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勇者召喚

時を遡る。


◇◆◇


丁度、大和たちがグランベヒーモスに馬車ごと川に突き落とされてから、約三時間後。

時刻は、午後三時十五分頃。 アクシス、王城にて。


いつになく、騒がしかった。

だが、決して祭りなどがある訳ではない。もしこれが祭りの騒ぎだったらどれ程良かっただろうか。

残念ながら王城の中にいる者達の顔には喜びや楽しさではなく、焦りや恐怖、苛立ちなどが現れていた。


理由は簡単。アクシスから三時間の位置に新種のモンスターが現れたと報告があったからだ。

そして、そのモンスターはとても凶暴で、凶悪だと報告があった。見た目はベヒーモス。だが、その戦闘能力は並みのベヒーモスを上回ると聞いた。


一度、そのモンスターを見かけた騎士団の数人が戦いを挑んだ所、数秒で全滅したとの事。

姿はベヒーモス。背中の触手は二十本。鎧は、より高硬度に。爪はより、切れる様になった。さらにベヒーモスの炎がさらに協力になった炎、というより爆炎を纏っているとのこと。


ここまででは、良い報告は一つとしてない。だが、ここで一つ、良い報告がくる。

新種はアクシスとは反対方向に移動していった、との事だ。つまり、青龍の方角へ向かったという事だ。


この緊急事態に、国王はある計画の実行を早める事を宣言。今すぐにでもその計画を実行し、新種に対抗するとのこと。

その計画とは、正しく《勇者召喚》である。


《勇者召喚》それは、異世界 (ここからだと、地球にあたる)から数名の人間をこの世界に呼び寄せるという人間族にしか使えない切り札と言ってもよいほどの魔法だ。


詳しく説明すると、

同じ時間軸に存在する幾つかの異世界から、魔法に適性のある人が最も多い異世界を選択。

その異世界から特に適性のある者達をこちらに招く、と言った感じだ。

ただ、不思議な事に魔法の適性のある人と言うのは、大体が高校生から大学生だ。


何故かは、分かっていない。恐らくは憧れがあるからだろう。この時期はそういう事を一度でも考えてしまう。


発動する為には、数十人の魔法士が一心となって魔力を捧げなくてはならない。誰かが失敗すれば、恐らく他の者達全員が多大な被害を受ける。成功と失敗の差がとても大きいため、あまり多用は出来ないでいる。

さらに、これは異世界に対して影響を与えてしまう。


まだ人間族は、魔法を使ってから殆どたっていない。

神からしたら、現在の魔法の量は神の使える魔法の百分の一程度だとも言われている。

その為、《勇者召喚》の魔法もまだ完全ではない。


《勇者召喚》は、魔法の適性のある者を、問答無用でこちらに引き寄せる。了承などはない。稀に死後に引き寄せる事もあるが。

そして引き寄せた後、地球には被害が出るのだ。

なぜなら、引き寄せた人間がその世界から消えるのだから。その為地球ではその人物が急に失踪した、という事になる。


これが、《勇者召喚》である。


この計画は、すぐに実行された。勇者を呼び出しても、戦えるレベルまで育てなくては、意味がないのだから。

実行された時刻、午後六時。

終了時刻、七時五分。

一時間の超長時間詠唱。それが終わると同時に床丸く描かれた魔法陣が光り出す。


光はだんだん輝きを増してゆく。

光は増すと同時に回転を始め、時計回りに回転しながら宙を舞う。

そして、その魔法陣が腰ほどの高さまで浮遊した時、光が弾けた。

この時、勇者が召喚されたのだ。


爆音。


そしてそこには、煙が立ち上る。

その煙が薄れた頃、勇者をようやく視認できた。


そこには、勇者が四人いた。男一人に、女三人である。


実は、その四人は仲がいい訳ではない。というより、仲がいい者は余り呼ぶ事はない。

なぜなら、魔法の適性が高い者から呼ばれる為、同じ県、同じ学校、同じクラスの友達がたまたま一緒に、という事はほぼ余りない。

ただ、例外もあるだろうが、限りなくその可能性は零に近い。


この四人は、日本中から呼び出されたのだ。


四人は戸惑っている。当然だろう。急に異世界につれていかれて、さらに話せる相手もいない。

周りには知らない人達。

見た事ない部屋。


なら一体、どうすれば?


そうなるのは普通。それを知っている国王は、冷静に説明する。


「よく来た、選ばれし少年少女よ。お前達は今、異世界にいる。勇者として、召喚された。どうかその力を、貸してはいただけぬか?」


勇者四人の顔に浮かぶものは、疑問。

異世界に? 勇者として? 召喚? そんな事……となるのが普通。

ならまずは、勇者の証明をすればいい。


「お前達、手の平に炎をイメージしてみよ」


当然、ハァ? となる。これも普通。

何故から彼らはついさっきまで部活をしていたり、家にいた者達なのだ。そんな唐突に魔法を使えと言われても、訳が分からなくなる。


だが、一人、ドキドキしている人がいた。

男、だった。

その男は、すこし赤みがかった髪を持ち、顔は…まぁ、お決まりのイケメンである。

半袖のワイシャツだ。つまり、地球は夏だという事。

大体、高校生だろう。


その男は、手の平に炎をイメージした。

そうすると、それが当然だと言うように炎が現れる。


「アッチ?! だっ、ちゃっ、ぁあっちゃぁ!! あちちちち?!」


熱かった。いや、炎なのだから当然なのだが。

そしてすぐ、その悲鳴は聞こえなくなった。

男は、わかったのだ。イメージの仕方次第で、熱くなくなるという事を。

つまり、自分には熱さを感じなくしたという事だ。


「ふぃー、出来た。イメージの仕方次第で色んなの作れるんだな」

「「「嘘ッ! 凄い!」」」


そしてすぐに、女三人もイメージをする。

一人は、氷を。

一人は、武器を。

一人は、家具を。


「「「「楽しい……!」」」」


四人は楽しんでいた。だが、これでイメージ出来れば何でも作れることが証明された。

それと、彼らが勇者である事も。


「ははっ。これでお前達が勇者であると分かった。で、だ。その力を貸してはくれぬか?」

「なら、あんたが俺たちに望む事はなんだ?俺たちに実現可能なら……まぁ、俺は協力してやるよ」


男はすぐに国王に聞く。

それに続く、女三人。


「確かに、実現可能ならば協力してもいいわね。けどそれはつまり、実現可能でなければ協力はしないという事よ?」

「もしかして、この世界にはモンスターがいるの?」

「命の危険があるのなら、協力はしたくないな。なるべくは」


国王は、すぐに受け答えをする。


「では……まずお前達に望む事、それは、あるモンスターの討伐だ。そのモンスターはとても凶暴であるがため、勇者の協力が必要になった。命の危険は当然ある。ただ、今のお前達なら、だ。

お前達は磨けば光るような逸材。なら、磨けばよい。

そうすれば、きっと大丈夫だろう。

それほどの力をお前達は持っている」


悩んだ。答えはすぐには出なかった。

待つ事、十五分。男は口を開いた。


「俺の名前は、神楽かぐら 一心いっしんだ。協力する。特訓よろしく」


それにつられる形で、女三人もそれぞれ口を開く。


「私は、ひいらぎ 亜紀あきです。これからよろしくお願いします。です。」

「え、えと、私は小野おの 小鳥ことりです。…き、協力、します。よろしくお願いします!」

「私は、綾小路あやのこうじ 綺音あやね。まぁ、協力してもいいわ。その代わり、強くしてくださいまし」


四人は協力する事を決めた。

国王は笑いながら、


「かかか、なら特訓して強くなって貰おうではないか。では、これから、よろしく頼む」

「「「「はーい」」」」


随分適当な返事である。まぁ、これでも結構ちゃんとした人達なのだ。

四人は、これでも優等生だ。その優等生が協力するというのは、自分にデメリットは無いだろうと考えたからだ。

特訓さえすれば死ぬ可能性は低い、と言われた事で、べつに良いかなとなった。


だが、実際は、優等生であるのなら文武両道に秀でていなければと、親からの圧力によって辛い思いをしていたのだ。

それによって、四人全員は同じような事を考えたのだ。

『ストレス発散したい』とか、『異世界行ってみたい』など。


優等生=文武両道……なら、勉強と習い事だ。


彼らは、遊んだ事は殆どなかった。勉強。習い事。勉強。習い事。勉強……


遊んだ事なんて、片手あればほど足りる。

けど、その内の一つに、ある事があった。


そこで、アニメや、漫画、ラノベ、ゲームを知った。

こんなものあったんだ、となった。


それから、少し憧れた。

もし、あんな世界だったなら…

もし、あんな世界に行けたなら…

そう、思った。


そして、今、そんな世界にいる。

そしたら、今まで我慢していたものが、どんどん溢れ出てくる。

これは、ゲームみたいだな……と、思いながら、勇者になろうと決めた。


ちょっとだけの軽い考えでも、勇者になろうとした所がある。


まぁ、この考えは間違っていた、と知るのは、もう少し、後の事。


◇◆◇


呼ばれたその日から特訓が始まった。

それ程、急ぎなのだ。


まずは、剣などの武器を決め、それに慣れること。


小鳥と綺音は魔法特化型のいわゆる魔法使いに。

一心と亜紀は、剣を使う事にした。


まぁ、そもそも四人全員簡単な魔法は使える。

それと、もう一つ、特別な魔法も使える。


『創造魔法』


物体を想像し、実際に創造する能力。

これなら、回復も、攻撃も、魔力が続く限り出来る。


だが、まず想像する為には使う武器を知らなければならない。これからする特訓こそ、その為のものだ。


だが、魔法使いは武器は使わない。だから、魔法使いを選んだ二人は魔法の練習だ。


彼らは飲み込みが良かった。


一心と亜紀は、すぐに剣の扱いに慣れた。

小鳥と綺音は、簡単な魔法はほぼ完璧に覚えた。


まさに、逸材。


その後、彼らは自主練もした。




その頃の大和達はと言うと、


「「「「たぁ〜す〜けぇ〜てぇ〜」」」」


逃げていた。


◇◆◇


次の日には、一心と亜紀は剣の扱いはほぼ覚え、更に初級魔法も使える様になった。


小鳥と綺音は、初級魔法をほぼ覚え、中級魔法にまで手を出していた。


予想以上の努力だ。


国王は、言った。


「彼らは、きっとあの新種を倒してくれる」


と。

異世界に来て二日目で、早速『創造魔法』の特訓に入る。


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