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白雪姫が目を覚ますまで。  作者: 柊玲雄
19/53

19*side.眠森針葉

side. 眠森 針葉


組表を見てみると、俺は2‐Aだった。

この学校は、3学科で構成されているため、一学科につき2クラス。1クラスにつき40人。

普通科に転入した俺は、普通科にあてがわれているA組となった。


…そういえば、あの子は何組なんだろう?


自然と湧いてきた疑問。

それが湧いてくることに全く疑問を抱かなかった時点で、俺はあの子に惚れていたのかもしれない。


「眠森くんは何組〜?」

「A組」

「わぁ!一緒だぁ!!一緒にいこ〜!」

「いいよ、教室わからないから」


近くにいた女の子と一緒に、A組の教室へ向かう。

A組は、1棟の3階の一番奥にあるらしく、ひたすら階段を上っていく。

教室にたどり着き、扉を開けると、女の子たちが一斉に俺の方を向いて、ひそひそと歓声をあげ始めた。


…けれど、そんな歓声は、俺の耳に入っていなかった。


俺が見ていたのは、ただひとりだけ。


セミロングの純粋な黒髪、綺麗な黒の瞳、それらが映えるような色白の肌。


カバンを拾ってくれたあの子が、後ろの方の席についていた。


…同じクラスなんだ。


はやる気持ちを抑えながら、自分の席を確認する。


席は廊下側から二列目の一番後ろで、あの子とは一列分離れているようだった。


だから俺は、ただあの子に声をかけるためだけに、あの子のところへ向かう。


机の隣まで来て、俺は、和やかに笑いかけながら声をかける。


「さっきの子だよな」

「へ?…あ、どうもです」


不思議そうな表情をして、コテンッと首を傾げる。


「しらゆき、つゆき…綺麗な名前だな」


一番に言いたいことだった。

澄んだ泉のように綺麗な名前。


もちろん、名前に負けず劣らず綺麗な子だけど。


「ちょっとあんた、なに気安くつゆきの名前呼んでるわけ?」


白雪さんの後ろに座っていた金髪の女の子がドスの利いた声をあげる。


「ちょ、アリス!大丈夫だよ、名前確認しただけだって」


白雪さんは、宥めるように金髪の女の子を押し止める。

そんな光景を、俺はただなんとなく笑ってみていた。

表情筋が釣りそうになりながら。


「眠森くん」

「ん?」


突如呼ばれ、思わず色のない声を出してしまった。

しかし、白雪さんはそんなこと気にもせず、ごく普通の表情で言い放った。


「笑うの、大変でしょ」


…一瞬、意味が全く理解できなかった。

だから、俺は無意識に、


「…は?」


無感情な声で言っていた。


別に、白雪さんの発言にイラついた訳では無い。

ただ純粋に、一瞬理解できなかった。

けれど、ちゃんと心当たりもあった。


…俺の表情筋は、常につらないように耐え忍んでいるから。


「無理に笑わなくていいよ、普通にしててもかっこいいと思う」


なに、それ。


これが俺の感想だった。


無理に笑わなくていい?

バカ言えよ、笑わなくちゃ、みんなの王子様でいられない。


…だけど。


普通にしててもかっこいいなんて言われたら、俺、信じちゃうよ。


そう思いながら、白雪さんに目をやった。

そうしたら、白雪さんは、ふわっと笑っていた。


笑ってしまうほど、穏やかに。


「…ふっ、ははっ!」

「??」


つい、吹いてしまい、白雪さんは不思議そうに目をぱちくりしていた。


けれど、すぐに笑顔になって、


「うん、その方が何倍もかっこいいよ」


そう言った。


…あー、なんか、拍子抜けだ。


王子様でいることが宿命だと思っていた。みんなに好かれることが幸せでしかなかった。


けれど、違っていた。


そうではなくて、ありのままの自分を受け入れてくれる人がいるだけで、きっと人は幸せであれるのだ。


白雪さんは、俺にそう伝えてくれている。


「ありがとう、白雪さん」

「いえいえ。出すぎた真似を…」


はにかむ白雪さんに、ふと思う。


…この人が俺を好きになってくれたら、幸せだなぁ。


きっと、俺をただ普通の俺として受け入れてくれるだろう。


そう思うと、俺は、正確には俺の本能は、「白雪つゆき」という一人の女性を愛したくなっていた。


「なぁ、白雪さん」


白雪さんは、俺を見上げる。

まだ、やわらかい笑顔を浮かべたままだった。


…こんな事言ったら、きっと白雪さんは困ってしまうだろうけど。


「俺の彼女になってください」


__こんなにも、誰かを愛したいと思ったのも、誰かに好きになってもらいたいと思ったのも、はじめてで。

ただただ素直に、思ったことを口走った俺は、史上最強にアホだと思う。

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