22*姫魚さんの朝は
私はふと、目を覚ました。
ぼーっと天井を眺めた後、体を起こして窓の外を見やる。
まだ外は薄暗い。手元の携帯を手に取り、電源ボタンを押すと、デジタル時計が表示される。
時刻はまだ4時26分だった。
徐々に目が覚めてくると、自分とは違う息遣いがはっきり聞こえ始める。
私は落ち着いた寝息の方__ベッドから見下ろしたところ__を見る。
そこには、当たり前だけれど、すやすやと眠る姫魚さんがいて。
改めて、私は一晩姫魚さんと一緒にいたんだなぁと思い、頬が火照りはじめる。
気を紛らわそうと違うことに気を回すと、ふと、今日が平日であることを思い出す。
…ここからは、どうやって学校に行くのかな?
「…学校、学校」
姫魚さんの仕事場は、little ordinaryとそう離れていないと聞いたことがある。
けれど家の場所までは聞いていないため、スマホのGPSを使って現在地を確認した。
地図上の紙飛行機型のアイコンは、『香山崎マンション』とかかれた敷地に止まっていた。
香山崎と言えば、アリスの家の近くだ。ということは、学校の近隣だろう。
「アリスに連絡いれたらいいかな」
そうすれば、迷わずに行けるはずだ。
そう思いながら、とりあえず某SNSのお友達欄を開き、『アリス』と書かれた欄をタップする。
メッセージを打つ枠に、
[今日一緒に学校に行かない?アリスの家の近くに泊まっててさ。どうかな?]
「送信…と」
それからネットで、お天気や今日のニュースを眺めながら、空が明るくなるのを待つことにした。
***
5時半になると、突然、ヂリリリリッとアラーム音が部屋中になり響き、座ったままボーッとしていた私を叩き起こした。
アラーム音は姫魚さんのケータイかららしい。
「んー…あー…」
不機嫌そうな唸る声とともにアラームが止められ、布団が擦れる。
それから、にょきっと、ベッドのしたから姫魚さんが現れた。
「おっ、…おはようございます」
びっくりして、のけぞりながら挨拶をする。
姫魚さんはゆっくりと私の方を向いて、顔にかかる前髪をかきあげた。
「ああ…おはよう」
いつもより低い声に、なぜか背筋がぞわりとした。
「まだ5時半…そうか、アラーム昨日のまま…。…ごめん、もうちょっと寝る…」
「お、やすみなさい?」
疑問形で返すと、姫魚さんはバタリと布団に倒れて、また寝息を立て始める。
よくわからないまま目をぱちぱちとさせてから、とりあえず、姫魚さんは朝が弱いのだと理解した。
「んー…あ、そーだ!」
私はあることを思いついて、ベッドから降り制服を取りに行く。
顔を洗ってから、脱衣所で制服に着替えて、髪を片方にまとめて留める。
「よしっ」
…ちょっとでも、喜んでもらいたいなぁ。




