち合わせ場所につくと、さすがにまだ2人はおらず、私はフェンスにもたれて空を見上げた。
真っ青で雲一つない空は、私には少し眩しすぎて、手のひらを目の前にかざしてみた。
すると、指の間から少しだけもれる光が綺麗で、私は思わずカメラを構えたくなる。
…なんだか、知らないうちに姫魚さんに似てきた気がするなぁ、私。
私もカメラを買ってみようかな。
そんなことを思っていると、近くで足音が聞こえて、私は顔を前に向ける。
目の前には、アリスと眠森くんが、気まずそうに立っていた。
「つゆき…」
目を伏せたまま、アリスは私の名前を呼んだ。
その声は、ひどく不安げで、申し訳ない気持ちがますます私の中に溢れた。
「…アリス、あのね」
私は、アリスの両手をとって、自分の両手で包み込んだ。
アリスは驚いたているのか動揺しているのか、目を瞬いている。
「…傷つけてしまって、ごめんなさい」
かなり唐突すぎたかもしれない。
けれど、今伝えないと、私のダメな考えがまた戻ってきてしまう。
それに…これ以上、アリスの不安そうな声音を聞いていたくない。
アリスは数秒、私をじっ…と見つめた。
私は心臓を心の中で抑えながら、アリスの言葉を待つ。
「…傷ついてない、って言ったら嘘になっちゃうけど、つゆきが謝るようなことじゃないわ。私達だってやりすぎた。ごめんね、つゆき」
「ううん…私をかばうために、ああやって言ってくれてたんだよね。アリスや眠森くんは何も悪くないの。アリスこそ謝らないで…」
私とアリスは、揃って涙を流した。
私の両手の中にあるアリスの両手が少しだけ温かくなった気がして、私はアリスに微笑んだ。
「つゆき…!んもうっ!どこまで行っても可愛いんだからぁ!!」
「…ふふっ!」
アリスは、泣きながら嬉しそうに言う。
表情と言ってることに差がありすぎて、私は思わず吹き出した。
「なんで笑うのよ〜!」
「だって、アリス顔と言ってること全然あってないんだもん!そういうことは、もっと笑って言ってよ」
「だって〜…。もうつゆきと話せなくなるんじゃないかなとか、色々思ってたから…」
「…本当にごめんね。もう大丈夫だよ」
アリスの不安が言葉になって、ようやく私は自分が思っていたことの愚かさに気づく。
…私が傷つけば、アリスも傷つく。
だから、誰も傷ついちゃいけないんだ。
「ちょっとー、二人とも俺のこと忘れてない?」
「うっさいわね、あんたは御用じゃないのよ」
「はっ、てめぇその口縫うぞまじで」
「やれるならやってみなさいよ、触ったら美女暴漢の罪で即裁判よ」
「そんな罪ねぇよ!!あほか!!」
こめかみを抑えて悶える眠森くん。
私は彼に近づいて、頭をポンポンと2回叩いた。
眠森くんは、険しい表情のまま頭をあげる。
「眠森くんも…心配かけて、ごめんなさい。眠森くんに言われたこと、全部を受け入れられたわけじゃないけど、理解はできた気がするの。本当にありがとう」
「あ…いや、その…。うん…」
「情けない返事ね、それでも男?」
「てめぇは黙ってろ金髪」
「あんたが黙りなさいチャランポラン」
いがみ合う2人を、なんだか久しぶりに見た気がして、私はくすぐったい気持ちになっていた。
…こんな気持ちになれたのも、全部、姫魚さんが背中を押してくれたおかげだ。
よくよく考えてみれば、最近、姫魚さんに助けられてばかりいる気がする。
「ところで、つゆきは今日もバイト?」
「あっ、そうだバイト!!えっ、もうこんな時間?!嘘ごめんっ、行ってくるね!また明日!!」
「いってらっしゃい、気をつけなさいよ」
「いってらっしゃーい」
2人の声を背中に聞きながら、私はバイト先のカフェへと走り出す。
…今日は、とびっきり美味しいトマトジュースを作らなきゃ。
あけましておめでとうございます!!
本年もふざけ倒したいと思ってます、どうも皆さんこんばんは柊です!
いや…嘘ですよ?(嘘)
去年に引き続きまたまた不定期更新になりますが、生暖かい目で見ていただけたらありがたく存じ上げます。
本年も、白雪姫が目を覚ますまで。を、柊玲雄を、どうぞ宜しくお願い致します。
次回もお楽しみに!




