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白雪姫が目を覚ますまで。  作者: 柊玲雄
14/53

14*嫌な予感

下校時間になり、部活のない私は1人で校門を出た。

眠森くんに、一緒に帰らないかと誘われたが、一人になりたくて断ってしまった。


…とにかく、今の状況を整理したかった。

教科書の落書きにくわえ、体操服がびりびりに破られていた。下駄箱には、大量のゴミが溢れんばかりに入れられていた。


よく考えなくても、何をされてるかはわかる。

けれど、その理由が思いつかない。


…私は、なにをしてしまった?


「ねぇ、ちょっと」

「…はい?」


近道しようと、路地に足を踏み入れた。

その直後、後ろから声をかけられ、振り返る。

そこには、いかにも上位カーストらしい見た目の女子が6人ほど。


…既に嫌な予感はしていたけれど、こんなに早く的中するとは誰も思わないだろう。


「あんた、針葉くんといちゃいちゃしすぎじゃない?彼女かなんかなの?」

「…いえ、ただの友達です」

「なのにあんな態度なの?!うっわ、やっぱヤリマンだったんだ!!ちょっと顔がいいからって、ほんっと最低ね!!?」

「まぁ〜?これまでも色んな男とヤってきたんでしょ?癖なの?そーいうの」

「やっだ〜!きもーい!!」


女子6人は、次から次へと、ありもしないことを口にする。


私はその言葉を聞きながら、ふと、姫魚さんを思い出していた。


…会いたいなぁ、姫魚さん。姫魚さんの笑顔をみたいなぁ。


「ちょっと?!話聞いてんの?!」

「聞いてます」

「なにが聞いてます〜よ!!ほんっと気に入らない!!死ね!!!」


肌が黒めの女子が、どかっと、蹴りを1発。私の脇腹に命中した。

その後に、顔に平手を1発。

何度も何度も殴られ、蹴られ、耐えられずしゃがみこんだ私の頭を、誰かが踏み付ける。


…痛い。すごく痛い。

なのに、私は苦痛を感じてない。


もっとひどい苦痛を、どこかで感じたように。


「君たちなにしてるの?」


不意に、また後ろから声がした。

振り返る元気はなくて、私はその場に倒れ込む。


「別に?あんたに関係ないでしょ。どっかいけよ」


リーダー格っぽい、おそらく肌の黒い女子が言う。

あまり怖気付いてはいないらしい。


「関係あるよ。僕、カメラマンなんだ」

「は?だから?」

「僕はただのカメラマンじゃない。君たちは知っているかな?警察と連携しているカメラマン、っていうものを」


警察、という言葉に反応するかのように、ずりっと、女子達が足を半歩下げる。


そして私はというと、意識が朦朧とする中、私の後ろの話す声が、姫魚さんであることに気づいていた。

けれど、いつもの柔らかい声ではなくて、トゲのある、触ったら怪我をしそうな声音だった。


「仕事内容は大体わかるよね。僕が撮った写真は即警察のそういう部署に届く。そういうことだから、じっとしててね、写真撮るから」


カメラを構えたのだろう。女子たちは慌てて言い返し始めた。


「け、けいさつ?こんなことでなんになるのよ?」

「そうよ!写真だけじゃ証拠にもなんないし!!」

「そうかもしれないね。でも、どうだろう?今すぐ、警察がこの場に来たら、言い逃れはできないね」


そうして、カメラのシャッター音を響かせる。


「うそ、こいつまじじゃん!」

「ちょ、逃げよう!!?」


女子6人は、つまずきながら来た道を走って逃げていく。

その後ろ姿を見ながら、私はまだ朦朧とした意識のままだった。


「…つゆき」


やっぱり、聞き覚えのある声だった。

私の名前を呼ぶ声は、姫魚さんだ。


「ごめんね。…また僕は、君を助けてあげられなかった。…つゆき、ごめんね」


姫魚さんは、倒れた私を抱き起こして、優しく抱きしめた。

はっきりとしない意識では、何も考えられず、ただそのぬくもりを感じるままだった。


「さあ、家に帰ろう」


私を抱き上げて、姫魚さんは歩き出す。


その浮遊感が気持ちよくて、私はそのまま意識を手放した。

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