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君のための歌

作者: 気象情報

君の落とし物 ガラスのようなあの声

ある時僕はその声を道端で見つけて

ずっと握りしめて今まで生きてきた


握りしめた声は光さえ通すほど澄んでいて

毎日光の射すほうに走り回った

まだ見ぬその持ち主を想いながら


そうしたら 随分長くかかったけど

君を見つけたんだ 汚い路地裏で

声を落として言葉を失くした君は

あの声に負けない綺麗さで笑ったんだ


そこまではよかった

綺麗な声の結晶を両手でぎゅっと握りしめ

必死で口を動かす君だけど

ついに言葉は零れてこなかった

声の出しかたを忘れてしまっていた

かわりに零れてきたのは涙で

鳴咽さえも空気を震わさずに


泣きながら僕に抱きつく君

涙が右の肩に零れてくる

大丈夫だよ 小さくつぶやいて

僕も君の肩に手を回した


僕は君のためにここまで来たんだよ

君の声のためじゃない

目を閉じれば 君の声 聞こえるよ

目を見れば 君のキモチ 伝わるよ


ねえ、好きだよ。

不意に飛び出したその一言に君は笑って

もう一度ぎゅっと僕を抱きしめた


今も隣に君はいて

手と目と心は繋がっていて

一緒にいるだけであの声が聞こえてくる

行き場を失った澄んだ声の結晶は

いつまでも二人の繋がった手の中に








文字数が足りないのでここにあとがきなぞを。

本来僕はこういうの書く人じゃないんですが。


2006年7月31日から11ヶ月ほど、毎日1編詩作にふけっていた時期がありまして。

これは9月12日に書いた、僕の中で最高傑作だといえるものです。

最高傑作でこれかと言われてしまえばそれまでなんですが、これは自分でも思い入れが深いというか。

ちなみに原題は「君のための歌・12」です。90くらいまでありましたね。


所属している放送委員会の後輩にすごく、すごく綺麗な声してる女の子がいまして。

アニメ声というわけでもなく、響く声というわけでもなく、ただただ耳に心地よい声です。

あ、この声いいなあ、と初めて思ったのがこれを書いた日だったりしました。

そして彼女は少し引っ込み思案な面もあって、そういう面もこの作品に影響を与えたような気が。


今では放送委員会も引退し、彼女と話し、声を聞くこともほとんどなくなってしまいました。

自分の気持ちというのはえてしてうまくつかめないものですが、もう1歩踏み出せていたらどうだったのかなあ、なんて思ったりします。



雑踏の中で君の声を聞く

それさえも今は偶然になってしまったけど

偶然でもいい 君の声が聞こえたその日は

それだけでまたしばらく

生きていられる気がするんだ

全体ひっくるめてひとつの作品、ってことにしておきますかね。

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