27*写真…見せてくれませんか?
1日をなんとなく過ごした私は、委員会の課題が残っていると嘘をつき、2人が帰ってから帰路についた。
帰り道の、もうそろそろ葉桜になろうとしている桜の並木道をゆっくりと歩く。
そうして私は、ふと、姫魚さんの写真を思い出していた。
…写真の魔法使いは、私の心にも魔法をかけてはくれないだろうか?
アリスと眠森くんからの「愛情」を、素直に受け取れるような、そんな素敵な魔法を。
そんなことを思いながら、ふらふらと歩き、さあ家に着いたと思って顔をあげた瞬間。
「…え」
私は目を瞬いて、ポツリとつぶやく。
「姫魚さんの家…?」
…ふらふら歩いていたからか、何故か知らない間に自分の家ではなく、姫魚さんの家にたどり着いていた。
「なにしてるの私…」
…とはいいながらも。
なんとなく、分かっている。
私はどこかに逃げたいだけなのだ。
友人の、親友の「愛情」から逃げてしまいたい。…もしかしたら、姫魚さんなら助けてくれるんじゃないか、なんて思って。
…依存的な考え方だよね、本当に。
情けなくなって、くるりと玄関に背を向けた直後だった。
「白雪さん」
__すべてを包み込みそうな、優しい声音が響いた。
私は、泣きそうになりながら振り返る。
「姫魚さん…」
やっぱりそこには、優しい表情をした姫魚さんが立っていて。
私は、自分でも知らないうちに、ほろりと涙がこぼれた。
「おかえり、白雪さん」
差し伸べられた手を、私は数秒みつめてから、そっとその上に自分の手を置いてみた。
反応を確かめようと姫魚さんを見てみれば、その表情は少し嬉しそうに見えた。
「今日、バイトはある?」
「はい…1時間後には、出勤です」
「了解、じゃあ、それまでは僕と話をしようか」
「…すみません」
「気にしないで、僕は僕なりにやりたいようにやっているからね」
「…本当に?」
「もちろん、…僕は、守るための嘘しかつかないよ」
そう言って、姫魚さんは目を伏せる。
その表情がなんだか悲しそうで、私は思わず、
「写真…見せてくれませんか?」
「え?写真?」
「はい。…学校前の桜の並木道を歩いてたら、なんだか無性に姫魚さんの写真を見てみたくなって」
姫魚さんが喜んでくれそうなことと言えば、私にはこれくらいしか思いつかなかった。
ただ実際、姫魚さんの写真を見たくなったのは本当だ。
「…よし、じゃあ、バイトまでは色んな写真見せてあげようかな」
「はいっ」
また柔らかな笑みを浮かべてくれたことに安堵しながら、私は再び、姫魚さんの家へお邪魔することになった。




