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白雪姫が目を覚ますまで。  作者: 柊玲雄
16/53

16*姫魚さんのお誘い


「白雪さん」

「あ、はい?」


夜ご飯も食べ終わり、そろそろ帰ろうかと携帯の時計を見た直後、キッチンから戻ってきた姫魚さんが私を呼んだ。


「そのー…。よかったら、今日はもう遅いから、泊まっていかない?」

「…へ?!」


思いもよらぬ提案に、目をぱちくりさせる。


そして、私の心の中が大騒ぎを始めた。


泊まる?姫魚さんの家に??

え?!それって大丈夫なの?!

化粧とかしてないし問題ないけど、制服のカッターシャツとか変えなきゃいけないし…あ、朝寝癖の状態を姫魚さんに見せる?!死ぬ!!ダメ死ぬ!!


「い、嫌ならいいんだ!…ただ、このまま白雪さんを1人にしてしまったら、白雪さんは1人で抱え込んで、壊れてしまいそうだから…」


そう言って、姫魚さんはひどく悲しそうな表情をした。


__姫魚さんは、私のことになるとよく悲しそうな表情をする。


「あ、その!も、もちろん寝るところは別にするし、制服のシャツも今日中に洗濯して明日には着られるようにしておくよ!あ…いや、嫌ならいいんだ、嫌なら…」


悲しい顔をしたかと思えば、突然焦り顔になる姫魚さん。


…なんだか、私にいて欲しい…みたいに聞こえるのは、思い上がりすぎかな。


「…姫魚さん、寂しいんですか?」

「え?!どうしてそうなったの!」

「あ、いや、なんとなく…えへへ」


…やっぱり思い上がりだったか。


気になって思わず言ってしまったが、かなり恥ずかしいことを言ってしまった気がする。


「まぁ…でも、寂しいのは嘘じゃないかな。男の一人暮らしは常に寂しいからね。だから、それもふまえて、今晩だけ僕と一緒にいてくれたら嬉しいかな〜…なんてね」


はにかみながら言う姫魚さん。


…なんだか、ドキドキするなぁ。

どうしてだろう?


姫魚さんと一晩一緒にいると考えると、無性にドキドキする。


「…泊まって行っても、いいですか?」


それに…と、私は思う。


もしかしたら、姫魚さんの左腕に傷があるか、確認できるかもしれない。


いつも長袖を着ている姫魚さんの左腕を確認するのは、なかなかに困難なことだった。


…よく考えると、いつも長袖なのはそういう理由があるからなのかな。


「もちろん!それじゃ、先にお風呂入っておいで。あ、パジャマは…僕のジャージでも大丈夫?」


質問され、いつもくせで「はい」と言いそうになり、ふと思いとどまる。


…姫魚さんのジャージを着る?

ということは、私は今から明日の朝までずっと姫魚さんの匂いを感じてなくちゃいけない?!

それは私がどうにかなりそうだ!!


「いや…だよね。何着ようか…」


私が考え込んでいるのを拒否ととったらしく、姫魚さんはしょんぼりしながら代案を考え始めていた。


「あ!いや!嫌とかじゃないんです!!むしろ全然おっ…。…泊まらせていただく身ですからなんでも大丈夫なんですよ!」


…私、何言おうとしたんだろう…。


むしろ全然おっけーです、と言おうとした自分を蹴り入れてやりたい。


「なら、いいんだけど…大丈夫?無理してない?」

「はい!あ、自分のものはちゃんと自分で洗濯しますね。さすがにそこまでしてもらっちゃうと申し訳なさすぎるので…」


そう申し出ると、姫魚さんはハッとした表情をしてから、ぶんぶんと首を上下に振った。


「そうだよね、うん。あ、洗濯機は脱衣所にあるから勝手に使ってくれていいよ」

「ありがとうございます。それじゃあ、お風呂、お先に失礼します」


最低限いつも持ち歩くようにしている化粧水類の入ったポーチを持って、脱衣所に移動する。

脱衣所の扉を閉めた瞬間、謎の自己嫌悪が私を襲った。


…どうして泊まるとか言っちゃったんだろう?!いや、そりゃ…左腕はすごく気になるし、なんか、姫魚さんとお泊まりって考えちゃうとドキドキして嬉しくなるっていうか…。


…ん?嬉しくなる?


「あーもうっ。お風呂はいろっ」


考えたって、言ってしまったものは仕方がない。

それに、別に嫌じゃない。嫌じゃないなら、いっそ楽しんでしまえ。…なんて。


今日の私は、実に楽観的だ。

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