銀河(虹色幻想23)
ずっと一緒にいた銀河が出産で子犬と共に亡くなった。
銀河は綺麗な銀色の毛並みをした雑種犬だった。
小学校の頃に捨てられていた銀河を拾い、育ててきた。
そんな銀河は家族の一員だったし、真咲にとっては妹であり、同士であった。
そんな銀河を失って、真咲は悲しんだ。
残されたのは黄金色の毛並みの子犬が一匹。
母犬に似ず、柔らかな毛色のオスの子犬だった。
真咲はその子犬を手放すことにした。
犬は好きだが、この子犬を見るのが少し辛かったのだ。
近所で子犬を欲しがっている人がいるという話を聞いて、真咲は迷うことなく決めた。
そうして出逢ったのが恭子だった。
真咲は恭子を知っていた。
同じ学校に通う一つ年上の人。
いつも学校の中庭で楽しそうにおしゃべりしている人。
暖かな木漏れ日がよく似合い、いつも笑っていた。
真咲は恭子の笑顔に惹かれていた。
「真咲くん!」
学校の中庭で恭子が手を振っている。
真咲は嬉しくなった。
少し前まではこうして話をすることなど想像もしていなかったのだ。
「今日一緒に帰ろうよ」
恭子が笑顔で言った。
真咲も笑顔で頷いた。
「はい。今日は掃除当番ではないので、すぐ帰れますよ」
「じゃあ、校門で待ってるね」
恭子が笑うと周りが明るくなる。
真咲は恭子に手を振って中庭を離れた。
「銀河という犬がいたんです」
「日向の親犬?」
「ええ、母犬です。
父犬はどこの犬か知りませんが、銀河は出産に失敗して日向の兄弟達と共に亡くなってしまいました」
恭子が悲しそうな顔をした。
「銀色の毛並みのとても綺麗な犬でした」
真咲が微笑んで言った。
銀河が亡くなって悲しい、でも今は日向に慰められている。
「だから、平気です」
恭子の家の庭では日向が元気に飛び跳ねている。
その姿が真咲を励ました。
「だからそんな顔しないでください」
そう言うと真咲は恭子の手を握った。
少し冷たい恭子の手。
恭子は真咲を見て、静かに頷いた。
「うん。分かった。ごめんね」
にっこりと笑った恭子は、真咲の手を握り返した。
そうして、暖かいね、と言った。
「恭子さん、ずっと傍にいてもいいですか?」
真咲は日向を見ながら言った。
照れて恭子の顔が見れない。
そっと恭子が寄り添ってきた。
「私、もう真咲君がいない生活なんて考えられないよ」
静かに告げる恭子の口調に、真咲は安堵した。
「今度、銀河の写真見せてね」
「はい」
目をつぶると今も綺麗な銀色の毛並みが浮かんでくる。
例え、すぐに別れるかもしれなくても、愛おしいのだ。
離れたくないのだ。
真咲は恭子の母親の言葉を思い出していた。
恭子の命の火は消えかけている。
病状は深刻になってきているという。
真咲は静かに目を開けて恭子を見つめた。
そうして、本当に綺麗な銀色なんです、と言って真咲は笑った。